2016年3月23日水曜日

アポロ像を描く

美大と専門学校で学ばれてきたO.kさんの石膏デッサンを紹介します。遠近法にもとづいた正確な形を捉えることが、あらゆる造形表現の基礎となるとの思いからアトリエラポルトで学ばれています。





アポロ像は大型の石膏胸像で、その大きさと髪や服の繊細なレリーフを表現するのが大変難しい石膏像です。

原作は、紀元前4世紀のギリシャの彫刻家レオカレスのブロンズ作品をローマ時代に大理石に模刻したものです。15世紀にローマ近郊で発見され、18世紀に新古典主義の流れを作ったヴィンケルマンが著書「ギリシア芸術模倣論」の中で、ギリシャ文明の象徴のように称賛しています。現在はヴァティカン美術館のヴェルヴェデーレの中庭に展示されています。








まずは、遠近法の枠を使って、適切な鑑賞距離に視点を固定して形を取っていきました。



ほぼ線で形が取れた段階です。



遠近法の枠を取り外して、影側から描いていきます。


徐々に明部に移っていきますが、背景の紙の白より石膏像が明るく見えるように、影の配置やコントラストの調整を考えながら描き進めます。




布のボリュームを表すには、布の皺の中の光と影の境目を落ちる影よりも暗くする必要が生じます。現実には落ちる影側の方が暗く見えることがよくありますが、そのまま引き写すと二次元の平面ではボリュームが弱く感じる場合があります。
















アポロ像 画用紙に鉛筆 (650×530)




25時間以上かけて仕上がりました。

「存在する形はすべて描く」を基本に、髪の毛や布などの細部まで陰影で曖昧にならないように注意して描いて頂きました。結果的に頭部などの大きなボリューム感が少し弱くなってしまいましたが、個々の形をよく描き切った秀作だと思います。

アトリエラポルトでは、基礎デッサンは現象的な陰影の再現を目指すのではなく、対象の形とボリュームや前後関係を的確に表す技術を学ぶことを目的としています。それは将来の幅広い創作活動(アニメやイラストなども含めた)へとつながるものだと考えているからです。



2016年3月4日金曜日

初めての彩色

基礎デッサンからグリザイユへと段階を追って学ばれてきたK.nさんが、初めて色を使った油絵の制作過程を紹介します。



最初は基本どおり線で形を取っていきました。

一般的に油絵は明暗から始めるように指導される教室が多いと思いますが、アトリエラポルトではデッサンとの繋がりを考え、無骨に見えても形が曖昧にならないように線できっちりと捉えることから始めるようにしています。





次にシルバーホワイトとバーントアンバーだけで明暗を付けていきます。特に初心者の方はモチーフの色を明度で見ることに慣れていないのでこの過程を薦めています。



色は最も明るくて彩度の高いモチーフからつけていきます。

そしてこの明るさを基準にその他の色合いを決めるようにアドバイスしました。この進め方は、絵全体が暗く沈んだようになるのを防ぐのに有効な方法です。


全体に色が置かれた段階です。

この後、全体の明暗関係を調整しながら描き込んでいきました。

















青いピッチャーのある静物 (F6号)





















週1回(2時間半)の受講で約4ヶ月かかって仕上がりました。
時間はかかりましたが、大変完成度の高い作品になりました。初めての彩色した油絵としてはこの位描き込んであると作者の満足感も高いと思います。しっかりとしたマチエールに絵具の発色も大変綺麗です。ただ、個々のモチーフが若干置かれている空間から独立して切り離されているように見えます。コントラストの抑制やモチーフ相互の色の響き合いをいかに作るかが次の作品の課題となるでしょう。