日本では石膏デッサンが美大受験の課題として広まったせいか、石膏像と言うと胸像か首像ほとんどで、全身像を描く機会はあまりありません。
ラファエル・コラン作(60.6×46.2) パリ国立美術学校所蔵 *余談ですが右上に評価が「C」と記されてます。
当時のレベルの高さを感じます
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ところが、パリの美術学校に残されている19世紀の石膏デッサンの多くは全身像(おそらく等身大の像)を描いたものです。
作者不明(1880年代)610×410 (アトリエラポルト所蔵) |
人体が、デッサン教育の中心だった当時を考えると、生のモデルを描く前段階として、全身の石膏像を描くのは理にかなった過程だと思います。
アトリエラポルトでもこれに倣って、全身の石膏像を新たに購入して「人物デッサン講習会」の練習として使ってます。
デェオニソス像(高さ64㎝)・堀石膏製
原型はポンペイで発見されたローマ時代の作品
ファルコネ作ヴィーナス像(高さ85㎝)・堀石膏製
原型はロココ時代(18世紀)のフランスの彫刻家ファルコネの作品
サタイア像(高さ62㎝)・堀石膏製
原型は古代ギリシャのヘレニズム期の作品をローマ時代に模刻したもの
これらの像は、それぞれの作者と各時代の美の規範に従って、理想化された人体の形に作られています。現実のモデルさんとは異なる点も多々ありますが、その分個々の形が明瞭で解剖学的にも理解しやすく、ポーズ時間を気にすることなく美しい人体の形を学ぶことができます。
できれば、等身大の石膏像が欲しいところですが、日本では種類が少ない上に教室の狭いスペースでは設置できないのが残念です。
*参考文献:「石膏像図鑑」 脇本壮二著
「石膏デッサンの100年」 荒木慎也著
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