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2025年6月25日水曜日

多色によるグリザイユ

 今回は油絵を学ぶ方法の一つとしてのグリザイユを紹介します。
参考にした本は、1900年代の初頭にフランスで出版されたエレンスト・アロー(Hrnest HAREUX)の油絵の完全講座(Coure complet de Penture a l'huile)で、19世紀末における伝統的な油絵の描き方を体系的に解説した内容で知られています。



この中でのグリザイユは、モノクロームのモチーフ(石膏像)を多色で描く練習方法として説明されていす。



これに従って受講生のKさんに「アバタのビーナス」を描いていただきました。

まずはデッサンを定着して、バーントアンバーで全体に下色をつけます。


乾かないうちに明るい部分を拭き取ります。(ワイプアウト)
 

次に暗部を筆を使って描いていきます。



全体の明暗が定まったら、いよいよ自由に絵具を混色して描いていきます。


使用絵具:イエローオーカー、カドミウムイエロー、レッドオーカー、カドミウムレッド、コバルトブルー、ウルトラマリン、ヴィリジャン、バーントアンバー、ローアンバー、シルバーホワイト


石膏の白さを出すコツは、徐々に明るくするのではなく、明るめにシルバーホワイトを置いてから暗くしていくことです。



完成。


背景をアローの本に書いてあった通り麻布を使いましたが、石膏に対して暖色に見えて奥行きを出すのに苦労されました。これは再考した方がよさそうです。

アローの方法によるグリザイユの優れた点は、
・見た印象に無理なく制作できる
・明暗の変化に色合いの変化も加える事ができ、前後関係や奥行き、光の輝きや空気感が表しやすくなる。
・混色の勉強になる

今回のKさんの作品は、多色の混色によって現実の再現性は高くなりましたが、明暗の変化にもっと積極的に色相の変化が加わるとアローの意図により近づくと思います。
現在日本ではグリザイユと言うと、古典技法の中の1つと考えられがちですが、このようにデッサンと油絵を繋ぐ練習方法としても活用して良いのではないでしょうか。



2024年1月15日月曜日

グリザイユで明暗法を学ぶ

 アトリエラポルトでは、グリザイユをデッサンの延長線上としてカリキュラムに取り入れています。今回はその目的で描かれたグリザイユの制作過程を紹介します。
作者のTさんは、このようなグリザイユを描くのは初めての方です。


まずはキャンバスの大きさ(F4号)に区切った画用紙に鉛筆でデッサンして頂きました。


このデッサンでは、遠近法に従った正確な形を描く事を目的にしている為、背景もモチーフ固有の明度も表現していません。石膏像のような白いモチーフと同じように描いています。
これに対してグリザイユでは、モチーフ固有の明度と背景を含めたすべての明暗関係の再現が目的です。

デッサンをキャンバスに転写した後、ベースとなる明度のグレーで全体を塗ります。


それより明るい部分は拭き取って白くし、暗い部分は黒を足して明度を落とし、大きく3段階で明暗関係を捉えます。


大きな明暗の配置が決まったら、いよいよ描き込んでいきます。


その際、暖かいグレー(アイボリーブラックとシルバーホワイト)と冷たいグレー(ブルーブラックとシルバーホワイト)を光と影や前後関係に従って使い分けることで、より輝きのある自然な空間の表現を目指します。


常に対象と見比べて描き進め、時には離れて見ることが大切です。



完成。

グリザイユ(F4号) キャンバスに油彩


明度(Valeur)が適切に再現されたグリザイユになったと思います。形も細部までよく描き込まれてクリアに表現されています。このように油絵具はデリケートな明暗や滑らかなモデリングを再現するのに適した画材です。アトリエラポルトでは、「デッサンは形」「明暗の再現はグリザイユ」と分ける事で、デッサンから油絵へ繋がりをもって学んで頂けるように考えています。


2023年3月16日木曜日

暖色と寒色について

 今回は現在ギャラリーエスパスラポルトで開催されているグリザイユ展から、暖色と寒色について考えてみましょう。

「エッ、グリザイユに色があるの?」と思われるかもしれませんが、ここでの暖色・寒色とは、同一色相上の暖かい・冷たいといったニュアンスのことを指します。例えば、赤でも紫に寄った赤は冷たく、オレンジに寄った赤は暖かく感じます。同様にグレーも、アイボリーブラックを使ったグレーは暖かく、ピーチブラックやランプブラックで作ったグレーは冷たく感じます。この違いを利用して、光のあたっている所は暖かいグレー、影は冷たいグレーというように使い分けることで、より豊かなボリュームと奥行き、そして光の輝きを表わすことができます。

