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2023年6月27日火曜日

動画:鉛筆デッサン「遠近法に基づいて」

アトリエ・ラポルトでおこなっている遠近法に基づいたデッサンの方法を動画にしてYouTubeにアップしました。

遠近法の学び方にはいろいろありますが、ここで紹介しているのはルネサンス時代からおこなわれてきた方法の一つです。手間のかかる作図をせずに遠近法を実践的に学ぶことができます。

参考にして頂ければ幸いです。



*スマホでご覧の方で動画画面が出ない場合は、ウェブバージョンにするとご覧いただけます。



2022年11月30日水曜日

正12面体を描く

今回は正12面体を描いたデッサンを紹介します。

 正多面体は古代ギリシャの哲学者プラトンが「万物を形づくる最も美しい形」と考えていたことから、ルネサンス時代からそれを遠近法を使って再現する試みがおこなわれてきました。

中でもルカ・パチョーリ(Luca Pacioli:1445-1517)の「神聖比例」論の中の挿絵が有名で、作者はレオナルド・ダ・ヴィンチと考えられています。

ルカ・パチョーリ(神聖比例)
Luca Pacioli “De divina proportion" 1509
*画像は後の時代に出版されたフランス語版

その中のいくつかを載せてみます。






文化的土壌の違う私達には、このような幾何形体に「美」を求める考えに違和感を感じるかも知れませんが、古典絵画はもとよりセザンヌからキュビズム、そして抽象絵画にも通じる西洋美術の根底にある思想と言えるでしょう。

ダ・ヴィンチがこれらの挿絵を描くにあたっては、平面図から遠近法の理論を使って立体的に再現していると考えられますが、Aさんは実物を見てデッサンしました。

正5角形は黄金比を生む神秘的な形として昔から知られていましたが、それが12面で出来た立体は複雑です。正確に描くには形の幾何学的性質と遠近法の理解が必要です。

制作者のAさんには、事前に多角形の作図法を学んで頂きました。


通常の石膏像のデッサンと同じように、線で形を捉えてから陰影をつけます。


光の方向に対するそれぞれの面の角度による微妙な陰影の変化を加えて完成しました。


正12面体 (画用紙に鉛筆)


このようなデッサンは絵画制作と結び付きにくいと考えられがちですが、遠近法の理解に役立つ上、ギリシャ時代から流れる西洋の美意識を知るヒントを与えてくれると思います。


2021年1月16日土曜日

アトリエの道具と画材:遠近法の箱

今回はアトリエラポルト講師が手作りした遠近法の教材を紹介します。


遠近法は三次元のリアルな空間を再現するには欠かせない技術ですが、その原理を理解するのは簡単ではありません。

そこで作られたのが右の「おかもち」のような箱です。


開けるとこのような物が出てきます。


組み立てると、次のようなマス目の入った枠を通して幾何形体を描くセットが出来上がります。これはルネサンスの時代から使われてきた遠近法の道具を模したものです。


1538年に出版されたデューラーの著書の中に、同じような道具を使って絵を描いている挿絵が載ってます。(A.DURER: Underweysung der Messung. 1538)




また、20世紀にパリの美術学校で遠近法を教えていたオルマの著作の中にも同様の道具でデッサンしている挿絵が載ってます。
(P.OLMER: PERSPECTIVE ARTISTIQUE.1943)

その間、約400年の時は流れても、遠近法の説明に同じ方法が用いられてます。





アトリエラポルトでは、受講される方にまずこの道具を使って遠近法の概略を説明しながら幾何形体を描いて頂いてます。

そして、その後の教室での制作の客観的なアドバイスの基にしています。


写真をトレースすれば遠近法を知らなくてもリアルな絵が簡単に描ける時代ですが、西洋の伝統的な絵画は遠近法の理論の上に築かれてきました。このような道具を使って正確な遠近法でデッサンしてみると、写真との違いが分かります。それは、「モチーフを見て描くとはどういうことか。」「絵のリアリティとは何か。」を考える拠り所になると思います。


2018年7月28日土曜日

遠近法の作図とデッサン


今回は遠近法の作図を手掛かりにして、実際のモチーフを見て描いたデッサンを紹介します。





まずは、モチーフ台に碁盤状のマス目を引きます。(今回は1マス3㎝)


