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2024年2月25日日曜日

本の紹介「スカルプターのための美術解剖学」

今回は久しぶりに本の紹介をします。
最近大きな書店の美術書のコーナーに行くと、何種類もの美術解剖学の本が並んでいて驚かされます。油絵の描き方や技法書の類の出版物が少ないのに比べると、ブームのようにさえ感じます。

アトリエラポルトの蔵書から


その中で最もお薦めなのが「スカルプターのための美術解剖学」の3冊です。
著者はアルディス・ザリンスとサンディス・コンドラッツ、出版社はボーンデジタルです。

左から、1巻が「人体全体の解剖学」2巻が「表情編」3巻が「頭頚部編」


題名からすると、彫刻家やフィギュアー作家 のための解剖学本と思われそうですが、むしろ絵を描く方に最適な内容と言ってよく、CGの技術を使った正確で分かりやすいイラストで説明されています。






特筆すべきは、単に骨や筋肉の説明だけではなく、造形上どのように人体を捉えると良いかまで解説されている点です。



難を言うと、3冊買うと19,000円と値段が高い点です。でも、内容的には十分価値のある本です。1冊買うなら1巻目の「人体全体の解剖学」、肖像画を描く方には3巻目の「頭頸部編」が良いでしょう。美術解剖学書で迷われたらこの本です。



2024年1月9日火曜日

ついに入手! ウードン作「エコルシェ」

アトリエラポルトは受講生の方々に支えられて今年で13年目に入ります。今回はより良い学びの場となるように、最近ようやく購入できた石膏像を紹介します。

美術解剖学を学ぶ上で欠かせないのが「エコルシェ」(écorché .剥皮像)と呼ばれる像です。中でも最も有名ものが、新古典主義の彫刻家ウードン(Houston,1741-1828)が原型を作ったこの像です。



昔のヨーロッパの美術学校ならどこにでもあった像ですが、日本で販売されたことはなく入手は長年の夢でした。それが受講生Kさんの情報と助けを借りて、この度アトリエラポルトで購入することができました。


原型は等身大ですが、それを約75cmに縮小したものです。製作はアメリカのカプロニ コレクション(CAPRONI COLLECTION)で、石膏像作りの伝統と精度の高さではアメリカ随一と言われています。


日本で販売されているクードロン作のエコルシェよりポーズが自然で描きやすく、筋肉もわかりやすくできています。受講生のデッサンの目標にして頂ければと思います。



2021年6月5日土曜日

骨格を学ぶ

前回に引き続き、今回はアトリエラポルトでおこなっている骨格の学び方の一例を紹介します。

制作者は同じくA君で、前回描いたエコルシェのデッサンに、骨格標本や美術解剖学の本を参考にしながら、骨を描き込んでいく方法を試みました。骨格を立体的に把握するのは難しく時間のかかる作業ですが、実践的な勉強方法です。




まずは、完成したエコルシェのデッサンにトレーシングペーパーをあてて、輪郭を写し取ります。



移し取ったデッサンに、骨格標本と美術解剖学の本を見ながら骨を描き込んでいきます。



幸いなことに最近日本では美術解剖学に関する本が多数出版されています。中でもやはりリシェ(Paul Richer:1849-1933)の本は、挿絵の正確さと美しさでお勧めです。(下段左から3冊目)




バメス著「基本の人体デッサン」より
肋骨や骨盤などは細かい骨の変化は省略して、構造的な形(幾何学的な形)で捉えるようにアドバイスしました。




関節の部分など不正確な所も多々ありますが、初めての試みとしては、良くできた方だと思います。現実のモデルさんを描いたデッサンではもっと難しくなりますが、その分デッサンの狂いを内部から考えることが出来るので、上達には必要な過程です。




2021年5月22日土曜日

エコルシェを描く

今回はエコルシェの石膏像を描いたデッサンを紹介します。


エコルシェ(Écorche)とは、直訳では「剥ぐ」という意味で、美術用語では人体の皮膚を取り除いて筋肉を表した像を指します。

人体の形を解剖学から学ぶために作られ、昔の西洋の美術学校には必ずあった像です。その代表的なものが彫刻家ウードン(Jean-Antoine Houdon.1741-1828)が作ったエコルシェです。(右写真)

残念ながら日本では入手困難です。




現在日本で購入できるエコルシェの石膏像は、クードロン(jacques Eugene Caudron.1818-1865)制作の2体と作者不明の小型の像1体だけです。アトリエラポルトでは、クードロンの2体を所有しています。








