2013年3月30日土曜日

花を描いてみる



風景画を描き続けてきたNさんが、初めて教室で花を描かれました。


構図は、花を中心に、シンメトリーでシンプルなものにしました。いろいろな種類の花を、いかに表現するかがテーマです。




















クラッシクな手法を取り入れて、カッセルアースとシルバーホワイトで明暗を追った後、着彩に入りました。



















葉の密集した所は、光の当たってる部分と影の部分に大きく分けて、影の部分は、シルエットとしてまとまった形で捉え、光の当たったところを描き込んでいきます。

















鮮やかな色の花を、どう表現するかは、誰しも迷うところではないでしょうか?

ボリュームや奥行き(前後関係)を求める場合は、明暗の変化を重視する必要がありますが、彩度の高い、鮮やかな色彩を求める場合は、明暗差は邪魔をするので弱めることがあります。
これは、絵全体のスタイルとも関係する重要な選択肢です。













F12号
花や葉は、見れば見るほど細かく見えてくるものです。Nさんも、どこまで描写して良いのか悩みながらの制作となりましたが、結果的にいって、単なる再現的な絵ではない、様式化された雰囲気のある絵になったと思います。

2013年3月22日金曜日

模写をする 9

H君の模写もいよいよ佳境に入ってきました。








画面全体に一通り色が置けたら、顔の暗部に移ります。
ここで最も難しいのは、明部から暗部への移行部分(パッサージュ)です。古典絵画の多くが、ここを肌色に対して冷たい色調にしています。近代絵画では、これをパレット上で混色して作りましたが、原画のような古典絵画では、画面上での塗り重ねによる、オプティカルグレーで作っています。


H君の模写は、下の層がすでに乾燥している上、暗さが足りなかったので、再びテールドカッセルを置いてから、肌色をかけて、グレーを作りました。










慣れない作業で戸惑いましたが、綺麗な移行部のグレーができたと思います。




















白い襟も、筆触の方向をまねながら、シルバーホワイトに微量のローシェンナを加えて描き起こします。

暗部への移行部分は、やはりオプティカルグレーで作り、白い襟の美しさを出すために、その上からウルトラマリンをグラッシしました。

2013年3月15日金曜日

バラの連作

バラ園を経営されているKさんは、教室でもバラをモチーフに描かれています。

今回は、Kさんが、ダイレクトペインティングの手法で描いた作品を紹介します。




ダイレクトペインティングは、対象の色をパレットで調合して、直接置いていく方法で、画面上での絵具の塗り重ねで描いていく古典技法とは違って、短時間で描くことができます。色彩感覚が良く、達筆のKさんには、ぴったりの方法だと思います。




右の絵は、リモージュの花瓶に活けたバラで、P8号の大きさです。約10時間(4回分)で描き上げました。












これは、ウエッジウッドのブルーの花瓶に活けた赤いバラで、背景を寒色のグレーにしました。

F4号のサイズで、7時間半((3回分)で仕上げました。













上の絵と同じモチーフで、背景を暖色の赤で描いてみました。
















P4号 赤いバラ

ダイレクトペインティングの良さがでた作品になりました。作者の息づかいを感じるような筆触で、バラの花の輝やいた印象が捉えられています。


2013年3月6日水曜日

米寿の個展に向かって

今年86歳になるFさんは、米寿の個展を目指して、毎週私たちのアトリエに通われています。





今回仕上げられた裸婦(右)と、約7年前に描かれた人物画(左)を並べてみました。

F10号
P20号























上達ぶりが一目瞭然です。この違いは、Fさんの熱意にもよりますが、対象の見方を学んだ成果が大きいと思います。例えば、対象のさまざまな色を、明暗に置き換えてみるとか、寒色と暖色で大きく分けて配置を考えてみるとか、遠近法を作図してみるとかなどが挙げられます。論理的な方法で絵を学んでいけば、年齢に関係なく、確実にうまくなっていくことを、Fさんの作品は示しています。