2012年1月21日土曜日

公募展をめざして 3

公募展の入選を目指して、制作を進めていたKさんの作品も、いよいよ完成です。


肌色は、シルバーホワイトに、イエローオーカーとバーミリオンをベースに作ります。ハイライトには、ネープルスイエローを加え、影はウルトラマリンとバリュームイエローとローズマダーの混色で表現します。
















肌色を美しく見せるために、反対色となるブルーグレーを全体を統一する色調にしました。その間をつなぐ色として家具の茶色を考えました。


















細部もおろそかにせずに描き込みます。表面的な描写に向かうより、明暗に寒暖のニュアンスを加えて、形態のボリュームや奥行きを追求していきます。










完成(M50号)


週1回5時間で、約半年かかって完成となりました。 縦長のキャンバスに座りポーズの人物という難しい構図でしたが、よく収めたと思います。質感の描き分けもでき、絵具の発色も美しい作品に仕上がりました。 ただ、写真から起こしていったので、対象の実在感に乏しいのが残念です。モデルさんを見ながらエスキースを作ったり、制作の途中で何度か来てもらうなどして、実際に見た時の色合いや光と影の変化が自然に表現できたら、もっと素晴らしい作品になったと思います。

2012年1月11日水曜日

石膏デッサンをもう一度:石膏デッサンの過程について

 学生時代に油絵を専攻していたYさんは、現在イラストや似顔絵の分野で活躍しています。


美校生の時に描いたデッサンに疑問を感じたYさんは、もう一度石膏デッサンに挑戦しています。











当アトリエの石膏デッサンは、デッサンの基本である「線で形を表すこと」から始め、そこに現実の陰影を利用してモデリングをおこない、形にボリュームと空間を与える方法をとっています。

そのため、線や形がぼやけやすい木炭紙や木炭の代わりに、画用紙と鉛筆を勧めています。










基礎のデッサンでは、「存在する形」は、すべて描くのが原則です。影の中の形も曖昧にせず描き込みます。
















背景を描かない場合は、背景の紙の白より、描かれた石膏を白く感じさせないといけません。そのためには、暗部が明部を囲むように意図的に配置したり、モデリングのコントラストを調整する必要が生じます。


Yさんの今回のデッサンは、難易度の高い石膏像だったにもかかわらず、それらの事をのり越えてとても美しいデッサンになったと思います。 










これからの目標を上げるとすれば、現象的な陰影をより一層整理して、線とモデリングのコントラストをデリケートに調整することで、形のボリュームや前後関係を追求するところにあるのではないかと思います。それは、イラストや似顔絵にも応用でき、よりすぐれた作品にするための高度な技術となることでしょう。