前回に引き続き1879年に描かれた絵の修復報告です。今回はリタッチとニス塗りを紹介します。
絵具の剥落部分は150年程前に描かれた絵としては少なく、最も大きなところで1.5cmで、あとは米粒大が2〜3箇所でした。
はじめに欠損部分の穴埋めをします。(Masticage)
白亜を膠水で練った充填材を欠損部分に入れ、絵具層と同じ高さにして、はみ出た所を水を含ませた綿棒で拭き取ります。
充填材が乾いて固まってから、周囲の色と合わせます。(Retouche)
使う絵具は、下色に水彩絵具、油絵のツヤと透明感を出すのにマイメリ社製の修復用絵具レスタウロ( RESTAURO)を使います。
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左側がレスタウロ、右側が水彩絵具 |
オリジナルの絵具層にはみ出さないように、慎重に周囲の色と合わせていきます。
リタッチ終了。
最後に仕上げのニス引きです。
今回はターレンス社製の合成樹脂のニスを使用しました。
刷毛にニスをたっぷりと染み込ませた後、よく搾ってから塗るのがコツです。
ニスのムラができないように素早く塗ります。
修復終了です。週1回の受講時間の合間で作業をおこなって約半年かかりました。
修復を経験すると、今までに見えなかったり気づかなかった絵の奥深い内容を知ることができます。絵を甦らせた喜びと共に、遥か昔の作者から時空を超えて教わっているような感覚になるものです。Kさんのこれからの制作に生きていくことと思います。
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