2018年4月21日土曜日

グリザイユから作品へ

アトリエラポルトでは、グリザイユをデッサンの延長線上としてカリキュラムに取り入れてますが、それを応用して作品にした例を紹介します。

制作はCGの仕事をされているK.yさんで、アトリエラポルトで学ばれて5年のベテランです。

一般的にグリザイユは、白い絵具と黒い絵具を使ってモノクロームで描くことが多いのですが、K.yさは10数種類の絵具を自由に使って、色のない石膏を描きました。板張りの背景で、鮮やかな色はありませんが、明暗をベースにデリケートな色相差を駆使した作品となっています。



始めにキャンバスと同じサイズの画用紙に鉛筆でデッサンしました。

キャンバスにデッサンを転写した後、モノクロームに近い色調で明暗を付けていきます。

徐々に色を加えまます。
今回のような彩度の高い鮮やかな色がない絵では、ボリュームや前後関係に添った寒暖の使い分けと色の響き合いが重要です。


エチュードとしてグリザイユでは、省いてしまうような鎖や木目を描き込むことで、K.yさん独自の絵の表現にしていきました。
















「ダビデの目」 P8号


ルーブル美術館の修復部門のディレクターで、画家でもあったグーリナ(J.G.Goulinat1883~1972)は、「画家のテクニック」という著書の中で、次のように述べています。

「どれだけ多くの人が、コロリストとは、派手な色彩をもって表現する画家だと思い込んでいることか。
ー中略ー
コロリストとは、使用する色調の中から、ヴィヴラッション(振幅)の最大限を、また透明、明るさ、光沢などの最大限を引き出す人である。」

K.yさんの今回の作品は、その文章を思い起こさせます。鮮やかな色はありませんが、寒暖の色の配置と響き合いが的確で豊かです。古典絵画の彩色法の基本に通じる効果になっていると思います。

参考文献:J.G.Goulinat “La technique des peintres" 1922年
             「画家のテクニック」大森啓助訳 美術出版社 1951年



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