1968年に翻訳されたグザビエ・ド・ラングレ著「油彩画の技術」は、当時日本では「画家の聖書」と言われるほど画家を志す人に読まれた本です。それ以前には日本にこれほど詳しく油絵の技法について書かれた本はありませんでした。
ラングレはアヴェルと親交をもち、1973年の「油彩画の技術」の増補改訂版から加えられた「アクリル画とビニル画」の章は、アヴェルの協力によって書かれました。
以上紹介した4人の20世紀フランスを代表する絵画技法研究者の共通する考えは、油絵における樹脂の使用の有用性とエマルジョンの可能性です。今、日本では樹脂の使用に懐疑的な意見も多く聞かれますが、もう一度彼らの残してくれた作品と著作を調べてみる必要があると思います。
また、今回展示している伊牟田経正氏の絵は、ラングレの処方を基に約40年前に描かれた作品です。その均一な美しいツヤとくすみのない透明感と発色は、日本における樹脂の使用の有用性を証明しています。
加えて日本人で唯一ラングレに直接教えを受け、その研究を受け継いだ飯田達夫氏の作品も展示しています。飯田氏の研究成果は、1987年から5年間に渡り月刊アトリエに連載された「油彩画の技術」に見ることができます。
展示では、マロジェが参考にしたと考えられる過去の文献やマロジェの著書と絵、その影響を基に書かれた本もあります。
それに明治以降日本で出版された主な西洋画の技法書も並べて、フランスと日本の19世紀末から20世紀の油彩画の技法の変遷が検証できるようにしています。
興味ある方は是非お立ち寄りください。