2012年12月23日日曜日

公募展に挑戦 


Kさんは、昨年に引き続き、公募展の出品作品を教室で制作されました。
























2年越しの制作で、始めた頃のモデルさんの印象を持続させるのに苦労されました。

























白いドレスの襞は、上手く描けると大変魅力的な絵になります。腕の見せ所です。表面的な変化に惑わされずに、覆われている人体の形を感じさせるように、描かなければなりません。

















P100号 「もの想い」


毎週土曜日の午前と午後で描き続けて、約1年かかっての完成です。構成的で、形態がしっかりと感じられる絵になっています。残念なのは、モデルさんを見た時間が少なく、その分写真に頼らざるをえなかったので、自然な光の印象や色合いの変化に乏しい点です。人物画を描く時は、常にモデルさんを見て描くのが理想ですが、なかなか出来ない事と思います。その場合、デッサンやエスキースなどの資料を、できるだけ作っておきたいものです。現実は、写真だけでは捉えきれないからです。大作を描くKさんのこれからの課題だと思います。



2012年12月12日水曜日

中村清治 「趣味の油絵」 本の紹介 6

趣味の油絵 中村清治著 1993年 日本放送出版協会



昨年、惜しくも亡くなられた中村先生が、ご自身の絵に対する考え方を、豊富な作例と共に述べられている本です。

タイトルは、「趣味の油絵」となっていますが、専門的に絵を描かれている方にも、とても参考になる内容です。




















右のような制作過程をみると、色彩の美しさに目を奪われがちな中村先生の絵の基礎に、直線的な構造を重視した的確なデッサンと、明暗の抽象的とも言える配置への熟考があることが分かります。




























この本の基になったのが、平成4年にNHKで放送された「趣味百科,絵画への誘い」です。当時の放送の録画が見られれば、一層理解が深まると思います。























これは、昨年の月刊美術の12月号に掲載された、中村先生の最後のインタビュー記事です。
短い文章ですが、ご自身の絵に対する想いを語られています。今、若い世代の画家を中心に、写真とパソコンを利用した写実絵画がブームのようになっていますが、改めて「写実絵画とは何か?」を、あの温厚なお人柄の中に、強い意志を秘めて、われわれに問いかけていると思います。



2012年12月7日金曜日

色を使って 1





石膏像のグリザイユを描いてきたTさんが、色を使って描いた最初の作品を紹介します。
















サイトサイズ法で描いているTさんは、いつものようにモチーフと同じ位置に、キャンバスを垂直に設置して、デッサンをしました。
















ダイレクトペインティングの手法で、モチーフに近い色を直接置いていきます。

ダイレクトペインティングは、絵具が新鮮なうちに、仕上げていくのが基本です。そのため、仕事時間に合わせて、部分的に出来上がっていくことになります。




















ダイレクトペインティングは、上層と下層の乾燥ムラが少ないので、ツヤ引けや退色が起こりにくいメリットがあります。
反面、一度に、色と明度を合わせるのは、とても難しい作業です。長い期間に渡り、デッサンとグリザイユで、形と明暗法を学んできたTさんだから選べた方法と言えるでしょう。






















2012年11月30日金曜日

石膏デッサン 参考作品 3

アトリエ ラポルトの講師と受講生の石膏デッサンの紹介です。





アグリッパ像
 画用紙(650×500),木炭
 
























闘士像 
 画用紙(650×500),鉛筆
 























ローマ婦人反面像 
 四つ切画用紙,鉛筆























キューピット
 A3画用紙,鉛筆

2012年11月21日水曜日

模写をする 7


いよいよ彩色に入ります。
以前紹介(8月30日のブログ)したモロー・ヴォアチエの本によると、ダヴィッドが使用した絵具は、下記のようになります。

Blanc de plomb, jaune de Naples, Jaune de chrom,(晩年に使用) Ocre jaune, Laque de gaude, Terre d'Italie naturelle, Ocre de ru, Orange de Mars, Vermillon de Chine, Cinabre,
Brun rouge, Laque de garance, Sienne bruiee,
Terre de Cassel, Noir d'ivoire, Noir de peche,
Outremer, Bleu de Prusse, Bieu mineral,

現在手に入らない絵具もありますが、できるだ
け近い色合いと組成のもので代用します。







顔から始めます。肌の下色を、シルバーホワイトにレッドオーカーで、実際よりも暗めに置いていきます。















移行部分のグレーは、下層を透かして作ります。
























顔の下色が塗り終わりました。
ここから、最も明るい部分を中心に、描き起こしていきます。



















2012年11月17日土曜日

マンドリンのある静物 4

「マンドリンのある静物」 が完成しました。


P15号

形と空間がしっかりと表現された力作です。

暗い背景から明るいモチーフを浮かび上がらせる、古典絵画でよく使われる手法で描かれていますが、全体的に彩度を高くして、色の対比を効果的に用いています。それは、下の画像に見るように、部分にも反映されています。













これまでに見てきたEさんのやり方は、時間はかかりますが、デッサンから始まって、各段階をきっちりとおこなうことによって、確実に仕上がる方法です。絵が濁ったり、鈍く見えたりして、お悩みの方は、一度試してみてはいかがでしょうか。



2012年11月7日水曜日

表紙を飾る

F4号(制作途中)

アトリエ ラポルトの最初の受講生で、支援者でもいてくださるYさんの風景画が、ご自身も会員であるカントリー倶楽部の機関誌の表紙を飾りました。























写真にはない、温もりのある表紙です。 テーマの「ゴルフ場の秋」が、ここでプレーされている方の視点で、自然に捉えられているだけではなく、構図や明暗の配置も、とてもよく考えられている秀作だと思います。


