2013年10月9日水曜日

ペインティングナイフで描いてみる

風景画を中心に制作されているNさんが、今回初めてペインティングナイフを使って描いてみました。

クールベ
西洋で、ペインティングナイフを使って描いた代表的画家がクールベ(1819~1877)です。歴史的にみても、ペインティングナイフの使用はその頃始まったと考えられます。パレット上で混色して作った対象の色を、ペインティングナイフで直接キャンバスに塗りつけると、絵具の物質感に作家の感情が乗り移ったかのような強い表現が生まれます。クールベの気質に合った技法であっただけではなく、ロマン主義を通過した時代に必然的に生まれた技法とも言えるでしょう。


日本では、古くは川村清雄(1852~1934)、佐伯祐三(1898~1928)、最近では三栖右嗣(1927~2010)の作品に、巧みなペインティングナイフの使用が認められます。
川村清雄
三栖右嗣










      

                    

さて、Nさんの制作に入りますが、デッサンを取った後、まずはいつも通りに筆を使って大きな明暗を付けていきました。


絵具は、絵全体が青系統になるのを考えて、反対色の赤茶(レッドオーカー)を選びました。この色が、ペインティングナイフで絵具を置いた時に隙間から見え隠れして、微妙な暖色のニュアンスを与えます。






ペインティングナイフでの制作は、大量に絵具を消費します。思い切ってパレット上に絵具を出して、狙った色が出るまで混色を繰り返します。











空から、色を置いていきます。















ダイレクトペインティングと同じで、色を置いた所から仕上ていくつもりで描いていきます。














水面の光の反射の表現は、この作品の見せ所です。キラッと輝くような効果がでるように、色のコントラストやタッチの方向性を工夫しながら絵具を重ねていきます。












ペインティングナイフだけの制作は、硬い工芸的な絵になってしまうので、筆を使ってマチエールの変化をつけます。












「静浦」  F30号

ペインティングナイフで描くのは初めてだったので戸惑いながらの制作となりましたが、ペインティングナイフの特徴がよく出た絵になりました。 特に、水面の光のキラキラした反射がうまく表現されています。




ただ作品全体では、ペインティングナイフによる重厚な油絵具の物質感は出ていますが、それが対象の質感や距離感に、転化しきれてないところがあります。次回は、スケッチやエスキースなどで、色合いや混色の練習をしてから制作に入ると良いと思います。





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