2018年8月8日水曜日

本の紹介 アルベルティ「絵画論」

左:1977年版 右:2011年改定新版

前回のブログでグリッド(碁盤状の升目)を利用した遠近法に基づくデッサンを紹介しましたが、それに関連して、今回はアルベルティ「絵画論」(三輪福松訳 中央公論美術出版 初版1971年)を取り上げます。原本は1435年にイタリアのフィレンツェで書かれました。




"De la Peinture"
Jean Louis Schefer 訳 Paris 1992

アルベルティ(Leon Battista Alberti,1404-1472)は、まさにルネサンスの人文学者を代表する人物で、その多肢に渡る教養と活動はルネサンス時代の理想像「万能の天才」として伝えられています。

後世に多大な影響を与えた著書も残し、その主なものは現在では日本語訳で読むことができます。
紹介する「絵画論」以外では、次のものがあります。
「建築論」 相川浩訳 
      中央公論美術出版 1982年
「芸術論」 森雅彦訳 
      中央公論美術出版 1992年
「家族論」 池上俊一・徳橋曜 
      講談社  2010年




特に「絵画論」(De pictura)は、ルネサンスに始まる新時代の西洋絵画の方法論を示した記念碑的な著作です。

内容は3巻に分かれています。

第1巻と第2巻は、おもに幾何学的遠近法と絵画の構成要素ついて論述。
第3巻は、技術論を越えて画家と作品はどうあるべきかについて述べています。

その内容についての解説は、その後多くの研究者が試みてますが、ここでは1992年にフランスで出版されたシェフェル訳に載っている作図を見てみます。












実際の作図法についてはここでは触れませんが、このように遠近法が生まれた当初から、グリッドを使った遠近法が考えられていたのが分かります。

グリッドを遠近を測る尺度として使用する方法は、その後「画家の遠近法」として発展し、西洋絵画の中で頻繁に表れます。

ボッティチェリ
ベラスケス








フェルメール

ティントレット















幾何学的遠近法は、単なる空間表現の手段ではなく、西洋の文化と言えるほど重要なものです。アルベルティの「絵画論」はそのさきがけで、西洋絵画を理解する上で欠かせない本です。

アトリエラポルトでは、このような方法論を今のデッサン教育の中に取り入れられないかと、試行錯誤しています。



0 件のコメント:

コメントを投稿