2012年10月31日水曜日

模写をする 6




エボーシュの1段階目が終わったら、明部をシルバーホワイトで描き起こしていきます。

















この作業は、原画ではしていませんが、中間色や暗い地塗りをした場合、現在の絵具では、上層の色がなかなか発色してくれません。このように、白の層を置くことで、彩色層の発色がよくなります。 また、抵抗感のある、しっかりとしたマチエールの明部を作ることができます。




















明部から暗部への移行部分は、下層のグレーを利用したオプティッシュグレーで作ります。
























2012年10月24日水曜日

マンドリンのある静物 3


面積の大きい背景とテーブルクロスから、色を決めていきました。

















ヴェルダチオの基本色(今年の7月6日のブログを参照)に、対象に近い色の絵具(カドミウムレッド、コバルトブルー、レモンイエロー、ヴィリジャンなど)を加えて、描き進めていきました。

















全体に色が付いたら、細部の微妙な色相の変化を追っていきます。




2012年10月19日金曜日

模写をする 5

溶剤は、メリメやワッタンの技法書にでてくる乾性油と樹脂と揮発性油の中から選びましたが、作画の際の分量比については記されてないので、ラングレ「油彩画の技術」を参考に調合しました。



原画の制作過程と模写の制作過程の大きな違いは、原画は絵具層が生乾きの状態で塗り重ねていって、短時間でほとんど描いてしまっているのに対し、模写は原画を探りながら合わせいく上に、H君の受講時間が週1回の半日なので、制作が長期間にわたる点です。

そのため、溶剤の濃度の調整や、ルツーセの多用など、原画では行われていない、模写用の制作過程が必要となります。






テール・ド・カッセルと、少量のレッド・オーカーによる、エボーシュの1段階目が終わりました。

2012年10月17日水曜日

マンドリンのある静物 2


デッサンに,かなり時間がかかりましたが、構成を含めたデッサンが十分にできていないと、どんな技法を使っても、良い絵にはなりませんし、途中で飽きてしまうものです。納得のいくまで、デッサンすることが大切です。













転写したデッサンをもとに、テールドカッセルで影をつけた後、シルバーホワイトで明部を、描き起こしていきます。



















いわゆるインプリマチュア(デルナーの「絵画技術体系」参照)を、施した下地の上に、そのまま固有色を塗っても、なかなか綺麗に発色してくれません。 

















白い層を、明部の彩色層の下に置くことによって、発色させやすくなります。また、暗部とのコントラストも明瞭になります。
















2012年10月10日水曜日

マンドリンのある静物画 1

静物画に興味のある方は、誰しも楽器の形の美しさを、描いてみたいと思うのではないでしょうか?静物画が、絵の1つのジャンルとして確立した17世紀頃から、楽器はそのモチーフとして、しばしば登場します。

前回まで、花をテーマに描かれていたEさんは、今回はマンドリンをモチーフとして加えました。その制作過程を紹介します。





モチーフの配置と色の組み合わせを熟考します。

今までEさんは、彩度の低い色合いでまとめることが多かったので、今回はあえて彩度の高い色合いなるように、アドバイスをしました。














マンドリンは、一見シンプルな形に見えますが、よく見ると、直線と曲線が微妙な角度で交わっていて、意外に難しいものです。

 
キャンバスと同じサイズの画用紙に、構図と形が決まるまで、時間をかけてデッサンします。











デッサンができたら、トレーシングペーパーを使って、キャンバス上に転写します。(7月のブログを参照)


キャンバスには、予め褐色で全体に薄く色が引いてあります。










2012年10月3日水曜日

人体デッサン 参考作品 2


裸婦デッサン研究会(6月のブログ参照)で描いた、人体デッサンを紹介します。



キャンソン・ミタント紙(550×370)
 チャコール鉛筆, 白コンテ鉛筆
























キャンソン・ミタント紙(550×370)
 チャコール鉛筆, 白コンテ鉛筆




















四つ切画用紙
 コンテ鉛筆





キャンソン・ミタント紙(550×370)
 チャコール鉛筆, 白コンテ鉛筆






















2012年9月28日金曜日

旅の思い出として

旅の思い出を、絵にするのは楽しいものです。

出来た絵を部屋に掛けて、休日の昼下りに、コーヒーでも飲みながら眺めるのは、至福の時ではないでしょうか?
Mさんの風景画には、そんな想いが込められているように思います。(今年の4月6日のブログをご覧下さい)



今回は、鐘楼のある風景です。その制作過程を見ていきます。
















はぼ逆光の構図で、明暗がはっきりと分かれます。このような場合は、明部と暗部の形と、その組み合わせが、工夫のしどころです。

また、大きな面積を占める暗部を、いかに色彩的に美しく扱うかが、絵の見栄えを左右します。

そこで、始めに青系統(ウルトラマリン、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトヴァイオレット)で、エボウシュしました。









暗部の形が大体決まったら、明部の固有色を入れていきます。
















平塗りにならないように、寒暖のニュアンスをつけた、短いタッチを重ねていきます。

影の中にも、若干の暖かい色を置いてあげると、やわらかい空気を感じるような表現になります。




P12号


光の輝きが、画面全体に溢れる、良い風景画になったと思います。

ただ、描き込むに従って、明暗関係がだんだん曖昧になってしまったのが、ちょっと残念です。
これは、例えば、明暗法をベースにした外光派の手法を取るか、あるいは、明暗法に頼らずに、虹色(スペクトル)のトーンを使って、光の輝きや色の美しさを表現しようとした印象派の手法を取るかなど、表現方法が明確になれば、自然に解決してくると思います。

 ともあれ、部屋に掛けて眺めれば、コーヒーも一段と美味しくなるような一枚です。