2015年6月20日土曜日

バルバローニ作(旧ドナテルロ)の少女像を描く


今年の1月からアトリエラポルトでデッサンを学ばれているS.eさんの作品を紹介します。本職がイラストレーターだけあって,大変緻密なデッサンを描かれています。同じ方法論で描いて頂いても、出来上がった作品に個性が表れる良い例だと思います。


















今回のモチーフの少女の石膏像は、長い間ドナテルロの作品と言われてきましたが、このブログを書くにあたって調べてみたら、「石膏像ドットコム」というサイトに、バルバリーニというロココ時代の彫刻家の作品と判明したという記述がありました。興味のある方はそちらも是非ご覧ください。
http://ameblo.jp/sekkouya/entry-11355655821.html







手順はいつも通りで、まず線で出来る限り対象の形を捉えていきます。Sさんは、驚くほど細く鋭い線でほとんど線を重ねることなく描いていかれました。



















次に明部と暗部に分け、暗部全体をハッチングで暗く落としました。その後暗部から個々の形をモデリングすることによって明部の石膏の白さを表すように進めていきました。





バルバローニ作 少女像 画用紙に鉛筆(530×455)


画像では分かりにくいのですが、影の中の細部の形まで曖昧にすることなく描き込んだ力作です。反射光を明るくしすぎてボリューム感が少し足りないのが残念ですが、基礎のデッサンとしては十分目的に達していると思います。木炭を黒々と付けて迫力や感情を表す石膏デッサンとは対極にありますが、下記のアカデミックなデッサンの例に近づいた表現になっています。















次のデッサンは19世紀の画家が描いたもので、左側はブグロー(W.Bouguereau 1825~1905)のデッサン(鉛筆)、右側がジュリアン(B.R.Julien 1802~1871)のデッサン(リトグラフ)です。現象的な陰影を追わずに実存する形を克明に表す西洋のデッサンの基本的な手法で描かれています。

2015年6月10日水曜日

基礎デッサン 2


前回(3月3日のブログ)の基礎デッサン1で作品を紹介したM.wさんと同じように、家事と仕事の合間を縫ってアトリエラポルトに通われているK.nさんの作品を紹介します。


















画用紙に鉛筆 (F10)


画用紙に鉛筆 (F10)



















画用紙に鉛筆 (F10)

























グレーのキャンソン紙に木炭+コンテ鉛筆の白と黒 (340×420)

それぞれの課題を地道にコツコツと丁寧に描かれている姿が想像できるような作品だと思います。
モチーフのボリュームや前後関係、質感もうまく表現されています。特に光から影への移行部の変化を敏感に捉えられていて、とても美しいデッサンになっています。油絵の制作に繋げていって頂ければと思います。


2015年6月4日木曜日

カマイユ

デッサンからグリザイユへと順を追って学ばれてきたK.rさんが、今回は静物をカマイユで描いてみました。その制作過程を紹介します。


カマイユ(Camaieu)は、明暗だけで表現した単色画の総称で、イタリア語でバーレリーフを意味していた「カメオ」から派生した用語です。その意味からするとグリザイユもカマイユに含まれますが、一般的には茶色や褐色系統の色合いで描かれたものを指すことが多いと思います。






まずは、キャンバスと同じサイズの画用紙に入念にデッサンして、それをキャンバスに転写しました。
基本的な描き方はグリザイユと同じですが、茶系の絵具は、白を加えると冷たくなったり、溶き油で透明に扱うと暖かくなったりと、色味の振幅が激しいものです。そこを調整しながら描いていくのが難しいところです。

今回は、ヴァンダイク・ブラウン(ニュートン社製)とシルバーホワイトに、色合いの調整としてアイボリーブラックを加えました。


モチーフの色に惑わされずに明暗に置き換えて描いていくのに苦労されたようですが、リアルな絵画表現を目指すには欠くことのできない訓練です。













カマイユによる静物画 (F6号)



油絵に移ってから2枚目の作品ですが、非常に良い出来栄えです。絵具の厚みがもう少し欲しいところですが、明暗の変化や寒暖の調整がデリケートで美しく、すでにK.rさんの持ち味が表れているように思います。次回の制作を楽しみにしています。