2023年11月28日火曜日

19世紀の肖像画の修復 2

 前回に引き続き19世紀の肖像画の修復過程です。

選択した溶剤で隅の方から慎重に黄変したニスを取っていきます。


暗い背景や影の部分はどこまでがニスの汚れで、どこまでがオリジナルの絵具の色かの判別が非常に難しいところです。ヘタをするとオリジナルの絵具を取りかねません。
古いニスを完全に取り除こうとせずに、全体のバランスを考えながら黄ばんだ感じがなくなる程度に留めました。



明るい部分も要注意です。科学的な検査機械を持っていない私たちは、グレーズ(Glaze)の色かニスの黄変かの正確な判断は不可能に近いです。とにかく取りすぎないように(綺麗にしすぎないように)進めていきました。



周囲から徐々に進めていって、いよいよ中心の顔に入ります。



顔の下半分まで進んだ状態です。桃色の肌が現れました。



溶剤による古いニスの除去が終わったところです。全体的に7割程度取った感じですが、黄ばみが薄くなり西洋人の肌の色が甦りました。




次回は補筆の過程をお伝えします。


2023年11月22日水曜日

19世紀の肖像画の修復 1

 今回はアトリエラポルトでおこなわれた絵の修復を数回に分けて紹介します。

絵は1850年頃に描かれたと推測できるもので、作者は不明ですが額の裏の書き込みやシールからイギリスで制作されたようです。





額を外して調べてみると、過去の修復によって裏打ちされている上に、切り取られていたことがわかりました。




画面は全体的にニスの経年変化で黄変し、背景にビチュームの使用によると考えられるひび割れがあります。



過去の修復による補筆の痕も見受けられます。



幸い裏打ちはしっかりしていて、現状における絵具層の浮きや剥離はありません。

そこで今回は次の修復作業をおこなうことにしました。
・黄変した古いニスを除去して、新しいニスを塗る。
・欠損箇所と目立つヒビを補筆により目立たなくする。

ニスの除去は、どのような溶剤でおこなうかの選択が最も重要で難しいところです。
4〜5種類の溶剤を弱い順に組み合わせて、ニスの反応をみます。
結果、この絵にはキシレンとジメチルホルムアミドの混合液を使うことにしました。


つづく。


2023年11月6日月曜日

アトリエ・ラポルト 作品展

 11月6日からアトリエ・ラポルトの受講生の作品展を開催しています。
場所は教室と同じビルの1階、ギャラリー・エスパス・ラポルトです。年齢(20代~90代)も、職業も、目的も違う方々が、同じカリュキュラムで学んだ成果を是非ご覧ください。






会期:2023年11月6日~12月1日(8:00~18:00)
会場:ギャラリー・エスパス・ラポルト
    東京都中央区日本橋小伝馬町17-9
    HP: espacelaporte.net
休廊日:土曜・日曜・祝日