2020年3月30日月曜日

全身像の石膏デッサン

今回は全身像の石膏デッサンの制作例を紹介します。
作者はアトリエラポルト4年目のY.mさんです。

パリの美術学校に残されている過去の石膏デッサンの資料を見ると、そのほとんどが全身像(立像)の石膏像を描いたものです。

それらは人体デッサンの前段階としておこなわれていました。







アトリエラポルトでもそれに倣い、日曜人物デッサン講習会を始めるにあたって新たに全身の石膏像を増やし、実際に人体を描く前の練習としてデッサンして頂いてます。










全身像を通じて、人体の測り方やプロポーション、解剖学に基づいたモデリングのやり方を学びます。


石膏像はそれぞれの時代の様式によって造形されているので、現実のモデルさんとは似ていませんが、その分、形が美しく整理され明瞭に見えるので、人体の形態を学ぶには最適です。しかも、動かないしポーズ時間の制約もありません。



ディオニソス全身像(画用紙に鉛筆 650×500) 堀石膏製


この機会に日本で販売されている全身石膏像を調べたら、立像の種類が少ないのに驚きました。それは、人体デッサン(アカデミー)の教育方法が確立されてこなかった事も、その一因かと思います。シンプルで描きやすい全身石膏像の販売が望まれます。





2020年3月21日土曜日

桜を描く

今回は、アトリエラポルト創設当初から来て頂いているK.kさんの作品を紹介します。

昨年ご自宅近くの桜並木を取材して描かれた15号のエスキースから、30号の作品にしました。





スケッチからアトリエで創作する際は、何らかの表現上の意図がないとスケッチ以上の魅力のある作品にはなりません。

この作品では、Kさんと話し合った上で、印象派の色彩理論をベースにトーンの系列(gamme:音階)をできるだけ合わせる方向でアドバイスをおこないました。








桜並木 (F30号)


週1回の受講で約4か月かけて仕上げました。影の明度を出来るだけ上げて全体的にハイ・キーにしてトーンを合わせました。結果としてエスキース以上に明るくて色彩的な絵になったと思います。 

ご自宅で営業されているカフェに飾れば、お店も一層華やぐことでしょう。




2020年3月14日土曜日

本の紹介 「脳は絵をどのように理解するか」



今回紹介する本は、1997年に新曜社から出版さたロバート・L・ソルソ著「脳は絵をどのように理解するか」(鈴木光太郎・小林哲生 共訳)です。










右:「美を脳から考える」インゴ・レンチュラー著 2000年
左:「脳は美をいかに感じるか」エミール・ギゼ著 2002年





同じ時期に右のような本も出版されていて、近年の脳科学の発達とブームの影響を感じます。













中でもこの本は、西洋絵画の中で古くから行われてきた造形方法に関連する内容が多く含まれています。

目次は次のようになっています。

1章 大きな窓ー視覚の科学
    目と脳で見る
    視覚の物理
    目

2章 脳と視覚
    脳
    目から脳へ
    二つの半球
    視覚的認知モデルと脳
    知覚と知識
    目と脳の進化

3章 形の知覚
    ガッツフェルト
    縞
    マッハの帯と側抑制

4章 視覚的認知
    視覚的認知
    基本的携帯
    知覚的体制化

5章 文脈と認知
    モナ・リザを見る
    物理的文脈
    トップダウン処理
    視覚的不協和
    
6章 目の動きと美術
    中心線と目の動き
    もの動きを測る
    脳から目へ、目から脳へ
    走査経路と美術の認知
    専門家の目の動かし方
    中心を見る傾向
    美術作品と目の動き

7章 遠近法
    二次元の目で三次元世界を見る
    奥行きの知覚の原理
    錯覚と恒常性

8章 遠近法と美術の歴史
    遠近法の技法
    先史時代の美術
    エジプト美術
    古代ギリシャとローマの美術
    アジアの美術
    ルネッサンス
    印象派
    現代美術

9章 神経ネットワーク
    具象美術と抽象美術
    標準的表象
    記憶と絵の世界
    コネクショニズム
  
   


西洋では遠近法に代表されるように、絵を科学的に捉えることで発展させてきた歴史があります。

その原理と成立ちの秘密を、脳科学によって分析を試みた内容なのが、目次を見ても分かると思います。

客観的に絵を考える上での手がかりとして、お勧めしたい一冊です。









2020年3月6日金曜日

仮面を描く

今回は。アトリエラポルトに通われて2年半になるH.Mさんの制作過程を紹介します。
Hさんはそれまでは絵を習った経験はなく、片道2時間近くかけて週1回通われてます。
ラポルトでは石膏デッサンからグリザイユの過程を経て、この作品は着彩油彩画の2枚目です。


使用絵具は、三原色としてイエローオーカー、レッドオーカー、ウルトラマリンを使い、白はシルバーホワイト、黒の代わりにバーントアンバーを選びました。

これに制作が進むに從って、カドミウムレッド、ディープマダー、カドミウムイエローを加えていきました。








バーントアンバーで明暗を付けた後、シルバーホワイトで明部を描き起こし、背景から色を置いていきました。









次第にカドミウム系の再度の高い絵具を加えていき、現実のモチーフの色合いに近づけていきます。














仮面のある静物(F6)


モチーフ選びからHさん自身がおこない、それに対して構図や配色の方法をアドバイスをするという形で進めました。

シンプルですが明快な表現の絵に仕上がったと思います。

これにハーフトーンの豊かさが加わるともっと良くなることでしょう。