2013年12月18日水曜日

「見て描く」 静物画

今まで人物を中心に絵を学ばれていたMKさんが、久しぶりに静物画を描かれました。その制作過程を紹介します。



人物画はモデルさんの都合で、なかなか見ながらじっくりと制作することができないものです。

その点静物画は、時間の許す限り、形や色の組み合わせを考えながら描き続けられるので、「対象を見て描く」という絵の基本的な訓練に適しています。

人物画を描かれていたMKさんには、物足りないモチーフかも知れませんが、あえてシンプルで明快な構成にして、じっくりと時間をかけて制作して頂きました。



まずは、キャンバス(P8号)と同じ大きさで、画用紙に鉛筆デッサンをしました。


デッサンをトレーシングペーパーを使ってキャンバスに転写した後、カッセルアースとシルバーホワイトで、明暗をつけていきます。

明暗が決まったら、その上から少しずつ色をかけていきました。使用した絵具は、イエローオーカー、レッドオーカー、ウルトラマリン、ヴィリジャン、クリムソンレーキです。


描き進むにつれて、彩度の高いカドミウムやコバルト系の絵具を加えて、ハイライトを中心に描き起こしていきました。
Mさんは、1週間に半日のローテーションで制作されたので、加筆用二スを使って、つや引けの調整をしながら描いていきました。 加筆用二スは、様々なものが市販されていますが、アトリエでは、ターレンス社の“Retouching Varnish” をペトロールで1:1に割ったものを薦めています。 また、下の層を生乾きのような状態にして加筆したい時には、溶き油を薄めて塗るのもよい方法です。

バラの花はこの絵の主役です。リアルに表現しようとして、花びらを1枚1枚描こうとすると、かえって形が狂ってくるものです。おわん型の基本形態を、光と影で表すつもりで見ることが大切です。


薔薇 P8号
 8号の大きさのシンプルな構成の作品ですが、デッサンから始めて約30時間かけて完成しました。
しっかりと対象を見ながら、粘り強く制作された成果が表れた作品になりました。 そこには、写真をトレースしたリアリティとは違う、対象の存在感と作者の目が感じられます。より一層「見る」ことを深めていって頂ければと思います。




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