点描画法(Pointillism) の目的をシニャックは著書(D'Eugene Delacroix au neo-impressionnisme. 1899) の中で、「可能な限りの輝きを色によって与える」 とし、その手段として、
1、印象派と同じパレット(スペクトルと類似した絵具の使用)
2、光の混色(網膜上での加法混合)
3、分割したタッチ(点描)
4、体系的で科学的な技法
と書いています。
新印象派の創始者スーラは、当時の最先端の科学や美学を取りえれて印象派のさまざまな目的を統合しようと試みました。中でもルードの色彩理論(O.N.Rood,Modern Chromatics.1879) は、その技法を知る上で重要です。
右がルードの色環ですが、ここで注目したいのが中心に向かって白くなっている点です。これはルードの色彩理論が光の混色(加法混色)を前提にしているからです。現在日本で広く使われているマンセルの色彩理論が絵具の混色(減法混色)を基に考えられているのと大きく違うところです。マンセルでは、白を加えると彩度が下がる(鈍くなる)と考えますが、ルードでは光に近づく(輝度が上がる)と考えます。印象派の絵が白を大量に混ぜてハイトーンになっていったことが理解できます。
右はスーラのパレットですが、ルードの色環通りに絵具を並べているのが分かります。
グリザイユ |
さて、E.f.さんの制作ですが、グリザイユの明暗の諧調を保ちながら、現実の色合いに近いスペクトルの点で置き換えていきました。
色合いが単調にならないように反対色の点を並置しながら描いていくのがコツです。
佃島風景 (M4号) |
点描画法は絵具の準備から始めて、一つ一つ点を置いていく、とても根気のいる技法です。
試行錯誤しながらの制作でしたが、点描画法の特徴が良くでた作品になったと思います。
点描画法の画家達は、この手法がパレットで混ぜた絵具より、生気のある輝かしい光の効果を生むと信じていました。しかし実際に試みてみると、現実に近づけようと点を細かくすればするほど冴えない絵になっていき、逆に色彩的効果を出そうと点を大きくすると現実離れするという問題に突き当たります。新印象派の技法が長く続かなかったのはこの点にあると思います。しかし、19世紀末から始まるフォービズムなどの色彩の革新的表現を理解する上で、新印象派の理論と技法を学ぶのは大変有意義な事だと考えています。
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