2012年9月28日金曜日

旅の思い出として

旅の思い出を、絵にするのは楽しいものです。

出来た絵を部屋に掛けて、休日の昼下りに、コーヒーでも飲みながら眺めるのは、至福の時ではないでしょうか?
Mさんの風景画には、そんな想いが込められているように思います。(今年の4月6日のブログをご覧下さい)



今回は、鐘楼のある風景です。その制作過程を見ていきます。
















はぼ逆光の構図で、明暗がはっきりと分かれます。このような場合は、明部と暗部の形と、その組み合わせが、工夫のしどころです。

また、大きな面積を占める暗部を、いかに色彩的に美しく扱うかが、絵の見栄えを左右します。

そこで、始めに青系統(ウルトラマリン、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトヴァイオレット)で、エボウシュしました。









暗部の形が大体決まったら、明部の固有色を入れていきます。
















平塗りにならないように、寒暖のニュアンスをつけた、短いタッチを重ねていきます。

影の中にも、若干の暖かい色を置いてあげると、やわらかい空気を感じるような表現になります。




P12号


光の輝きが、画面全体に溢れる、良い風景画になったと思います。

ただ、描き込むに従って、明暗関係がだんだん曖昧になってしまったのが、ちょっと残念です。
これは、例えば、明暗法をベースにした外光派の手法を取るか、あるいは、明暗法に頼らずに、虹色(スペクトル)のトーンを使って、光の輝きや色の美しさを表現しようとした印象派の手法を取るかなど、表現方法が明確になれば、自然に解決してくると思います。

 ともあれ、部屋に掛けて眺めれば、コーヒーも一段と美味しくなるような一枚です。



2012年9月19日水曜日

模写をする 4

トレーシングペーパーに、転写した状態。


この転写した線を手がかりに、トレーシングペーパー上で、再度デッサンをおこないます。構図の線や、直線的・曲線的つながりのコンストラクションを捜しながら、形の理解を深めていきます。


















地塗りを十分に乾かした(1ヵ月以上)キャンバスに、デッサンを転写(転写方法は7月4日のブログを参照)した後、テール・ド・カッセルで、陰影をつけていきます。




















テール・ド・カッセル(別名:カッセルアース、ヴァンダイクブラウン)は、20世紀以降のほとんどの技法書で、退色やひび割れの原因になるので、その使用を避けるように書かれています。しかしながら、17世紀から19世紀にかけて、頻繁に使われた顔料で、そこから生まれるグレーの美しさは、ヴァンダイクをはじめ多くの画家に好まれました。前回紹介したグーリナの本にも、ダヴィッドがテール・ド・カッセルを使っていたと書いてあります。
    











描き進むにつれてテール・ド・カッセルに少量のレッドオーカーを加えて、寒暖のニュアンスを与えます。

2012年9月14日金曜日

石膏像「髭の男」をグリザイユで描く 3

T君は、週3日午前・午後、教室に来ています。週ごとの制作経過をご覧下さい。


2週目







3週目





4週目









5週目    完成


石膏像グリザイユ「髭の男」 F15



サイトサイズ法(SIGHT-SIZE)は、古くから西洋でおこなわれていた方法で、ヴァン・ダイクが肖像画を描くのに使っていたとされ、1708年に出版されたロジェ・ド・ピルの本(Roger de piles, Cours de peinture par principes.)に、その具体的な記述があります。そこには、「対象を見て(観察して)描く」という、西洋リアリズム絵画の源流があります。 今回のT君のグリザイユは、けっして細密に描写している訳ではありませんが、観賞距離をおいて見た時のリアリティは、その流れに通じるものを感じます。




2012年9月12日水曜日

米寿の個展を目標に

3年後に米寿を迎えるFさんは、米寿の個展を目指して、絵を描かれています。



風景画を得意とするFさんですが、教室では、久しぶりに静物画に取り組まれました。



教会に絵を掛ける予定があるとのことで、モチーフには、ぶどう酒とパンを選ばれました。














以前製図のお仕事をされていただけあって、正確な形へのこだわりが、丹念に絵具を重ねていく制作方法に表われています。


また、技法にも関心が高く、油絵具の特徴である、こってりとした絵具の厚みや透明感がでるように、気を使って描かれています。










F6号



週1回、2時間半の受講で、約4ヶ月かかりましたが、デッサンの段階から入念に描き込まれて、絵具のしっかり着いた、密度の高いマチエールと、発色の鮮やかな作品に仕上がりました。 構図や配色もよく考えられています。

Fさんの制作に取り組む姿をみていると、絵を描くことの意味や素晴らしさを、我々に問い直しているように思います。




2012年9月7日金曜日

石膏像「髭の男」をグリザイユで描く 2


3~4段階に分けて、明暗をおいていきます。
























サイトサイズ法で、常に対象と見比べながら、明度を決めていきます。

















絵具は、たっぷりと筆触の方向性を利用して対象の質感を表しています。

2012年9月5日水曜日

人体デッサン 参考作品 1

裸婦デッサン研究会(6月のブログ参照)で描いた、人体デッサンを紹介します。





キャンソン・ミタント紙(550×370)
 チャコール鉛筆, 白コンテ鉛筆










キャンソン・ミタント紙(550×370)
 チャコール鉛筆, 白コンテ鉛筆


















上のデッサンの部分






















四つ切画用紙
 鉛筆