2013年2月27日水曜日

人物デッサン会 ポートレートを描く

毎週土曜日の夕方、仲間が集まって「人体デッサン会」(昨年6月のブログ参照)をおこなっていますが、、今回はコスチュームのモデルさんをお呼びして、ポートレートを描いてみました。その中での一例を紹介します。




1回目

シルバーホワイトとバーントアンバーで、地塗りしたキャンバスに、カッセルアース(ブロックス社製)でデッサンをとり、シルバーホワイトで、明部を描き起こす。


















2回目

レッドオーカーとシルバーホワイトで、肌色のベースを塗る。




















3回目

シルバーホワイトにバーミリオンを加えて、ハイライトに向かって描き起こす。背景は、ランプブラックにウルトラマリンをベースに作る。

肌が白っぽくなったら、イエローオーカーをグラッシして馴染ませる。影への移行部には、ビリジャンを使う。















F6号 

1回2時間半で、計3回で終わりました。細部は描き足りませんが、限られた時間の中では、大きなボリュームと、色の印象を獲らえることが大切です。




2013年2月20日水曜日

本の紹介 7 「コンラッド・メイリ,油絵論」

油絵論  コンラッド・メイリ著  昭和18年(1943年) 東京堂




30年ほど前に、神保町の古本屋でこの本を見つけた時の驚きは、今もよく覚えています。表紙の藤田嗣治を彷彿とさせるようなデッサンに、絵の様式論から技法、色彩、構図法に至るまで、論理的に分かりやすく説明をしている内容は、それまで見たことがありませんでした。





その後、コンラッド・メイリ(1895-1969)は、フェルディナント・ホドラーに師事し、エコール・ド・パリの画家の1人として活躍した、スイス人画家だったのを知りました。1939年に、3ヶ月の滞在予定で来日しましたが、第二次世界大戦の勃発により、しばらく日本に留まることになりました。この時期に書かれたのが、この本のようです。
















目次は、下記のようになっています。

・日本の若き芸術家に興ふるメッセージ
・油絵の伝統と手法
・裸体のエチュードの重要性と芸術の基本
・絵具の科学
・コンポジション
・西洋絵画の危機
・日本絵画のルネサンス











特にコンポジションについての説明は、今でもとても参考になると思います。また、油絵の技法で、ブロックス社の琥珀溶液(L'Ambre)を薦めているのは、樹脂を使う画家があまりいなかった時代の貴重な資料です。


















メイリは、1948年に帰国、スイスのアニエール村で、74歳の生涯を閉じますが、日本に多くの弟子を残します。その中の1人に、当時4歳だった「かくちゃん」という少女がいたそうです。メイリ先生とかくちゃんについて書いた「1948年のスケッチブック」(2004年ポプラ社)が出版されています。
当時かくちゃんの描いた絵を見ると、その素晴らしさに感嘆するとともに、「教える事、教えられる事」の大切さをあらためて感じます。





































2013年2月15日金曜日

模写をする 8

昨年11月21日のブログから、大分時間があいてしまいましたが、H君の模写の続きを報告します。


 顔の下色を置いてから、シルバーホワイトにバーミリオンを加えて、明部を描き起こしていきます。


シルバーホワイトは、市販のものを油抜きして、溶き油に近い溶剤で練り直します。そうすることで、生乾きでの塗り重ねが容易になります。





最も明るいところから、描き始めていきます。























下層と馴染ませながら、1回目が塗り終りました。
この後、生乾きの状態でイエローオーカーを薄くかけて(グラッシ)、再びシルバーホワイトとバーミリオンに、色調を合わせるために、レッドオーカーを加えて描き起こします。この過程を繰り返して、原画に近づけていきます。























背景や服も同時に進行させ、明度と色調のバランスをとります。


背景は、シルバーホワイトにランプブラックとイエローオーカーで合わせました。



















服は、暖かい黒をアイボリーブラック、冷たい黒をランプブラック(またはピーチブラック)として使い分け、シルバーホワイトで明るさを調整します。




















2013年2月9日土曜日

割れた石膏像をモチーフに

古典絵画の技術を応用して、作品を描いているSさんの静物画を紹介します。


割れてしまった石膏像の破片をモチーフにして、構図を組み立てました。

今回Sさんは、写真からデッサンを起こし、実物を見ながら修正していきました。写真と、肉眼で実物を見た違いを知る上で、よい方法だと思います。















グレーの地塗りの上に、ヴァンダイクブラウン(シュミンケ)で、明暗をつけました。





















シルバーホワイトで、明部を描き起こした後、固有色をかけていきます。






















この作業をを繰り返しながら、実物に近づけていきます。





















F4号

独特の雰囲気を持つ絵に仕上がりました。教室にあるモチーフを組み合わせ、同じテクニックで描いても、人それぞれにまったく違う絵になるのは、教えていて面白いところです。本来個性とは、このようなことを言うのではないでしょうか?