2018年7月28日土曜日

遠近法の作図とデッサン


今回は遠近法の作図を手掛かりにして、実際のモチーフを見て描いたデッサンを紹介します。





まずは、モチーフ台に碁盤状のマス目を引きます。(今回は1マス3㎝)


デッサン紙には、同じ尺度のマス目を遠近法の理論に従って作図します。




A.-E.MARTY “Perspective sans mathematiques"より


画面上の地平線の真ん中に中心消失点をとり、縦方向の線(画面に対して90°に交わる線)をそれに向かって引きます。

横方向の線(画面に対して平行な線)は、中心消失点から、画面の幅の1.5倍の位置に、画面に対して45°の線の消失点(鑑賞距離点)をとり、先ほどひいた中心消失点に向かう線との交点で求めます。




鑑賞距離点(絵を見る距離)は、現在では視野が横方向に37°、縦方向に28°と考えて、画面の幅の1.5倍、高さの2倍を取ることが一般的です。

左の写真はほぼその位置からモチーフを眺めたところです。




マス目を基準に、各モチーフの机と接する位置と高さを求めます。

見た目と勘を頼りにデッサンするよりも、遠近法に基づいてモチーフの位置関係や大きさを正確に表現できます。

このような方法は、西洋のアカデミックな絵画ではよくおこなわてきたもので、特に大画面での制作には必要不可欠な技術でした。



線で形が取れた後、チャコール鉛筆の白と黒を使って明暗を付けていきました。











ミタント紙にチャコールペンシルの白と黒 (410×320)

デジタル技術の発達した現代においては、写真をパソコンで加工してトレースすれば遠近法の知識は不要かもしれません。
しかしアトリエラポルトでは、対象を見て描くデッサンや絵画において、遠近法の知識は不可欠であり、大きな助けになると考えています。


2018年7月3日火曜日

サイトサイズによる作例

前回に引き続き、サイトサイズ法によるY.mさんのグリザイユ作品を紹介します。
アトリエラポルトでは、明暗を付けたデッサンの延長線上として、このような油絵具によるグリザイユをおこなっています。


メジチの目 F6号



Y.mさんの初めての油絵です。
デッサンに時間をかけて学んだ成果の出た作品になっていると思います。


使用絵具:シルバーホワイト
     アイボリーブラック










キューピット M10号






暖かい色調のアイボリーブラックに、冷たい色調のランプブラックを加えて、ニュアンスのコントロールができるようにして描きました。




使用絵具:シルバーホワイト
     アイボリーブラック
     ランプブランク










P8号




光は暖かく影は冷たく、近くは暖かく遠くは冷たく、などグレーの中に寒暖の変化をつけて、輝きと自然なボリュームや空間感がでるように試みた作品です。


使用絵具:シルバーホワイト
     イエローオーカ―
     アイボリーブラック
     ランプブラック 
     
     








メジチの鼻 F4号



より寒暖のニュアンスの幅を広げて描いた作品です。




使用絵具:シルバーホワイト
     ローアンバー
     ランプブラック









Y.mさんのグリザイユ作品を見て頂きましたが、サイトサイズ法による成果が良く表れていると思います。まだまだデッサンや明暗の扱いに不慣れな点はありますが、半年にも満たない期間に、仕事の合間を縫って制作されたとは思えない上達ぶりです。

グリザイユを日本では油絵の下書きとして捉えられることが多いようですが、西洋では建築の内装などで彫刻の代わりとして、そして絵を学ぶ過程の1つとしても扱われてきました。
ここで紹介したY.mさんの作品で見るように、デッサンと油絵を結びつける意味でもグリザイユは有効です。そしてそこに寒暖のニュアンスの効果を加えることで、多色絵画への繋がりをつけられるのではないかとアトリエラポルトでは考えています。