2011年12月23日金曜日

本の紹介 4

「構図法」  シャルル・ブーロー著  藤野邦夫訳  小学館 2000年


右が原本、左が訳本
 原本は、1963年にフランスで出版されたもので、70年代後半には、日本でも一部の人たちの中では知られており、翻訳が望まれていた。









上が原本、下が訳本
 副題に「名画に秘められた幾何学」とあるように、ブーローは、中世の絵から20世紀の抽象画までを、幾何学による構成という視点から分析を試みている。背景には、20世紀前半に表れる抽象画や黄金比などを使った幾何学的構成に対する関心の高まりがあり、それは、序文をジャック・ヴィヨンが書いていることからも窺える。当時からこの本以外にも、プロポーションなどに関する専門的な研究書はいくつも出版されていたが、これほど歴史的視点からの詳細な構図の研究書は、フランスでも過去に例がなかったと思われる。

日本語版は、右の写真でも分かるように、原本に近いレイアウトを守り、文章も読みやすく訳されている。








いま日本では、古典絵画の技法を研究し、優れたテクニックで作品を描いている画家が増えいるが、構図の観点からも西洋絵画の本質に迫ろうとする人たちのための必読書である。

2011年12月16日金曜日

古典絵画を目指して 1

古典絵画のリアリティーと、マチエールの美しさに憧れて油絵を始めたS君の制作過程を報告します。

古典絵画の技法については、今日本の若い世代の画家たちの間でも関心が高まり、さまざまな方法が研究され実践されています。今回S君には、グザビエ・ド・ラングレの方法をベースにして、19世紀前後にフランスで行われていたと考えられる技法で、静物画を描いてもらいました。




  静物画は、モチーフの選択と配置が重要です。ここでうまくいかないと、どんなに優れたテクニックで描いたとしても、良い作品にはなりません。S君は、時間をかけて入念に構図を決めた後、透視枠を使い、遠近法に従って、できるだけ正確にデッサンをおこないました。


















  グレーの地塗りを施したキャンバスに、テールドカッセルでデッサンを定着させ、明暗をつけていきます。

















  大きな明暗の配置と組み立てができたら、シルバーホワイトで、明部を描き起こす作業(piambura)に入ります。

2011年12月9日金曜日

絵画教室 アトリエ・ラポルト 作品紹介 5

アトリエ・ラポルトで描かれた作品の紹介です。



油彩 M12号 (制作時間:週2時間半で約2か月)





油彩 M12号(制作時間:週2時間半で約3か月)





油彩 F4号(制作時間:週7時間半で約2か月)




2011年12月2日金曜日

公募展をめざして 2

公募展の搬入日まであと3か月、Kさんの制作もいよいよ着彩の段階に入りました。






2011年11月25日金曜日

絵画教室 アトリエ・ラポルト 作品紹介 4

アトリエ・ラポルトで描かれた作品紹介の4回目です。

グレーのキャンソン紙(A2)にチャコール鉛筆と白チョーク(制作時間:週5時間で3回)



油彩グリザイユ(サイトサイズ法による)F4 (制作時間:週15時間で2回)
使用絵具:シルバーホワイト、アイボリーブラック、ローアンバー



油彩グリザイユ(サイトサイズ法による)F4 (制作時間:週5時間で2回)
使用絵具:シルバーホワイト、アイボリーブラック、ローアンバー






油彩グリザイユ(サイトサイズ法による)F6 (制作時間:週15時間で3回)
使用絵具:シルバーホワイト、アイボリーブラック、ローアンバー

2011年11月18日金曜日

公募展をめざして 1

Kさんは、公募展の入選をめざして、教室で大作の制作に励んでます。

今回は、50号の人物画の制作過程を追っていきます。



インプリマトゥーラを施したキャンバスに、デッサンを転写してテール・ド・カッセルで陰影をつけ、シルバーホワイトで、明部を描き起こす。















シルバーホワイトのみで、肌を中心に描き起こし、中間のトーンはオプティカルグレーで作る。



















服と背景は、シルバーホワイトとテール・ド・カッセルで、実際の明度より明るめに描く。















現実の空間再現を求めるためには、明暗法による構成が重要です。手間はかかりますが、この段階の作業をしっかりとしておくことが必要です。

2011年11月12日土曜日

絵画教室 アトリエ・ラポルト 作品紹介 3

今年の春から夏にかけて、教室で描かれた作品紹介の3回目です。

鉛筆デッサン 画用紙A2 (制作時間:週2.5時間で4回)


鉛筆デッサン 画用紙A2 (制作時間:週2.5時間で2回)



鉛筆デッサン 画用紙A2 (制作時間:週2.5時間で4回)

