2020年8月3日月曜日

白亜の地塗り

 今回は、油絵のための白亜と膠による水性の地塗りについて紹介します。



白亜と膠による水性の地塗りは、柔軟性に欠けるのでキャンバスに塗ることは薦められませんが、木のような硬い基底材には最良のものです。

 参考文献:「油彩画の技術」 ド・ラングレ著





白亜は取れた場所によって、ムードン白(blane de Meudom)とか、スペイン白(blane d'Espagne)とか、パリ白(blane de Paris)とか呼ばれます。

主成分は炭酸カルシウムで、海中微生物(孔中類)の遺骸からできています。人工的に作ったものより柔軟性があり、暖かみのある白色をしています。




 膠はさまざまな種類がありますが、油絵具の遮断層や地塗り塗料を作るのには、昔から動物の皮、特に兎からとったものが良いとされています。

使用に際しては、水に一昼夜つけてふやかしてから湯煎して溶かします。








今回はラングレの処方に従って、100㏄の水に10gの膠で溶液を作って、そこに40gの白亜を加えて地塗り塗料としました。










基底材は、マルオカの木製パネルに、筋入りハトロン紙を上記の膠溶液で貼ったものを使いました。









地塗り塗料は常に温かい状態(40℃~50℃)を保ちながら、豚毛の刷毛で素早く塗ります。



白亜は隠蔽力が弱いので、乾いてから塗るを2~3回繰り返します。

また、一度に厚く塗るとひび割れるので注意が必要です。




出来上がりです。右側に見えているのがアクリルジェッソを塗ったものです。白さの違いが分かると思います。筆者はこの位の明るい中間色調を好みますが、ジェッソのように白くしたい場合は、40gの白亜の内の10gをリトポンかジンクまたはチタニュームホワイトに置き換えるとよいでしょう。

白亜と膠による水性の地塗りは、適度な吸収性と絵具の固着力がある上に、滑らかな筆さばきと塗り重ねのしやすさで、油絵具にとっての最良のグラウンドです。



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