次の2点の作品は、1点がシルバーホワイトとアイボリーブラックだけで、もう1点がアイボリーブラックにブルーブラックを加えて描いたものです。



使用絵具:アイボリーブラック、シルバーホワイト

使用絵具:アイボリーブラック、ブルーブラック、シルバーホワイト

画像では分かりにくいですが、寒暖を使い分けた方がより輝きのあるグリザイユになっていると思います。


次のグラデーションは、シルバーホワイトにレッドオーカーとコバルトブルーの混色によってできるグレーの変化を表しています。


このグレーを使って描いた作品が、下の面冠女神胸像です。より寒暖のニュアンスの豊かなグリザイユになっています。

面冠女神胸像(P15号)
使用絵具:レッドオーカー、コバルトブルー、シルバーホワイト




展示の中には、寒暖のニュアンスを使ったグリザイユを応用したエチュードもあります。



このような明暗と色についての考え方は、古典絵画から印象派に至る色使いのベースとなったものです。ギャラリー・エスパス・ラポルトで実際にご覧頂けたら幸いです。

グリザイユ展
3月24日まで(延長)8:00~19:00
休廊日:土曜・日曜・祝日
ギャラリー・エスパス・ラポルト
東京都中央区日本橋小伝馬町17-9(さとうビル1階)





2023年3月1日水曜日

グリザイユ展

 今回は27日からギャラリー・エスパス・ラポルトで始まった「グリザイユ展」をご案内します。
一般的にグリザイユ(Grisaille)は古典的油絵制作の工程の1つと考えられていますが、アトリエラポルトではデッサンの延長線上として授業に取り入れています。
現実の空間の再現には明暗(Value)を的確に捉えることが必要です。油絵具はそれに最適な画材であると共に、初心者の方が油絵に慣れて頂くためにもグリザイユは良い練習方法です。
「グリザイユ展」では、アトリエラポルトの受講生がいろいろな方法で描いたグリザイユ作品を展示しています。絵の表現における明暗(Value)の重要性と「美しさ」を考えるヒントになれば幸いです。




グリザイユ展 (モノクロームのエチュード)
会期:2023年2月27日〜3月17日 (8:00〜19:00)   
休廊日:土曜・日曜
場所:ギャラリー・エスパス・ラポルト
   東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビル1階
   TEL:03-6661-0370    
 



2021年12月16日木曜日

「初めての油絵」の動画の3回目

「初めての油絵::グリザイユで静物を描く」の最終回をYouTubeにアップしました。
制作は1日1コマ(2.5時間)で9日間で終わりました。その最終日を早送りにしてまとめた動画です。
デッサン(形)から現実の明暗(value)の再現への過程を見て頂ければと思います。





*スマホでご覧の方で動画画面が出ない場合は、ウエーブバージョンにするとご覧頂けます。

 


グリザイユ (M6:410×242)キャンバスに油彩




2021年11月17日水曜日

「初めての油絵」の動画の2回目

 「初めての油絵:グリザイユで静物を描く」の2回目をYouTubeにアップしました。

今回は転写したデッサンに白と黒の油絵具で明暗を着けていきます。使用絵具は、シルバーホワイトとアイボリーブラック、キャンバスはクレサン社の66番です。

最初は明暗を大きく3~5段階に塗り分けていきます。その過程と方法が参考になれば幸いです。



*スマホでご覧の方で動画画面が出ない場合は、ウエーブバージョンにするとご覧頂けます。



2021年11月4日木曜日

初めての油絵:グリザイユで静物を描く

 アトリエラポルトの受講生の制作過程を動画にしてYouTubeにアップしました。

今回のテーマは、「グリザイユで静物を描く」で3回に分けて配信します。

グリザイユにはさまざまな方法がありますが、アトリエラポルトではデッサンの延長線上として授業に取り入れてます。グリザイユを通して、現実の明暗(Value)の再現や明暗法を学び、油絵具の扱いにも慣れて頂くことを目的としています。

そのために、まずはデッサンをきっちりと描いてから、それをキャンバスに転写して油彩に入る方法をとっています。時間は掛かりますが確実な方法です。

第1回目は、デッサンからキャンバスに転写する過程の動画です。参考にして頂ければ幸いです。



*スマホでご覧の方で動画画面が出ない場合は、ウエーブバージョンにするとご覧頂けます。




2021年4月3日土曜日

静物をグリザイユで描く

 今回はアトリエラポルトでおこなっているグリザイユを紹介します。


制作者のCさんはご職業がイラストレーターで数年前から断続的にデッサンを学びに来て頂いてます。

グリザイユを描くのは初めての体験です。





グリザイユ(Grisaille)とは、「灰色」を意味するフランス語の「gris」に由来し、主に灰色(グレー)で描くモノクロームの絵を指します。

歴史的には大きく分けて2種類の使われ方がありました。
1つは、大理石や石の彫刻の代用として建築装飾や絵画に用いるグリザイユ、
もう1つは、油絵の下書きとして用いるグリザイユです。

