2018年11月24日土曜日

人物デッサン 参考作品3




ラポルト講師による人物デッサンの3回目は、黒人モデルさんによるものです。

加えてデッサンを基にした油絵作品も紹介します。







女性ヌードデッサン 540×380
中間色の紙に木炭、チャコール鉛筆の白と黒
(20分ポーズ×12回)



キャンバス(クレサン66番)に油絵具
(20分ポーズ×18回)

制作:藤木俊明


2018年11月17日土曜日

人物デッサン 参考作品2

前回に引き続きラポルト講師による人体デッサンを紹介します。

縁から陰影をつけていく過程の参考になれば幸いです。




女性ヌードデッサン 540×380
(20分ポーズ×10回)



前回と同じく中間色の紙(キャンソン社製ミタント紙)に白(チョーク、チャコール鉛筆の白)と黒(木炭、チャコール鉛筆の黒)を使用してます。 

陰影を付けているのに輪郭線がはっきり残っていて、違和感を感じる方もいるかも知れませんが、背景を描かない場合は、必然的に線がないと形が表せません。西洋のクラシカルなデッサン(印象派以前)では、当たり前におこなわれてきた方法です。それは、デッサンの本質的な目的が「存在する形」を表すことで、現象的な陰影を写すことではないからです。


制作:藤木俊明






2018年11月11日日曜日

人物デッサン 参考作品1

今回から、アトリエラポルトの講師が描いた人物デッサンを制作過程を何回かに分けて紹介します。

どのデッサンもグレーの中間色(キャンソン社製ミタント紙)に、白(チョーク・チャコール鉛筆の白)と黒(木炭・チャコール鉛筆の黒)で描いたものです。

プリュードン

中間色の紙に黒と白で描く手法は、すでにルネサンス時代からおこなわれていて、明暗法の発達とともにペンや水彩や木炭などさまざまな画材で試みられてきました。人体デッサンにおけるその極みは、プリュードン(Pierre-Paul Prud'hon 1758~1823)のデッサンに見ることができます。











まずは、硬めの木炭(ミズキ)を使って線で形を取ります。この時に、プロポーションと人体の形をできる限り正確に表すように努めます。

その後、現実の陰影を利用して形をモデリングします。





モデルを見ながらの制作では、時間的制約もあるので、興味を惹かれるところから描いていきます。


全体に影をつけた段階ですが、明部との堺を解剖学的に正確な形を表す位置になるように決めています。

















男性裸体デッサン 540×380
(20分ポーズ×12回)


クラシカルなデッサンでは、現象的な陰影の再現よりも、正確で美しい形が明確なボリュームを持って再現することが優先されます。

形体の変わり目の位置やアクセント、ハイライトの位置など、参考にして頂ければと思います。

制作:藤木俊明



2018年10月23日火曜日

日曜日 開講

皆様のご要望にお応えして、10月28日から日曜午後の部を開講いたします。
日曜日の昼下がりのひと時を、アトリエラポルトで本格的に絵を学んでみませんか?






2018年11月からの開講日は下記のようになります。

午前の部:10:00~12:30  金・土
 
午後の部:13:30~16:00  水・木・金・土・日

夜の部: 19:00~21:30  金

*祝日はお休み

受講料:チケット制で10回券 32,400円
登録料:5,400円(初回のみ)
*詳しくはホームページをご覧ください。




2018年10月12日金曜日

額の簡易な補修


公募展などに毎年出品されている方は、取り付けた額が傷んで戻ってきた経験があると思います。

今回は、右の写真のように、額の一部が欠けた時の簡易な補修方法を紹介します。










まずは、欠損部分をパテで再生する必要がありますが、そこでお勧めなのが木工用のエポキシパテです。

接着力が強い上に、速乾性(約30分で硬化)で乾燥によるパテの体積の変化も起こりません。乾燥後は、彫刻刀や紙やすりで削れます。




二層からなる円筒形のパテを、使う分だけカッターで切り取ります。

それを指でよく練って混ぜ合わせると硬化が始まります。
(注:エポキシパテは、皮膚につくとかぶれる場合があるので、保護手袋すること)