デッサン紙には、同じ尺度のマス目を遠近法の理論に従って作図します。




A.-E.MARTY “Perspective sans mathematiques"より


画面上の地平線の真ん中に中心消失点をとり、縦方向の線(画面に対して90°に交わる線)をそれに向かって引きます。

横方向の線(画面に対して平行な線)は、中心消失点から、画面の幅の1.5倍の位置に、画面に対して45°の線の消失点(鑑賞距離点)をとり、先ほどひいた中心消失点に向かう線との交点で求めます。




鑑賞距離点(絵を見る距離)は、現在では視野が横方向に37°、縦方向に28°と考えて、画面の幅の1.5倍、高さの2倍を取ることが一般的です。

左の写真はほぼその位置からモチーフを眺めたところです。




マス目を基準に、各モチーフの机と接する位置と高さを求めます。

見た目と勘を頼りにデッサンするよりも、遠近法に基づいてモチーフの位置関係や大きさを正確に表現できます。

このような方法は、西洋のアカデミックな絵画ではよくおこなわてきたもので、特に大画面での制作には必要不可欠な技術でした。



線で形が取れた後、チャコール鉛筆の白と黒を使って明暗を付けていきました。











ミタント紙にチャコールペンシルの白と黒 (410×320)

デジタル技術の発達した現代においては、写真をパソコンで加工してトレースすれば遠近法の知識は不要かもしれません。
しかしアトリエラポルトでは、対象を見て描くデッサンや絵画において、遠近法の知識は不可欠であり、大きな助けになると考えています。


2015年9月30日水曜日

空気遠近法

今回は、距離感(奥行き)を表す方法について考えてみたいと思います。

西洋絵画における距離感のベースは言うまでもなく線遠近法ですが、これに明暗のコントラストの変化と色合いの変化を加えたものが空気遠近法(Aerial Perspective)です。特に風景画などの広大な空間を再現するには不可欠な方法です。

“Cours de Peinture par Principes”
Roger de Piles 1708

そこで、ロジャー・ド・ピル(Roger de Piles 1635~1709)の本をヒントに、なんとか教室で空気遠近法の練習ができないものか試してみた例を紹介します。





ド・ピルは、17世紀フランスの代表的理論家で、色彩と明暗法に関する考え方はアカデミーの絵画に大きな影響を与えました。

右は著書からの挿絵で、球体が遠ざかるに従って光と影のコントラストが弱まり、輪郭もボケていくことが説明されています。また,まとまった時とバラバラになった時の光と影の付き方の違いが示されています。










実際のモチーフも上の挿絵と同様に葡萄を使って、左のようなセッティングを考えました。手前から右奥に向かって暗くなっていくように照明をしています。




制作は、画家を目指して修行中のK,hさんが試みました。

木炭でデッサンを取ってから、薄く溶いたバーントアンバーで明暗をつけた後は、ダイレクトペインティングの手法で、一気に色を置いていきました。











葡萄のエチュード (M6号)



葡萄自体がかなり明度が低かったので、明暗のコントラストによる奥行きの変化をつけるのに苦労されました。
例えば1番手前の葡萄に対して2番目は、白を加えて明るくすることで彩度を落としていますが、3番目は暗くすることで彩度を落としています。
絵画表現としてはこれで良いと思いますが、本来の空気遠近法ではド・ピルの挿絵に見るように、手前から順番に明るくするか暗くした方が、より自然な奥行きを感じさせられます。セッティングを含めたこれからの課題だと思います。







2013年5月23日木曜日

弱められた遠近法と強められた遠近法 2


前回、「弱められた遠近法」について書きましたが、今回は「強められた遠近法」の例を紹介します。


右の写真は、ヴェネツィアのサンマルコ広場を教会側から撮ったものです。非常に奥行のある空間に見えます。











この広場を、航空写真で見てみると、その形が長方形ではなく、教会側を広く取った台形なのが分かります。このことから、サンマルコ教会から広場を見ると、遠近が強まり、実際よりも奥行のある広い空間に感じられるのです。











サンタ・マリア・プレッソ・サン・サティロ教会(ミラノ)

右の例は、ルネサンス時代の建築家ブラマンテによるものです。



正面から見ると、祭壇の後ろに、広い空間があるように見えます。


















ところが、横から見ると、ほとんど奥行きがないのがわかります。






このような例は、イタリアではルネサンスからバロック時代の建造物に数多く見かけられます。







「アナモルフォ―ズ」の著者バルトルシャイティスは、これを「加速された遠近法(Perspective acceleree)」と呼んでいます。



もっと身近な例では、東京ディズニーシーがあります。いたる所に、とても巧みに遠近法の強調がおこなわれ、広い空間感を見る人に与えています。西洋の遠近法の歴史が、現代にも生かされているよい例です。行かれる人は、近づいて山や橋や建物の比率を観察してみると、意外な発見があると思います。