今回その内の1体にチャレンジしたのは、香港からの留学生A君です。




この石膏像は、筋肉の形を学ぶ以前に全体のプロポーションを捉えるのが大変難しい像です。


時間をかけて何度も測り直しをしながら全身の形を決めた後、個々の筋肉を描きこんでいきました。








石膏像としての白さを保ちながらモデリングする(ボリュームをつける)ことが大切です。




エコルシェ(650×500)画用紙に鉛筆


粘り強く解剖学の本と照らし合わせながら制作を進められて、完成度の高いエコルシェの石膏デッサンになりました。エコルシェを描く目的は言うまでもなく、人体の筋肉や骨などの形やつきかたを覚えることで、表面的な陰影の変化を描くことではありません。それにはかなりの制作時間と忍耐が必要ですが、確実に解剖学的認識を高める方法です。



2017年7月23日日曜日

アトリエの道具と画材 13 美術解剖像

今回は美術解剖学を学ぶ上で参考になる全身像の模型を紹介します。


美術用の人体解剖像(エコルシェ:Ecorche)として西洋で良く知られているのが、ウードン(Jean-Antoine Houdon.1741‐1828)作のこの像です。その石膏によるレプリカは、昔のフランスの美術学校には必ず置かれていもののようです。

現代のように映像技術が発達していなかった時代には、立体的に筋肉の構造を学べる貴重な石膏像だったと思います。

残念ながら今の日本では入手することは困難です。


そこで、アトリエラポルトでは次のようなエコルシェを使っています。










これはクードロン(Jacque Eugene Coudron.1818-1865) が作った原型を、岡石膏が石膏像にしたものです。高さは68㎝で彫りが良く再現されています。















ただプロポーションが西洋人男性で、しかもかなり理想化されているので、実際のモデルさん(特に女性)と比べると違和感があるのも事実です。
















そこで最近ネットで購入したエコルシェがこれです。

樹脂製で高さが27㎝と小さいのですが、非常に正確な上、現実のモデルさんに近い自然なプロポーションで作られています。














画家にというより、フィギュアやCGの作家の為に販売されているようです。男性像もあるのですが、体形がマッチョ過ぎてお勧めできません。


理想は、これで関節が動けば言うことないのですが・・・








2014年2月5日水曜日

美術解剖学を学ぶ 

今回は、美術解剖学の本の小史を紹介します。

リッシェの著作
西洋ではルネッサンス以降、美術解剖学に関する本は、医学に近いものも含めて数多く出版されています。その中で最も優れた著作を残した人物に、ポール・リッシェ(Paul Richer,1849‐1933) がいます。
リッシェ作 「三美神」











著書の中のリッシェ自身によるデッサン





リッシェは、医者として美術解剖学や生理学を研究すると共に、彫刻家としても作品を残しています。パリの美術学校の美術解剖学教授を務め、その広範囲で徹底した研究に、自身で描いた正確で美しいイラストを載せた著作は、多くの芸術家の参考にされました。現在でもその一部が、英訳版などで手に入れることができます。











右上:西田正秋 「顔の形態美」 1948年
左下:西田正秋 「美術解剖学論考」 1944年
左下:中村不折 「芸術解剖学」 1929年
右下:藤島武二「解剖応用人物画法」 1941年

日本人の著書としては、明治25年刊行の田口茂一朗「美術応用解剖学」が最も古いもので、その後明治36年に東京美術学校で芸用解剖学を教えた森鴎外と久米桂一郎によって、「芸用解剖学」が出版されます。現在古書として手の届くのは、大正4年の中村不折「芸術解剖学」あたりからではないかと思います。内容は、リッシェの本の要約版といった感じで解説は良いのですが、図版が極めて簡素なもので実用的ではありません。


日本での代表的な美術解剖学者といえば、西田正秋(1901~1988)を上げることができます。「美術解剖学論考」は、「人体とは? 美術解剖学とは何か?」を考えるには読んでおきたい本です。







柳亮監修 「芸用人体解剖図譜」 1944年

古書の中から、人物を描く時に参考にしやすい本を探すとすれば、藤島武二の「解剖応用人物画法」がお薦めです。また、戦時中(1944年)に柳亮らによって出版された「芸用人体解剖図譜」は、リッシェの本(最初の写真の右側の大きな本)をまるまるコピーした珍本です。


今では、書店の美術書のコーナーに多くの美術解剖学関連の本が並んでいますが、その内容の多くは上記のような本がベースとなっています。あまり注目されることのない歴史ですが西洋絵画の理解には役立つと思います。