今年の1月からアトリエラポルトでデッサンを学ばれているS.eさんの作品を紹介します。本職がイラストレーターだけあって,大変緻密なデッサンを描かれています。同じ方法論で描いて頂いても、出来上がった作品に個性が表れる良い例だと思います。
今回のモチーフの少女の石膏像は、長い間ドナテルロの作品と言われてきましたが、このブログを書くにあたって調べてみたら、「石膏像ドットコム」というサイトに、バルバリーニというロココ時代の彫刻家の作品と判明したという記述がありました。興味のある方はそちらも是非ご覧ください。
http://ameblo.jp/sekkouya/entry-11355655821.html
手順はいつも通りで、まず線で出来る限り対象の形を捉えていきます。Sさんは、驚くほど細く鋭い線でほとんど線を重ねることなく描いていかれました。
次に明部と暗部に分け、暗部全体をハッチングで暗く落としました。その後暗部から個々の形をモデリングすることによって明部の石膏の白さを表すように進めていきました。
バルバローニ作 少女像 画用紙に鉛筆(530×455) |
画像では分かりにくいのですが、影の中の細部の形まで曖昧にすることなく描き込んだ力作です。反射光を明るくしすぎてボリューム感が少し足りないのが残念ですが、基礎のデッサンとしては十分目的に達していると思います。木炭を黒々と付けて迫力や感情を表す石膏デッサンとは対極にありますが、下記のアカデミックなデッサンの例に近づいた表現になっています。
次のデッサンは19世紀の画家が描いたもので、左側はブグロー(W.Bouguereau 1825~1905)のデッサン(鉛筆)、右側がジュリアン(B.R.Julien 1802~1871)のデッサン(リトグラフ)です。現象的な陰影を追わずに実存する形を克明に表す西洋のデッサンの基本的な手法で描かれています。