10分以内に欠損箇所にパテを押し付けます。
その後30分ほどで固くなりますが、その間にへらや彫刻刀を使ってオリジナルのレリーフに近くなるように成形します。











固まってからは、紙やすりなどを使って仕上げます。














今回は黒縁なので、色合わせにはアクリルガッシュを使いました。

アクリルガッシュは、乾くとマットになりますが、艶のない状態からニスやワックスなどを使ってオリジナルの光沢に合わせます。






黒の額ですが、下地にベンガラ色(ここではバーントシェンナを使用)を塗っておくと深みのある黒になります。












乾いてから黒(アイボリーブラック)を塗ります。













オリジナルがそれほど強い光沢がないので、今回はウールで磨いて艶を合わせました。









完成。

オリジナルと比べると荒い作りですが、簡易な補修としてはこの程度で十分です。
100号の額なので、ほとんど気にならないと思います。














2018年9月22日土曜日

石膏デッサンから一歩ずつ

今回は、アトリエラポルトでデッサンを学ばれて10か月が過ぎたM.tさんの作品を紹介します。

M.tさんは、それまで絵を学ばれた経験はなく、仕事が休みの日に毎週来られて、焦らず急がずコツコツとデッサンを続けられています。

次の7枚のデッサンは、いずれも画用紙に鉛筆で描いたもので、制作順に並べてあります。






幾何形体 420×350

果物と野菜 420×350

ダビデの口 330×240

うつむき坊や 410×320

へべ半面 410×320

青年ブルータス 530×460

メジチ胸像 530×460



木炭の腹を使って黒々と迫力満点に描かれた石膏デッサンとは対極的なデッサンですが、デッサン本来の目的である「存在する形を描く」という見方からは、どの作品も愚直なほど丁寧に描かれています。

このような「現象的な形の印象」ではなく、形を遠近法に従って正確に再現することを目的とした石膏デッサンは、19世紀にフランスで使われていた絵手本の中に見ることができます。

M.tさんのデッサンには、まだ構造的な見方や的確なボリュームの表現が足りませんが、西洋のクラシカルな方法に近いデッサンになっていると思います。



参考画像

A.Cassagne (1874年頃)
"Le dessin pour tour”より



B.-R.Julien (1860年)

2018年9月7日金曜日

三原色から始める

 今回は始めて色を使った油絵にチャレンジした、Y.mさんの制作過程を紹介します。

アトリエラポルトでは、色を使った油絵の練習過程として、最初に三原色だけで描く方法を勧めています。







使用絵具:
イエローオーカ―
レッドオーカ―
コバルトブルー(またはウルトラマリン)
シルバーホワイト
バーントアンバー(理論上は黒ですが、ニュアンスの乏しい鈍い絵になりやすいので、バーントアンバーを使っています。)

鮮やかな色の再現はできませんが、その分、リアルな表現のベースとなる形と明暗(valeur)が捉えやすく、色彩の破たんが起こり難くなります。
また、絵具の混色原理を体感することができるでしょう。






木炭でデッサンをした後、バーントアンバーで定着して彩色に入りました。

最も面積の広い背景を決めてから、モチーフを一つずつ仕上げていきました。





実際のモチーフと比べると、洋梨の緑色と桃の赤色の鮮やかさが使用している絵具では出せませんが、そこを隣り合う色との対比や、明部から暗部へのパッサージュや反射光に、色相の変化を加えることで「感じさせる」工夫をすることが大切です。


最後に一番右側のクルミを描いて完成です。

このように一つ一つモチーフを仕上げていく描き方は、生乾きの状態での制作を可能にし、滑らかなモデリングと発色の良い効果が得られます。反面、モチーフ相互の関係や、全体の統一感を失う恐れもあるので注意が必要です。












初めての色を使った油絵とは思えない出来栄えです。グリザイユをじっくりと勉強してきたことによって、色に惑わされることなく明暗が的確に捉えられています。
色の再現も三原色だけの制約の中では、かなり引き出していると言えるでしょう。
ただ、良く見るとデッサンやきわの処理の甘さが気になりだします。今後の課題です。