2016年5月14日土曜日

黒い背景の静物

今回はアトリエラポルトで学ばれて3年のK.yさんの制作過程を紹介します。

これまでに習得した技術を、自身の作品にどのように生かすかを模索しているところです。






そこでモチーフは、教室の物ではなく、わざわざ房総の海まで行って拾ってきた流木と枯葉、セティングは黒い背景を使って組まれました。







最初にキャンバスと同じサイズ(P15号)の画用紙に構図を考えながら鉛筆デッサンをしました。



描き上がったデッサンをキャンバス(クレサン社製66番)に転写して、カッセルアースに少量のブラウンオーカーで色味の調整をしながら明暗をつけていきます。




ここで気を付けなければならないのは、黒い背景の場合、モチーフ全体は背景より明るくなるので、シルエットが美しい組み合わせ考えることです。





一通り明暗が付いたら、シルバーホワイトで明部を描き起こします。こうすると、しっかりとしたマチエールになり、上層の絵具の発色も良くなります。



彩色に入ります。

基本色のイエローオーカー、レッドオーカー、バーミリオン(またはカドミウムレッド)、ウルトラマリン、アイボリーブラックに、K.yさんの好みの色を加えていって、現在は左のパレットのようになっています。




最初は全体の色味のバランスを考えながら、下描きを生かして薄めに色をつけていきます。




徐々に濃い絵具を何層も重ねて、現実の色に近づけます。


















静物 (P15号)



モチーフのセッティングだけで20時間以上かけただけあって、ピラミッド形に螺旋を組み合わせた大変凝った構図になっています。

こってりと絵具がのった美しいマチエールで、貝や木の質感を良く表しています。習作を越えて、K.yさんの作品になっていると思います。

課題としては、技術面では、透明色をかけた(グラッシ)部分が浮いて見えないようにすること、色彩面では、反対色(例えば補色)を効果的に使う工夫をすること、が上げられます。

コンクールなどに出品されてもいいレベルの作品だと思います。