「弱められた遠近法と強められて遠近法」と題して、2回にわたって紹介してみました。

壁画を中心に絵が発達したイタリアでは、置かれる場所や鑑賞位置を考えて、画家は遠近法や構図を決めるのが当たり前におこなわれていました。そもそも遠近法自体がこのような背景から生まれてきたとも言えるのです。このことから、古典絵画にみる遠近法(Perspective centrale)を使った絵画空間とは、現実空間の鑑賞地点からの延長線上にあることが前提となっていました。それに対して、西洋画の歴史の浅い日本では、今日のカメラの進歩も手伝って、鑑賞者や絵を掛ける場所とは無関係な視点から、構図を決めたり、トリミングや広角・望遠レンズで見たような空間を、何の疑問もなく絵に取り入れていることが多いのではないでしょうか?
古典絵画技法を、遠近法から考えてみるのもおもしろいと思います。


2013年5月15日水曜日

弱められた遠近法と強められた遠近法 1

前回、対象と見る位置の関係について触れましたが、別の例を紹介します。


右の写真は、フィレンツェの中心となる大聖堂の鐘楼です。設計者は、ジョットといわれています。

この鐘楼を離れてみると、窓の比率が上の方が大きくなっているのが分かります。


















これを、大聖堂前の広場から見上げると、窓の比率が等しく見えます。 



これとは反対に、例えば現代の高層ビルは、ビルの窓が上下とも等間隔で作られているので、真下に立って見上げると、パースがついて、傾いているような感覚に襲われます。


この鐘塔の設計者ジョットは、そびえ立つ鐘楼の圧迫感を弱め、鐘塔が地面から垂直に建って見えるように、窓の比率の調整をおこなったと考えられます。
 






このように、現実の遠近を鑑賞位置から最も効果的に見えるように修正することは、西洋では遠近法の幾何学に基づいて古くから行われています。




右の図は、1525年に出版されてた、デューラーの「測定法教則」の中のイラストです。


鑑賞者から、文字を等間隔で(同じ大きさで)見せる方法が記されています。














上記の例でみるように、実際の遠近を弱めて表現する方法を、20世紀の美術史家バルトルシャイティス(Jurgis Baltrusaitis)は、アナモルフォ―ズ(Anamorphoses,1984)という著書の中で、「緩慢な遠近法(Perspective ralentie)」と呼んでいます。


Baltrusaitis著
 “ANAMORPHOSES” 1984年

















次回は、もう一方の「強められた遠近法」について、紹介します。



2013年5月10日金曜日

メディチ像の石膏デッサン


右は、アトリエ ラポルトの講師が描いたデッサンです。

石膏デッサンでお馴染みの、ミケランジェロが作ったメディチ像の頭部ですが、実物がどのような状況に置かれているかを、考えながらデッサンした人は、意外に少ないのではないでしょうか?

















実物は、イタリアのフィレンツェにあるメディチ家の礼拝堂の中にあります。

写真のように、鑑賞者からかなり高い位置に置かれています。












ヴェネツィア派の画家ティントレット(1518~1594)も、メディチ像をデッサンしていますが、見上げた角度から考えて、現場で描いているのが分かります。



















西洋ではギリシャ時代から、対象が見る位置によって、どのように変化して見えるかについて、幾何学的に考えてきた歴史があります。特に、遠近法が発明されたルネサンス時代には、非常に発達して、彫刻・絵画・建築などに生かされました。


例えば、ミケランジェロの代表作であるダビデ像は、右のように正面から見ると頭が大きく見え、胴体との関係が不自然に感じますが、実際に設置されていた状況から見ると、下のように自然に見えてきます。





フィレンツェの市庁舎前(現在は模刻が置かれている)


この事から推測して、ミケランジェロは、メディチの頭部を作る時も、鑑賞地点から最も効果的で美しく見えるように、考えていたのではないでしょうか? 

石膏デッサンを、単なる受験や基礎訓練のために描くのは、味気ないものです。せっかく西洋彫刻の傑作を描くのですから、像に込められた、作者の造形上の工夫や配慮、その背後にある歴史を考えてみると、石膏像を描く意味も、また違ったものになってくると思います。