今回は野外での風景制作やスケッチに便利な道具を紹介します。
左から0号、サムホール、4号のスケッチボックス。 右がイーゼルボックス |
そこでコンパクトにまとめて携帯しやすくしたのが、右のようなボックスです。
その原型は、西洋で野外制作が盛んに行われるようになった19世紀までさかのぼることができます。
左がサムホールサイズ(文房堂製)、右が0号(イタリア製)のスケッチボックスです。
開くと上部にスケッチ板が挿めて、下部に絵具や筆などが入れられ、スライド式の蓋がパレットになります。
箱の裏に穴が開いていて、パレットを持つように親指を入れると、そのまま手に持って描くことができます。
ちなみに「サムホール」というキャンバスのサイズの語源は、このスケッチボックスに開いた穴から来ています。
これは1900年頃のルフラン社のカタログに載っていたものです。
旅行などに持って行くには、大変便利なボックスです。
これは4号サイズのスケッチボックス。
筆者がイタリア製の絵具箱を改造して作りました。この大きさになると手に持つのは無理なので、座って膝に置いて使います。
最後はイーゼル付きボックス(フランス、ジュリアン社製)
野外で腰を据えて制作するにはお薦めの逸品です。
ボックス部分は金属製で、筆も絵具もたっぷり収納できます。イーゼル部分はスライド式で高さが自在に調節でき、横向きなら30号まで置くことが可能です。しかも安定性抜群です。ただ、絵具などをいっぱいに詰め込むとかなりの重量になり、専用のベルトで背負っても長距離を歩くのは大変です。
この絵は、クールベ作の「こんにちはクールベさん」(1854年)です。
右側の人物がクールベ自身で、背負っているのがこのボックスと言われています。
この頃になると画家が自然を前にして描くことも多くなり、そのための用具が発達したと考えられます。
今では旅行先で写真を撮っておいて、家に帰って油絵にすることもできますが、自然の光や空気を感じながら、変化していく風景を捉えようと格闘するのは、絵を描く大きな喜びの1つだと思います。
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