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2024年10月13日日曜日

知っていると便利 ワイプアウト技法(Wipeout Painting Technique)

今回はワイプアウト技法による油絵の下書き方法を紹介します。
ワイプアウトは、画面全体に素早く明暗を付けるのに便利な方法です。
実践して頂いたのはアトリエラポルト4年目のSさんです。

ワイプアウトをおこなうには、事前に構図も含めたデッサンができていることが必要です。
それを、油絵具の溶剤で取れないように、顔料インクのボールペンかフェルトペンでキャンバスに定着します。


使用する絵具は、堅牢で乾きの早いものを選びます。今回はバーントアンバーを選びました。
少量をキャンバスに直接出します。



薄めの溶き油を多めに垂らして、脱脂綿で伸ばします。


円を描くようにして均一に塗ります。


濃さは好みでかまいませんが、ベッタリ塗り過ぎると乾きが遅くなる上に上層の色に影響を与えるので、薄く明るめに塗るのがコツです。


ボロ布を使って明るい部分を拭いていきます。


細かい箇所は、綿棒を使うとよいでしょう。


明るい所が拭き取れたら、影などの暗い部分を同じ絵具で加筆して終わりにします。



ワイプアウト技法による下書きができました。
ワイプアウトは筆よりも早く塗れ、対象の明暗関係を大づかみ捉える下書きに適しています。
この後、数日乾かしてから固有色を置いていくとよいでしょう。



2024年8月21日水曜日

リアルな再現方法を学ぶ

 今回は夏季特別講座(8/11~18)の様子をお伝えします。
テーマは「見て描く写実絵画技法」で、講師は鳥越一穂氏にお願いいたしました。


基底材は鳥越氏があらかじめ用意したアルミ板(3㎜厚)に、シルバーホワイトとローアンバーで中間色にした油性の地塗りをしたものを使用しました。

左:アルミ板 右:地塗りをしたもの
サイズはF4号(333×242)


描き出しはチョークでモチーフ全体のプロポーションをできるだけ正確に取っていきます。


続いてローアンバーで背景とモチーフの影をつけます。


土性系の彩度が低く乾きの早い絵具で固有色を置き始めます。


徐々に彩度の高い絵具を使って現実の色に近づけていきます。


モチーフの質感を表す筆さばきの方法や絵具の塗り重ねによるハーフトーンの作り方、ハイライトの入れ方など、実際に見て説明を受けながら制作を進めて頂きました。


受講時間は各自さまざまで、どの方も完成には至りませんでしたが、モチーフのリアルな再現のプロセスとコツは学んで頂けたと思います。
「鳥越先生、お疲れさまでした!」














2024年2月1日木曜日

明暗と色の関係を学ぶ

 今回は前回紹介したグリザイユと同じモチーフを、三原色を基に色の再現を試みた制作過程を紹介します。色数を制限しているため現実と同じような鮮やかな絵にはなりませんが、写実絵画における明暗(Valure)と色(Coulre)の関係を理解するのに良い方法です。



使用する絵具は、黄色:イエローオーカー、 赤色:レッドオーカー、青色:コバルトブルーの三原色に、白:シルバーホワイト、そして黒の代わりにバーントアンバーを使います。



現実空間の再現には正確に明度を捉える必要があります。ところが鮮やかな色は実際の明度より明るく感じてしまいます。例えば彩度の高い赤は明るく感じますが、実際の明度は意外なほど低いものです。

左のグレーと水平線上にある色が同じ明度です。
(PCCSハーモニックカラーチャートより)


上記の絵具の三原色だけで描くと鮮やかな色にできない分、明暗の把握がしやすくなります。また、実際のモチーフの色彩感に近づけるための色の対比や組み合わせの練習になります。


明暗が的確に再現されると僅かな色数でもリアルな表現が可能です。


完成。
ブドウとホオズキ (F4号)


Tさんにとっては初めての多色による油絵で、試行錯誤しながら制作したのが分かる仕上がりになりました。この経験を通じて、現実の再現的な絵における明暗と色の関係を理解して頂けなのではないかと思います。次回の制作から徐々に彩度の高い色や三原色の間の色を加えていって、より色彩的で発色の良い絵を目指していくと良いでしょう。





2023年9月9日土曜日

三原色で描くエチュード

アトリエラポルトでは着彩の練習方法として三原色で描くことを勧めています。
発色は鈍くなりますが、明暗をベースにした色の扱い方を学ぶのに良い方法です。
 
今回は彩色油絵初挑戦のCさんの作品を紹介します、

使用絵具:
イエローオーカー、レッドオーカー、コバルトブルー、シルバーホワイト、バーントアンバー(黒の代わりと考える)
*仕上げに近ずくにつれ、少量のカドミウムイエローとカドミウムレッドを加えて彩度の落ち込みを補いました。



