今回は、グリザイユで石膏像の「ラボルト」を描きました。「ラポルト」の原型はパリのルーブル美術館に所蔵されています。ギリシャのアテネにあるパンテェオン神殿のフリーズ彫刻の一部で、かなり高い位置にあったものです。そこで石膏像も高い所に置いて、下から見上げるようにセッティングしました。
始めにキャンバスと同じ大きさ(F10号)の画用紙に鉛筆でデッサンをしました。
出来上がったデッサンをトレーシングペーパーを使ってキャンバスに転写しました。
転写したデッサンを溶き油に少量の絵具を加えて定着します。
いよいよ油彩になりますが、今回Kさんには、アトリエ ラポルトでも初めての試みとなるグリザイユの方法で描いてもらいました。
一般的に言ってグリザイユ画は、白と黒の油絵具を使って描くことが多いと思いますが、1900年頃にフランスで出版されたエルンスト・アローの本には、多色で描くグリザイユ画の方法が載っています。
Ernest HAREUX Cours complet de Peinture a l'huile |
左のアローの本より |
アローの考え方は、白いモチーフを描くことで結果的にグリザイユになるというものです。使う絵具は、3原色をベースにした多色です。この方法の良い点は、見た印象に近い色合いで描けるところです。また寒色暖色の違いによる光と影の表現やモデリングがやり易くなります。ただ慣れないと色彩的混乱を招きますので注意が必要です。
この絵でKさんが使った絵具は、
イエローオーカー、レッドオーカー、ウルトラマリンの3原色にランプブラック、バーントアンバー、ローシェンナ、シルバーホワイトです。
また、ガラスパレットの下に中間明度のグレーの紙を敷くことで、色合いと明度を測りやすくしました。
セッティングは、ニュートラルグレーの背景に、台には多色の効果が表われるようにダークブラウンの布をかけてみました。
Kさんは油絵を始めて間のないので、油絵具に慣れてもらうために、技法的な事には拘らず自由にパレット上で絵具を混色して、対象に近い色を作って描くようにアドバイスしました。
自然な空間とボリュームを表すために、背景に対して石膏像が暖かく感じられるように、また光の当たっている部分に対して影は冷たくなるように心がけてもらいました。
また、反射光などにテーブルクロスの色の反映を見て取るように注意しました。
「ラボルト」 F10号 |
油絵を始めたばかりのKさんですが、徹底して石膏デッサンをやってきただけに、完成度の高いグリザイユになりました。パートのある絵具でしっかりとマチエールを作った上に、デリケートな色合いや明暗の変化も良く表現されています。今回初めて試みたアローの方法の成果も出ていると思います。
アトリエ ラポルトでは、今後もデッサンから油絵を繋ぐ過程として、アローの方法も取り入れていきたいと考えています。
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