2014年2月5日水曜日

美術解剖学を学ぶ 2 : デッサンに筋肉を入れる

前回に引き続いて、今回はAさんのデッサンに筋肉を入れていきます。


リッシェの著作
その前に、何冊か美術解剖学の本を紹介しておきます。西洋ではルネッサンス以降、美術解剖学に関する本は、医学に近いものも含めて数多く出版されています。その中で最も優れた著作を残した人物に、ポール・リッシェ(Paul Richer,1849‐1933) がいます。

リッシェ作 「三美神」











著書の中のリッシェ自身によるデッサン





リッシェは、医者として美術解剖学や生理学を研究すると共に、彫刻家としても作品を残しています。パリの美術学校の美術解剖学教授を務め、その広範囲で徹底した研究に、自身で描いた正確で美しいイラストを載せた著作は、多くの芸術家の参考にされました。現在でもその一部が、英訳版などで手に入れることができます。











右上:西田正秋 「顔の形態美」 1948年
左下:西田正秋 「美術解剖学論考」 1944年
左下:中村不折 「芸術解剖学」 1929年
右下:藤島武二「解剖応用人物画法」 1941年

日本人の著書としては、明治25年刊行の田口茂一朗「美術応用解剖学」が最も古いもので、その後明治36年に東京美術学校で芸用解剖学を教えた森鴎外と久米桂一郎によって、「芸用解剖学」が出版されます。現在古書として手の届くのは、大正4年の中村不折「芸術解剖学」あたりからではないかと思います。内容は、リッシェの本の要約版といった感じで解説は良いのですが、図版が極めて簡素なもので実用的ではありません。


日本での代表的な美術解剖学者といえば、西田正秋(1901~1988)を上げることができます。「美術解剖学論考」は、「人体とは? 美術解剖学とは何か?」を考えるには読んでおきたい本です。







柳亮監修 「芸用人体解剖図譜」 1944年

古書の中から、人物を描く時に参考にしやすい本を探すとすれば、藤島武二の「解剖応用人物画法」がお薦めです。また、戦時中(1944年)に柳亮らによって出版された「芸用人体解剖図譜」は、リッシェの本(最初の写真の右側の大きな本)をまるまるコピーした珍本です。






参考にしている本は、リシェの弟子にあたる
Arnould Moreaux著 「Anatomie Artistique」

さて、Aさんのデッサンですが、前回の骨格と同じように、デッサンの上にトレーシングペーパーを置き、筋肉を描き入れていきました。




筋肉は、表面の形となって表れているので入れやすいと同時に、デッサンの狂いがよくわかります。特に、輪郭線の変化する位置や、線の重なりの上下の関係などがはっきりと理解できます。


Aさんのデッサンは完成度が高かったので、大きな修正をすることなく筋肉を入れられました。

この後、筋肉の上に脂肪がついて、男女の違いやモデルさんの形態的キャラクターが表われますが、今回は描き込まずに終わりにしました。


デッサンに骨格や筋肉が正しく描き込めたかを確かめるのは、単に解剖学の知識だけがあっても難しいものです。やはり豊かな人体デッサンの経験があってこそ、現実の形態にそった把握が可能になります。毎週土曜日の夜の人物デッサン研究会のメンバーを交えて、検証してもらいました。講師の気がつかなかった所なども沢山出てきて、楽しい勉強の場となりました。









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