まずは、キャンバスと同じサイズの画用紙に鉛筆デッサンをしました。



デッサンをキャンバスに転写した後、バーントアンバーで明暗を付けた後、明部をシルバーホワイトで描き起こします。



三原色を自由に混色しながら対象の色を再現していきます。この時、油絵具の特徴とも言える透明(溶き油を多く加える)・不透明(溶き油を加えない)を使い分けると色合いの幅がより広がります。


蝋燭のある静物(F8号)


彩度の低い色調の中でボリュームと奥行きを追求した作品に仕上がりました。明暗の組み合わせなど構成に不慣れな点はありますが、油絵らしいマチエールと質感の表現が初心者と思えないほどです。これから徐々に透明度や色相の違う絵具を増やしていき、より発色の良い絵を目指していくと良いでしょう。





2023年7月10日月曜日

ガラスモザイクによるミニマム・リアリティの世界

 今回は現在ギャラリー・エスパス・ラポルトで開催されている常設展の中から、とてもユニークなガラスモザイクによる作品を紹介します。



作者の小黒哲夫氏は、フランス国内で最も権威ある美術学校と言われる国立高等装飾美術学校(École Nationaie Supereure des Arte Decoratifs)の壁画科を卒業され、建築装飾としてのモザイクから絵のように額に入れて部屋にかけられるモザイクまで、幅広い制作を手掛けています。




展示作品で使われているガラスはイタリア製の美しいモザイク用ガラスで、それをガラスカッターやペンチを使って必要な形に切り、板に貼って作られています。


厚さが4~5mmあるガラスを思い通りの形に切るのは難しく、誤差や思いもよらない形になってしまう事がしばしば起こります。しかし、そのように生まれた形を組み合わせながら作っていくところにガラスモザイクのおもしろさがあります。

ビニール袋に入った山型食パン
(455×333)


山型食パンとカマンベール
(333×242)


油絵を描く方は、リアリティ=細密描写と考えがちですが、小黒氏の作品を見ると限定された最小限のガラスチップの組み合わせからでもリアルな表現が可能な事がわかります。

角砂糖
(75×50)

それは、対象の構造的な把握と的確な明度(Valeur)と配色から生まれたもので、リアルな表現の本質をそこに見る思いがします。まさに、(造語ですが)ミニマム・リアリティの世界です。

コーヒー
(75×55)


この機会に是非ギャラリー・エスパス・・ラポルトでご覧ください。

*ギャラリー・エスパス・ラポルト「常設展」

東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビル1階
営業時間:8:00~19:00
休廊日:土曜・日曜・祝日



2023年2月3日金曜日

固有色の明度を追わないデッサン

 今回はアトリエラポルトの講師が描いたデッサンのプロセスを紹介します。

西洋のアカデミックなデッサンの教則本を調べてみると、デッサンは正確な形を表現する事が重視されていて、対象固有の明度を再現する事はしていないのがほとんどです。
アトリエラポルトでもそれに倣って、基礎のデッサンではモチーフの固有色の明度は追わないで線とi陰影だけでボリュームと前後関係を表すようにしています。
例えば今回のモチーフのセットは次のようなものです。


これをどうデッサンとして仕上げていったかご覧ください。








実際のブドウは暗い紫色ですし、デコポンやクルミにも固有の明度があります。しかしデッサンの練習には固有色の明度を省いた方が形に専念できる上に、背景の白い紙に対して明るさを保ちながらデッサンを仕上げることができます。デッサンを学ばれる方の参考にして頂ければ幸いです。


2022年6月11日土曜日

楽器を描く

 静物画のモチーフとして昔からよく描かれたのが楽器です。今回は金色の輝きが美しいコルネットを描いた絵を紹介します。制作者は、仕事の傍ら地道に絵を学ばれているMさんです。



構図を決めてデッサンを取った後、バンダイクブラウン(ニュートン社製)とシルバーホワイトでカマイユの手法を使って明暗をつけました。



全体の明暗のベースができたら、対象の固有色を置いていきます。



背景の左側の影のグラデーションは空間を広く取った分、意外に難しくなりました。最終的に額を加える事で右側とのバランスをとりました。





コルネットのある静物(530×333)キャンバスに油彩
使用絵具:
シルバーホワイト、イエローオーカー、ブラウンオーカー、レッドオーカー、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、ウルトラマリン、バンダイクブラウン、バーントアンバー



週1回1コマ(2時間半)の制作で、約5か月かけて仕上げました。達筆で要領よく描かれた絵ではありませんが、形と色を探しながらコツコツと絵具を重ねていった努力が実った作品です。
絵の描く喜びの一つに「発見」があると思います。ちょっとした色合いの違いで質感が現れたり、筆運びの違いで形がはっきりしたり、気がつかなかった形の変化や美しさに気づいたり・・・。
Mさんはこの制作を通じて沢山の「発見」をされたと思います。