2021年1月16日土曜日

アトリエの道具と画材:遠近法の箱

今回はアトリエラポルト講師が手作りした遠近法の教材を紹介します。


遠近法は三次元のリアルな空間を再現するには欠かせない技術ですが、その原理を理解するのは簡単ではありません。

そこで作られたのが右の「おかもち」のような箱です。


開けるとこのような物が出てきます。


組み立てると、次のようなマス目の入った枠を通して幾何形体を描くセットが出来上がります。これはルネサンスの時代から使われてきた遠近法の道具を模したものです。


1538年に出版されたデューラーの著書の中に、同じような道具を使って絵を描いている挿絵が載ってます。(A.DURER: Underweysung der Messung. 1538)




また、20世紀にパリの美術学校で遠近法を教えていたオルマの著作の中にも同様の道具でデッサンしている挿絵が載ってます。
(P.OLMER: PERSPECTIVE ARTISTIQUE.1943)

その間、約400年の時は流れても、遠近法の説明に同じ方法が用いられてます。





アトリエラポルトでは、受講される方にまずこの道具を使って遠近法の概略を説明しながら幾何形体を描いて頂いてます。

そして、その後の教室での制作の客観的なアドバイスの基にしています。


写真をトレースすれば遠近法を知らなくてもリアルな絵が簡単に描ける時代ですが、西洋の伝統的な絵画は遠近法の理論の上に築かれてきました。このような道具を使って正確な遠近法でデッサンしてみると、写真との違いが分かります。それは、「モチーフを見て描くとはどういうことか。」「絵のリアリティとは何か。」を考える拠り所になると思います。


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