2024年1月15日月曜日

グリザイユで明暗法を学ぶ

 アトリエラポルトでは、グリザイユをデッサンの延長線上としてカリキュラムに取り入れています。今回はその目的で描かれたグリザイユの制作過程を紹介します。
作者のTさんは、このようなグリザイユを描くのは初めての方です。


まずはキャンバスの大きさ(F4号)に区切った画用紙に鉛筆でデッサンして頂きました。


このデッサンでは、遠近法に従った正確な形を描く事を目的にしている為、背景もモチーフ固有の明度も表現していません。石膏像のような白いモチーフと同じように描いています。
これに対してグリザイユでは、モチーフ固有の明度と背景を含めたすべての明暗関係の再現が目的です。

デッサンをキャンバスに転写した後、ベースとなる明度のグレーで全体を塗ります。


それより明るい部分は拭き取って白くし、暗い部分は黒を足して明度を落とし、大きく3段階で明暗関係を捉えます。


大きな明暗の配置が決まったら、いよいよ描き込んでいきます。


その際、暖かいグレー(アイボリーブラックとシルバーホワイト)と冷たいグレー(ブルーブラックとシルバーホワイト)を光と影や前後関係に従って使い分けることで、より輝きのある自然な空間の表現を目指します。


常に対象と見比べて描き進め、時には離れて見ることが大切です。



完成。

グリザイユ(F4号) キャンバスに油彩


明度(Valeur)が適切に再現されたグリザイユになったと思います。形も細部までよく描き込まれてクリアに表現されています。このように油絵具はデリケートな明暗や滑らかなモデリングを再現するのに適した画材です。アトリエラポルトでは、「デッサンは形」「明暗の再現はグリザイユ」と分ける事で、デッサンから油絵へ繋がりをもって学んで頂けるように考えています。


2024年1月9日火曜日

ついに入手! ウードン作「エコルシェ」

アトリエラポルトは受講生の方々に支えられて今年で13年目に入ります。今回はより良い学びの場となるように、最近ようやく購入できた石膏像を紹介します。

美術解剖学を学ぶ上で欠かせないのが「エコルシェ」(écorché .剥皮像)と呼ばれる像です。中でも最も有名ものが、新古典主義の彫刻家ウードン(Houston,1741-1828)が原型を作ったこの像です。



昔のヨーロッパの美術学校ならどこにでもあった像ですが、日本で販売されたことはなく入手は長年の夢でした。それが受講生Kさんの情報と助けを借りて、この度アトリエラポルトで購入することができました。


原型は等身大ですが、それを約75cmに縮小したものです。製作はアメリカのカプロニ コレクション(CAPRONI COLLECTION)で、石膏像作りの伝統と精度の高さではアメリカ随一と言われています。


日本で販売されているクードロン作のエコルシェよりポーズが自然で描きやすく、筋肉もわかりやすくできています。受講生のデッサンの目標にして頂ければと思います。