2020年8月14日金曜日

コレクション:19世紀の石膏デッサン

今回紹介するアトリエラポルトコレクションは、19世紀後半(おそらく1880年代)にフランスの画学生が描いた石膏デッサンです。

サタイヤ像(610×460)


すでに何度かこのブログに登場したこの石膏デッサンは、大分前に北フランスのアミアンの蚤の市で見つけたものです。いかにも画学生が使っていたような薄汚れたカルトンの中に、何枚かのデッサンや版画や絵手本と共に入っていたのを思い出します。

当時のフランスの美術学校でおこなわれていた典型的な(教科書どおりの)方法で描かれた石膏デッサンです。


使用している紙は、中間色のグレーで、現在日本でよく使われているMBM木炭紙よりきめが細かいものです。その上に木炭(あるいはコンテ)と白チョークを使って描かれています。




いっけん見えたとおりに描写をしているように感じますが、よく見ると反射光はほとんど描かずに、影側の輪郭からハイライトに向かって、段階的にグラデーション作りながら、各部分の形とボリュームを曖昧にすることなく表現しているのがわかります。

それはこの時代のアカデミックなデッサンの目的が、目に感じた光と影の現象(印象)を再現するのではなく、存在する石膏像の形とボリューム、そして置かれた空間における前後関係(奥行き)を正確に表すことにあったからです。

中間色の紙を使ったデッサンは、その目的に最も合った方法だと言えるでしょう。





日本では美大の受験を通じて、木炭による石膏デッサンが盛んにおこなわれてきましたが、なぜこのデッサンのような手法が入ってこなかったのか不思議でなりません。



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