2011年11月4日金曜日

水性の地塗りの上にグリザイユを描く

T君は、自作した白亜と膠で地塗りしたボードに、グリザイユを描いてみました。




サイトサイズ法で、描き進めていきました。


















溶剤は、リンシードオイルに、テレピンだけのシンプルなものを使っています。













絵具は、シルバーホワイトとアイボリーブラックに、ローアンバーを加えて、寒暖の調整ができるようにしてあります。
















 リンシードオイルとテレピンだけの溶剤にも関わらず、水性の地塗りのおかげで、思うような塗り重ねが可能になったようです。

水彩の地塗りの上に置かれた絵具は、余分な油が吸収性されて固くなり(乾燥はしていませんが)、すぐに塗り重ねが可能になります。 また、表面に油が浮いたような状態になりにくく、塗り重ねた絵具が下層に馴染んで、滑らかなモデリングが可能となります。

ただ、生のリンシードオイルだけで描くと、時間が経つにつれツヤが引けてきます。ツヤ引けしにくいように、樹脂を加えるか、途中からスタンドオイルを加えていくとよいでしょう。 また、完全乾燥後(約1年)にニスをかけるかことが望まれます。






2011年10月26日水曜日

絵画教室 アトリエ・ラポルト 作品紹介 2

今年の春から夏にかけて、教室で描かれた作品紹介の2回目です。

F10号(制作時間:週7.5時間で約3か月)





M12号(制作時間:週2.5時間で約2ヵ月)


F6号(制作時間:週5時間で約2ヵ月)

2011年10月21日金曜日

ポール・セルジエの色彩論によって 5


描く側も教える側も試行錯誤を繰り返しながら、ようやく完成に至りました。

色の濁りがない発色のよい作品に仕上がったと思います。 また、パレット上の絵具を寒色と暖色に分けて扱うことによって、寒暖の対比が強く意識され、色彩効果の高い絵となりました。

セルジエのこの色彩方法は、実際に使ってみると、ドニに代表されるナビ派の表現を念頭に考えられているのが分かります。不透明な色を色面で置いったナビ派の画法には、セルジエのやり方はとても合理的です。反面、セルジエのグレーを混ぜると、どの色も不透明になり、油絵具の特徴である透明性を生かした描き方にはむきません。Yさんは、今までクラシックな技法をベースに描かれていたので、戸惑われたことと思いますが、結果的には充実した仕上がりになりました。今後の課題としては、対象をを整理したり、色面で構成するなどして、より明確な形と色彩の表現を追求していくことが上げられます。


























2011年10月12日水曜日

絵画教室 アトリエ・ラポルト 作品紹介 1

今年の春から夏にかけて、教室で描かれた作品を紹介します。




M20号 (制作時間:週5時間で約3か月)





M12号 (制作時間:週2時間半で約2か月)




M15号 (週2時間半で約3か月)

2011年10月7日金曜日

ポール・セルジエの色彩論によって 4



パレットの中央に黒いテープを貼って、右側に暖色系の絵具、左側に寒色系の絵具を並べ、お互いを混ぜ合わせないよう注意する。 

絵具は必要な絵具だけを出して使うのではなく、常に全色をスペクトルの順序に従って置くように心がける。 














空は、全体としては青い寒色の扱いであるが、部分的には暖色を並置して(特に雲の明るいところなど)、単調にならないようにする。













空との色彩的な対比を考えながら、暖色系で建物の着彩を進めていく。















影の部分も、ただ明度を落として暗くするのではなく、光の当たっている明部との色彩的な対比を考えながら決めていく。

2011年9月30日金曜日

ポール・セルジエの色彩論によって 3


今回から、セルジエの色彩論を応用した制作の過程を紹介していきます。


キャンバスと同じサイズの画用紙にデッサンを描き、トレーシングペーパーを使ってキャンバスに転写する。




転写したデッサンを、溶き油に少量の絵具をまぜてなぞりながら定着させる。










モノトーンで、明暗の組み合わせとバランスを考えながら、陰影をつける。












空から色を着け始める。 寒色の絵具と暖色の絵具が混ざらないように、点描のように絵具を置いていく。

2011年9月21日水曜日

水性の地塗りを求めて 2

今回は、実際の作業を説明します。


1.湯煎して溶かした膠を、温かいうちにボードの両面に塗る。














2.乾かしてから、画面となる側に再度膠を塗る。
乾かないうちに、ボードの周囲より3センチほど大きく切ったハトロン紙にも膠を塗り、気泡が入らないように手のひらで、空気を抜きながら慎重に腹合わせる。





3.再び乾かし、周囲にはみ出たハトロン紙をカッターで切り取ってから、100ccの膠水に対して40gの白亜を加えてよく混ぜた地塗り塗料を、刷毛で素早く塗る。









左:2度塗り  右:4度塗り
4.希望の白さになるまで、「乾かして塗る」を繰り返す。より早く白くしたい時には、白亜にリトポンまたは亜鉛華を加えてもよい(50%)