2019年8月2日金曜日

風景スケッチから作品へ

今回は風景画の制作方法の一例を紹介します。

写生に基づいた風景画は、できれば現場ですべて仕上げるのが理想です。
しかし現実には天気の変化や太陽光の移動により、良い条件で制作できるのはせいぜい1日2~3時間位です。大きめの作品になると、何日も滞在して現場に通わなければなりません。

そこで昔からよく行われてきた方法に、現場で小さいサイズのスケッチをして、それをもとにアトリエで再構成しながら大きな絵を仕上げる「ペイザージュ・コンポーゼ( Paysage Composé)」があります。コロー(Jean‐Baptiste Camille Corot 1796~1875)の作品などにその良い例を見ることができます。
今回の制作者のY.Kさんには、この方法を応用して描いて頂きました。

取材場所は長野県安曇野で、田植え前の水をはった「鏡田」がテーマです。

現場での油彩スケッチでは、主に遠近に即した明暗と色合いの変化を捉えること、そして何よりその「実感」を記憶に留めるつもりで描くことが大切です。





半日で1枚のペースで4~5枚の油彩スケッチを描いた中から、教室で制作出来そうな作品を選びました。










P15号のキャンバスに、構図や明暗の組み合わせを考えながらスケッチを再構成します。

特に、雄大な風景の奥行きを表すには大気遠近法の理論が役に立ちます。

参考文献
Valenciennes:Elements de perspective pratique.
L.Cloquet:Perspective pittoresque.











細かい形や描き込みは、写真で補いながら制作しました。

















常にスケッチから現場を思い起こして描き進めていくことが大切です。

















安曇野 P15号 キャンバスに油彩



約25時間かけて完成となりました。
教室での制作時間が長くなるほど写真に引きずられがちになりましたが、現場でのスケッチが「写真の模写」になるのを防いで、目で見た印象に近い「実感」のある風景画になったと思います。

ただスケッチが風景全体を捉える事を優先した為に、テーマの「鏡田」が取材不足で苦労されました。

このような経験を繰り返して、自分なりの制作スタイルを確立していって頂ければと思います。






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