公募展の出品作は、どちらかと言うと写実的で暗いトーンの静物画が多かったのですが、「シスレーのような自然で明るい風景画が描きたい!」 とアトリエラポルトで再び学ばれています。
言うまでもなくシスレーなど印象派の画家達は、自然を前にして制作することを信条としていましたが、教室ではスケッチや写真をもとにして、印象派の技法を考えながら実験的な制作をしています。
右の絵は最初に試みたもので、今まで使っていた絵具で自由に混色して描いてもらいました。その中で、寒色と暖色の組み合わせや影を色として捉えるようにアドバイスしました。
次の絵では、印象派の方法を取り入れ、絵具を虹色(スペクトル)に近いものから選び、各色に白を加えてトナリティを合わせてから描くようにしました。
そしてパレット上での混色はできるだけ避け、キャンバス上で色を塗り重ねたり、並置したりして、実風景に近い印象になることを目指しました。
結果は、なかなか中間色ができず、フォービズムの絵のようになってしまいましたが、寒色と暖色のコントラストが明快になり、明暗と色彩の関係が意識できるようになったと思います。
近作では、上記の虹色の絵具にイエローオーカー、レッドオーカーなどの彩度の低い系列の色を加えて、中間色を作りやすくしました。また、パレット上での混色も必要最小限度することにしました。
ヴェネチア (P10号) |
まだまだ印象派の手法には達していませんが、絵が明るくなり、鮮やかな色を効果的に扱えるようになったと思います。よりシスレーのような絵に近づけるには、点描で絵具を重ねて中間色を作る練習をすること、そして何よりも自然を前にして制作することが必要です。そこには、理論や思考だけでは解決できない問題の答えと、絵を描く喜びと感動があるはずです。
*参考文献
・Paul Signac: D'Eugene Dolacroix au Neo-Imprssionnisme.1898
・印象派(L'IMPRESSIONNISME):ジャン クレイ著 高階秀爾訳 中央公論美術出版 1987
・Richard Shone: Sisley (PHAIDON)1992
など
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