2018年3月20日火曜日

「伊牟田経正作品集」刊行

この度、伊牟田経正先生の画集が刊行されました。
60年代から現在に至る画業が、大作を中心に77点オールカラーで編纂されています。
対象を徹底的に見て描くことによるリアリティの追求、それらの組合せによって生まれる見えないイメージの表出の半世紀にわたる変遷をたどることができます。


「伊牟田経正作品集」
26㎝×24㎝
オールカラー印刷 
日動出版製作
5,000円(別途送料500円)

購入をご希望の方は、下記のメールアドレスに住所・氏名・電話番号・部数を明記の上お申し込み下さい。
imutabook@gmail.com


また、4月12日(木)から15日(日)まで、東京銀座の洋協ホールで、この作品集の中から代表作20数点を展示する「伊牟田経正展」が開かれます。



70年代に写実表現の旗手として画壇に登場して以来、細密描写と斬新な表現で注目を集めてきましたが、その裏にはグザビエ・ド・ラングレの「油彩画の技術」をベースにした深遠な技法研究と実践が秘められています。制作から40年以上も経った作品の堅牢性と、驚くべきマチエールの美しさを見ることができます。日本における乾性油に樹脂を加えた溶剤による “ウエット オン ウエット” 技法の貴重な作品群の展示ともいえるでしょう。


「伊牟田経正作品集」より

60年代後半

70年代



80年代


90年代代


2000年以降




2018年3月5日月曜日

三原色によるエチュード

今回は、初めて油絵具による彩色に挑戦したOさんの制作過程を紹介します。

アトリエラポルトでは、初心者の方には色彩の破綻なく現実空間の再現を学べるように、三原色の混色を基本にした描き方を薦めています。





まずは、キャンバスと同じサイズの画用紙に入念にデッサンします。




出来上がったデッサンをキャンバスに転写して、彩色に移ります。使った絵具は、イエローオーカー・レッドオーカー・コバルトブルーを三原色としてシルバーホワイト・アイボリーブラックで明度と彩度の変化をつけました。

これらの絵具の混色ではモチーフより鈍い色しか出せませんが、その分色の鮮やかさに惑わされずに明度の再現がしやすくなります。彩度の高い色は、実際の明度より明るく感じるため、明暗の置き換えが難しくなります。




このように明度を重視するのは、私たちの空間認識が色よりも圧倒的に明度(Value:英,Valeur:仏)に依存しているためです。リアルな絵を描くには、的確にモチーフの明度を捉えることが最も必要だからです。

明暗関係が決まってきて、色の再現に限界を感じ始めたら、鮮やかな絵具を少しずつ加えていきます。ここでは、カドミウムイエローとカドミウムレッドを足しています。

初心者の油彩画の練習では、細部の描写よりも、モチーフのボリュームや質感、その置かれている空間上の位置関係を正確に表す事の方が大切です。











三原色によるエチュード(F8号)




初めての油彩画で悪戦苦闘されていましたが、デッサンからグリザイユと時間をかけて学ばれてきた成果が表れた作品になりました。

まだまだ明度や彩度の関係など不十分な点が少なからずありますが、次回作の課題として取り組んで頂けたらと思います。





現実空間の再現をベースにした絵は、色と明暗の関係を正しく認識する訓練が必要です。その方法の1つとして、好きな色の絵具を無制限に使って描くのではなく、三原色の最小限度の絵具から始めることは、合理的で分かりやすい学び方だと考えています。