今回は、20日からギャラリー・エスパル・ラポルトで始まった「奥深い洋画材の世界」の展示作品から、20世紀フランスの絵画技法研究の流れを考察します。
展示されているこの絵の作者が画家・修復家・技法研究家・教育者のジャック・マロジェ(Jacques Maroger.1884-1962)です。マロジェはルーベンスを中心に15世紀から17世紀のオールドマスターの失われた技法の研究に生涯を捧げました。その成果は20世紀の絵画技法の発展に大きな足跡を残しました。
マロジェは1930年から第二次世界大戦の始まった1939年まで、ルーブル美術館のテクニカル・ディレクターという要職にありました。その間ラウル・デュフィの代表作となる壁画「電気の精」の制作を技法面でサポートしました。その透明感のある輝くようなマチエールはマロジェの考えたメデュームによるものです。
戦争の激化に伴いアメリカに移住したマロジェは、1948年に「The Secret Formulas and Techniques of the Masters」を出版し、失われた15世紀から17世紀の絵画技法を推論します。この本は同時代の画家とその後の絵画技法研究に大きな影響を与えました。
“The secret formulas and techniques of masters" フランス語版 |
そのマロジェが若かりし頃に技法研究のきっかけを作ったのがルイ・アンクタン(Louis Anquetin.1861-1932)です。アンクタンについては次回に続きます。
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