前回に引き続きフランスの蚤の市で見つけた人物デッサンを紹介します。同じカルトンに入っていたので、同じ作者のものだと思います。
この人物デッサンについては、すでに2016年11月21日のブログで紹介していますし、技法も前回の石膏デッサンと同じなので、今回はこれらのデッサンで多用されている擦筆(estompe)についての考察です。
デッサンを近づいて見ると、非常に滑らかなモデリングによって人体の各部分の形が表現されているのが分かります。
それは木炭やコンテで描いた上から、擦筆で擦り込みながらグラデーションを作っているためです。
現在日本で販売されている擦筆は、紙で作られたものです。
ところが18世紀にディドロとダランベールによって編纂された百科全書では、擦筆はセーム皮(chamois)を巻いて作られていました。(Fig.3)
この時代はパステル画が盛んに制作されるようになったので、擦筆の需要も高まったと考えられます。
それと似たものがイヴェルの著書に載ってます。(一番右側のもの)
*Claude Yvel ”Peindre à I'eau comme les maitres" 2006
擦筆は、こするだけでなく、木炭の粉を先端につけて描くのにも使いました。未完成になっている脚の部分にその痕跡が見られます。
前回の石膏デッサンも含めて、当時の美術学校のレベルとしては、けっしてうまいデッサンとはいえません。それでも19世紀末のアカデミックなデッサンがどのような手段と目的で描かれていたかを知る貴重な資料です。アトリエラポルトでは、受講生のために常に展示して見て頂けるようにしています。
0 件のコメント:
コメントを投稿