アトリエラポルトではそのような経緯を踏まえながら、現実の明暗を再現したデッサンの延長線上としてグリザイユをカリキュラムに取り入れてます。

まず最初に中間色の紙に白と黒のチャコール鉛筆でデッサンをして頂きました。
ここでは構図や個々のモチーフの形とボリュームを表現する事が目的なので、現実空間の再現はしていません。





出来上がったデッサンをトレーシングペーパーを使ってキャンバスに転写しました。


油彩では、まず背景を含めた空間全体の明暗関係を3~4段階で描き分けます。

使用絵具は、シルバーホワイとアイボリーブラックだけです。



背景とモチーフとの明暗関係、鑑賞距離からのコントラストの変化などを見比べながら、徐々にハーフトーンを加えて描きこんでいきます。
油絵具は大きな面積を塗り分けたり、デリケートな明暗の変化を再現しやすい画材です。

Cさんは油絵具を使うのも初めてでしたが、初心者の方が油絵具に慣れて頂くためにもグリザイユは有効な手段です。


静物のグリザイユ M6号




初めてのグリザイユで描いた静物画でしたが、質の高い仕上がりになりました。

このようにアトリエラポルトでは、デッサンは形、現実の明暗(Valeur)の再現はグリザイユで学んで頂いてます。





2019年12月7日土曜日

アトリエ・ラポルト:作品紹介

今回は、アトリエラポルトで最近制作された作品を紹介します。


・ダヴィデの耳
   キャンソン社製木炭紙(650×500)に木炭
  




制作者のT.hさんは、アトリエラポルトで学ばれて10ヶ月目。初めて木炭を使ったデッサンです。

石膏の白さを保ちながら、細部まで形のボリュームを再現するのに苦労されました。




・グリザイユによる静物
  クレサン社製キャンバス(66番)にシルバーホワイト、アイボリーブラック
  


制作者のN.tさんは、アトリエラポルトでデッサンをゼロから学ばれて2年。初めての油彩画です。最初から完成度の高い作品になりました。



・コーヒーミルのある静物 (F6号)
  クレサン社製キャンバス(66番)に油彩



このブログでも度々作品を紹介しているベテランのK.yさん。現在は、固有色の中の色の変化と、モチーフの置かれている環境におけるリフレクションの効果を研究中です。




・インパラ(P6号)
  クレサン社製キャンバス(66番)に油彩




退職をされてから絵を始めたM.aさん。アトリエラポルトに移ってこられて2年になります。
今回は、教室にあるモチーフの組み合わせでシュールな表現に挑戦しました。




2019年6月17日月曜日

寒暖のニュアンスを加えたグリザイユ

今回は、グリザイユのエチュードの方法について紹介します。
(制作は、アトリエラポルト3年目のY.mさんです。)

グリザイユ(Grisaille)は、その名の通り灰色または灰色系の絵具で描かれた単色画を指しますが、そこに「暖か味」や「冷た味」と言った若干の色合いの変化を加えることで、単純なモノクロームのグリザイユより、より自然な光の輝きや空間やボリュームを感じさせることができます。

アンリ・バルツは「デッサンの文法」という著書の中で、これを「ニュアンスのシンホニー」と名付けています。
(Grammaire de dessin, Henry BALTH 1928 )

例えば、次の2点のグリザイユは、最初がモノクロームのグリザイユで、次が寒暖のニュアンスを加えたグリザイユです。(画像での正確な再現ができないのが残念ですが)




モノクロームのグリザイユ








寒暖のニュアンスを加えたグリザイユ








寒暖のニュアンスを使って描いたグリザイユは、暖色が前進色、寒色が後退色という色の生理的作用に準じて、背景は冷ためのグレー、テーブルは手前に来るほど暖かめのグレーに、モチーフの明部は暖かめのグレーに、影は冷ためで反射光は暖めに、落ちる影は冷ためのグレーにしてます。単純なモノクロームのグリザイユより、豊かな表現になっていると思います。ただし、寒暖の関係が対象の前後関係やボリュームと合っていないと、どんなに明暗が正確でも不自然で気持ち悪い印象を与えてしまします。初心者がよく「粉っぽい」とか「顔色が悪い」絵になる原因の一つがここにあります。

次の絵は、「寒暖のニュアンス」を応用して、固有色の再現を含めて白い石膏の球体を描いたものです。その効果が、よりはっきりと表れていると思います。






















このような固有色に対する寒暖のニュアンスの幅の扱いには個人差があり、それが作品の表現に大きな影響を与えます。例えば、ドラクロワは人体や衣服などのハイライトから影の最暗部に至るモデリングの中に、驚くほど大胆な寒暖(色相)の変化をつけています。その反対に、アングルは意識して見ないと気付かないほど微妙に変化をつけています。



左の画像は、アングルが美術学校時代に描いた習作の部分です。当時のアカデミーの規範に従って、肌色に寒暖のニュアンスを加えてモデリングされているのが分かります。

アトリエラポルトでは、寒暖のニュアンスを加えたグリザイユは、このような感覚を磨くのにとても良い方法だと考えています。