2023年7月3日月曜日

人体の描き方を模写から学ぶ(後編)

ドラクロワの模写の後編です。

 着彩に入ります。
絵具は当時の資料からドラクロワが使ったと考えられる絵具に近いものを選びました。

右から、シルバーホワイト、イエローオーカー、ブラウンオーカー、レッドオーカー、バーミリオン、マダーレーキ、スティル・ド・ガラン、バーントアンバー、カッセルアース、
アイボリーブラック


Mさんは人体の着彩に慣れていないので、描きやすそうな部分から始めました。
当時のオーソドックスな描き方では、まずは描く場所全体に肌色のベースカラー(レッドオーカー+イエローオーカー+シルバーホワイト)を塗ってから、ハイライトに向かってモデリングします。(バーミリオン+イエローオーカー+シルバーホワイト)
影側は下描きのグリザイユを利用し、薄く肌色を乗せることによってオプティカルグレーをつくりながら移行部の色合いの変化をつくります。


肌色を模写する時のポイントは、黄色味の肌色の場所と赤味の肌色の場所よく見て再現することです。例えば、顔に対して首は黄色味の肌色にしていますし、手や足や関節の部分は他よりも赤みがあります。



また、下層のグレーを生かしながら描いていくことも大切です。冷たい肌色の箇所はなるべく混色に頼らずに下層のグレーを透かして出すようにします。特に明部と暗部の境目の冷たいグレー味は、そうすることで溶け込むような滑らかな効果を得られます。



人物内部のモデリングは、美術解剖学の本と照らし合わせながらおこないましたが、その正確さにあらためてドラクロワの力量を感じました。



模写(810×650)
ドラクロワ作「ローズ嬢」


週1コマの授業で、半年以上かけて完成しました。
写真資料を表面的にコピーするのではなく、構成方法や解剖学を考えながら当時の描き方にできる限り近づけようとした努力が実った模写になりました。

プリントした画像が暗めに印刷されていたので、模写の背景もたぶん原画より暗くなってしまいましたが、この模写の目的である19世紀のアカデミックな人体の描き方は十分に学べたと思います。
実際のモデルさんを前にした時の制作に生かせるように願ってます。






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