2015年2月3日火曜日

寒暖のグリザイユの作品への応用

2014年12月7日のブログで、グリザイユにおける寒暖のニュアンスについて(ニュアンスのシンホニー)説明しましたが、今回はその作品への応用を考えてみたいと思います。

アンリ・バルツの本(Grammaire de dessin. Henry BALTH 1928)を参考に、E.f.さんにご協力を頂いて、佃島に取材された風景画を元に2種類の単色画を描いてもらいました。












1枚は、青系統による単色画で「青のニュアンスによるシンホニー」とバルツが呼ぶ方法です。

使用した絵具は、コバルトヴァイオレット、セルリアンブルー、コバルトブルー、ウルトラマリンで、これに彩度の調節にランプブラック、明度の調整にシルバーホワイトを加えました。コバルトヴァイオレット、セルリアンブルーが暖か味の青、ウルトラマリンが最も冷たい青になります。これを空間の前後関係や光と影に合わせて使い分けていきました。





佃島 (青のシンホニー) M4


もう1枚は、赤系統の単色画で「赤のニュアンスによるシンホニー」です。


使用した絵具は、ネープルスイエロー、イエローオーカー、ブラウンオーカー、ローシェンナ、バーントアンバーにシルバーホワイトです。バーントアンバーをベースに近景や明部にレッドオーカーからネープルスイエローに向かう温か味のある絵具を加えていきました。





佃島 (赤のシンホニー) M4
このようにグリザイユなどの単色画においても、「冷たい・暖かい」の変化を適切に付けることで、より一層空間感や光の輝きを表すことが可能になります。西洋では古くからおこなわれてきた方法です。

次にこの手法の応用例を巨匠の作品から見ていきます。





最初の2点は、ホイッスラーのノクターンシリーズからのものです。手段と目的が一致して素晴らしい表現効果を生んでいます。







次の2点は、ピカソの青の時代からのものです。空間的には、奥行きの浅い作品ですが、暖かい青と冷たい青の使い分けが見事にボリュームと前後関係を表しています。







暖系統を使った例では、やはり右のホイッスラーの作品が上げられます。このようにホイッスラーの作品は、一見写実的に見えますが現実の色の再現と言うよりも、明らかに意図的に色合いを作り、象徴的は表現効果を狙っているのが分かります。





また、ピカソの「ばら色の時代」の作品群は、その卓越した例と言えるでしょう。






最近の例は、カトランの作品に見ることができます。右のバラの絵は、背景の紫よりに寄った冷た目の赤に対し、バラのオレンジに寄った赤が、上のピカソの作品と同様の空間的効果をあげています。

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