今回は油絵を学ぶ方法の一つとしてのグリザイユを紹介します。
参考にした本は、1900年代の初頭にフランスで出版されたエレンスト・アロー(Hrnest HAREUX)の油絵の完全講座(Coure complet de Penture a l'huile)で、19世紀末における伝統的な油絵の描き方を体系的に解説した内容で知られています。
この中でのグリザイユは、モノクロームのモチーフ(石膏像)を多色で描く練習方法として説明されていす。
これに従って受講生のKさんに「アバタのビーナス」を描いていただきました。
まずはデッサンを定着して、バーントアンバーで全体に下色をつけます。
乾かないうちに明るい部分を拭き取ります。(ワイプアウト)
次に暗部を筆を使って描いていきます。
全体の明暗が定まったら、いよいよ自由に絵具を使って描いていきます。
使用絵具:イエローオーカー、カドミウムイエロー、レッドオーカー、カドミウムレッド、コバルトブルー、ウルトラマリン、ヴィリジャン、バーントアンバー、ローアンバー、シルバーポイント
石膏の白さを出すコツは、徐々に明るくするのではなく、明るめにシルバーホワイトを置いてから暗くしていくことです。
背景をアローの本に書いてあった通り麻布を使いましたが、石膏に対して暖色に見えて奥行きを出すのに苦労されました。これは再考した方がよさそうです。
アローの方法によるグリザイユの優れた点は、
・見た印象に無理なく制作できる
・明暗の変化に色合いの変化も加える事ができ、前後関係や奥行き、光の輝きや空気感が表しやすくなる。
・混色の勉強になる
今回のKさんの作品は、多色の混色によって現実の再現性は高くなりましたが、明暗の変化にもっと積極的に色相の変化が加わるとアローの意図により近づくと思います。
現在日本ではグリザイユと言うと、古典技法の中の1つと考えられがちですが、このようにデッサンと油絵を繋ぐ練習方法としても活用して良いのではないでしょうか。
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