2015年7月13日月曜日

サイトサイズで描いてみる


画家を目指して勉強中のK.hさんが、サイトサイズ法でグリザイユを描かれたので紹介します。

サイトサイズ法については、大分前のブログ(2011年7月9日)で説明しましたが、現在アメリカを中心とする「クラシカルペインティングアトリエ」の多くで行なわれているやり方です。


モチーフと画面を平行に並べて一定の距離を置いた地点から見比べながら描いていきます。
初心者でも形や明度の狂いが分かりやすく、見た状況の再現に適した手法です。













上下は水平移動、左右は図って、主要なポイントを取って、直線で結んでいきます。








余談ですが、サイトサイズ法は、立ってキャンバスと鑑賞地点との間を行ったり来たりしながら描くので、かなり体力を消耗します。また、広いスペースを必要としますので、狭いアトリエではやり難い方法です。


線で大まかな形を取った段階です。
西洋のクラシックなデッサンの定義では、線は直線と曲線の2種類から成り、簡潔な言い方をすると、「直線は定規で引いた線、曲線はコンパスで引いた線」となります。


通常の絵のデッサンでは、定規やコンパスを使う事はありませんが、線を引く時にそのような幾何学的な線の意識を持って対象を捉えることで、線分の長短や直線・曲線の組み合わせによって、明瞭で美しい形が生まれるのが実感できると思います。それは、キュビズムなどの抽象絵画にも繋がる重要な造形要素の1つです。

K.hさんは徹底してデッサンを勉強してきただけに、形やボリュームはうまく捉えられていますが、現実の石膏像の白さを出すのに苦労されました。












石膏像グリザイユ P10号



サイトサイズ法で、視覚的に自然な表現に仕上がってます。

例えば髪の毛を近づいて見ると、太めの筆でざっくりと描いていますが、離れてみるとリアルに感じられます。それは鑑賞距離から見て、適切な明度関係と描写の密度を持っているからです。細密描写をすればリアルになる訳ではないのです。

サイトサイズ法は、単に形が取りやすいだけではなく、「絵のリアリティーとは何か?」「自然な空間表現とは何か?」を考える上でも大変有意義な手段だと思います。










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