この色見本はおそらく20世紀の初頭に作られたもので、メーカーはフランスのブルジョワ・エネ社(Bourgeois Aine)です。
この絵具メーカー1867年創業のパリの老舗で、1965年にルフラン社と合併して現在のLEFRANC&BOURGEOIS社になります。
全59色で現在のルフラン社の色数(120色)と比べると約半分の量です。
しかし、1色ずつ見ていくと、失われてしまった絵具がいくつも発見できてとても興味深いです。
例えば、古い文献にはしばしば登場するオークル・リュ(Ocre Ru)やオークル・ドオー(Ocre d'Or)は、黄土(Ocre)の色違いで、採掘する場所で微妙に異なる色調の違いを昔の画家は使い分けていたのが分かります。
他にも、ビチューム(Bitumr)、ミネラルブルー(Blue Mineral)、カプチン(Capucine)など、今では使ってはいけないとされている絵具や成分の分からない顔料があったりしておもしろいです。
この色見本はそれらを実物で見ることができる大変貴重な資料です。
現在では合成顔料が飛躍的に進歩して、色数も豊富になり耐久性も良くなりました。
あえて古い顔料を探して使うことはないと思いますが、昔の画家達が限られた絵具から最大限の輝きと堅牢性を得ようとした技術と試みとその成果は、生かし続けていきたいものです。