今回は子供向けに作られた、とてもおもしろい美術書を紹介します。
題名は「立体で見る美術がわかる本」で、著者はロン・ファン・デル・メールとフランク・ウィットフォードです。福音館書店から2001年に美術の入門書として出版されました。(原本は1995年オランダで出版。日本語版の翻訳は市川恵里・池上理恵)
同じ著者による本は、15年ほど前にたまたま東京の洋書店で見つけて、その作りの面白さに感心していたところ、その後日本語訳で同じような本が出たので喜んだものです。
その最大の特徴は、美術作品の基本的見方が「とびだす絵本」のように立体的かつ具体的に説明されている点です。
目次は、
・美術はどのように作られるか
・写実的に描く
・光と色
・動き
・模様と構図
・物語となぞ
・スタイルとテーマ
となっていて、それぞれが非常に具体的に「手に取るように」解説されています。
「写実的に描く」では、なんとフェルメールの部屋が立体的に再現されています。
そしていかにフェルメールが遠近法を駆使して絵を描いたかが驚くほど具体的にわかります。
鑑賞地点(フェルメールの目)が設定されていて、そこから覗くとまさに絵のようです。
「光と色」では、混色の原理について、回転混色板や絵具チューブのイラストを使って説明されています。また絵画への応用例が示されています。
「動き」では、モビールが作れたり、コマ捕り写真から動く映像への発展過程とその影響を受けた美術作品が紹介されています。
「模様と構図」では、装飾(平面)と絵画(空間)の関係から構図について説明されていて、絵画の本質的な問題に触れる思いがします。
「物語となぞ」では、鏡を使った複雑な場面設定で知られるベラスケスのラス・メニーナスの部屋が再現されています。
国王夫妻側から見た場景 |
ベラスケス側から見た場景 |
子供向けの絵本と言うより、絵に興味をお持ちの大人の方にも大変参考になる本だと思います。
これだけの内容をわかりやすくこのような本の形で子供に伝えようとする文化的・歴史的背景に感心するばかりです。
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