2017年3月22日水曜日

暖色と寒色によるグリザイユ  1

今回は、暖色の絵具と寒色の絵具を使った石膏像のグリザイユを紹介します。描き手は、すでに画家として活躍中のH.mさんです。

この試みは、アトリエラポルトで参考にしているアンリ・バルツ著「デッサンの文法」の色彩調和の原理"ニュアンスのシンホニー”からの応用です。(Henry Balth:Grammaire du dessin)


本文を要約すると、
「色相は1色だけに限定されるが、そこには多くのニュアンスが与えられる。際立った色のコントラストはないが、隣り合う色相の控えめな干渉によって作らえる。効果は単純なモノクロームのグリザイユよりも、より豊かになる。」

この練習にはいく通りもの方法がありますが、今回は暖色の絵具(レッドオーカーまたはバーントシェンナ)と寒色の絵具(コバルトブルーまたはウルトラマリン)を使った最も寒暖の差のでる(ニュアンスの幅のでる)やり方です。


左はレッドオーカーとコバルトブルーの混色にシルバーホワイトを加えて作ったグラデーションです。絵具の混色では、中央のグレーのように混ぜ方によってニュートラルグレーを作ることができます。
このグレーを基準に、光の当たっている部分や手前の部分は左側の暖かいグレーで、影や奥の部分は右側の冷たいグレーを使うことで空間やボリュームがより強調されると共に、光の輝きや空気感も出しやすくなります。






色による表現を色相の違いや補色から言うことはあっても、暖色と寒色で考えることは少ないと思います。
しかし、明度の変化を寒暖に置き換えて考えてみることは、現実を絵に転換するには何が重要か、明度と色の相対的な関係とは何か、を学ぶ上で重要です。
それは単に見た印象を描くのではない、絵画独自の表現方法を考えるきっかけになると思います。

今回の使用絵具
シルバーホワイト
バーントシェンナ
コバルトブルー

準備段階として、バーントシェンナとコバルトブルーを混色してニュートラルグレーを作ります。これを基準にして、暖かいグレー(暖色)を作るにはバーントシェンナ、冷たいグレー(寒色)を作るにはコバルトブルーを加えます。

キャンバスにデッサンをした後、背景から始めます。この時のグレー(冷た目)を画面上での相対的な寒暖の基準にして描き進めました。


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