2021年4月23日金曜日

昔の油絵具の色見本

今回は春蔵絵具さんからお借りしている昔の油絵具の色見本を紹介します。


この色見本はおそらく20世紀の初頭に作られたもので、メーカーはフランスのブルジョワ・エネ社(Bourgeois Aine)です。
この絵具メーカー1867年創業のパリの老舗で、1965年にルフラン社と合併して現在のLEFRANC&BOURGEOIS社になります。

全59色で現在のルフラン社の色数(120色)と比べると約半分の量です。
しかし、1色ずつ見ていくと、失われてしまった絵具がいくつも発見できてとても興味深いです。



例えば、古い文献にはしばしば登場するオークル・リュ(Ocre Ru)やオークル・ドオー(Ocre d'Or)は、黄土(Ocre)の色違いで、採掘する場所で微妙に異なる色調の違いを昔の画家は使い分けていたのが分かります。



また黄色の絵具に、ストロンチューム・イエロー(Jaune Strontiane)、アンチモン・イエロー(Jaune Antimoine)、ネープルスイエロー(Jaune Naples)があり、おそらくネープルスイエローは天然産で、現在はどれも製造されていない絵具です。

他にも、ビチューム(Bitumr)、ミネラルブルー(Blue Mineral)、カプチン(Capucine)など、今では使ってはいけないとされている絵具や成分の分からない顔料があったりしておもしろいです。

この色見本はそれらを実物で見ることができる大変貴重な資料です。

現在では合成顔料が飛躍的に進歩して、色数も豊富になり耐久性も良くなりました。
あえて古い顔料を探して使うことはないと思いますが、昔の画家達が限られた絵具から最大限の輝きと堅牢性を得ようとした技術と試みとその成果は、生かし続けていきたいものです。


2021年4月12日月曜日

男性モデルの描き方:第3回(最終回)

 男性モデルの描き方の第3回(最終回)をYouTubeにアップしました。

今回はデッサンから油彩の過程を紹介します。コロナ禍の為に油彩は中断せざるを得ませんでしたが、デッサンから油彩への繋げ方の参考になれば幸いです。

*スマホで動画画面が出ない場合は、ウエーブバージョンにするとご覧いただけます。




2021年4月3日土曜日

静物をグリザイユで描く

 今回はアトリエラポルトでおこなっているグリザイユを紹介します。


制作者のCさんはご職業がイラストレーターで数年前から断続的にデッサンを学びに来て頂いてます。

グリザイユを描くのは初めての体験です。





グリザイユ(Grisaille)とは、「灰色」を意味するフランス語の「gris」に由来し、主に灰色(グレー)で描くモノクロームの絵を指します。

歴史的には大きく分けて2種類の使われ方がありました。
1つは、大理石や石の彫刻の代用として建築装飾や絵画に用いるグリザイユ、
もう1つは、油絵の下書きとして用いるグリザイユです。

アトリエラポルトではそのような経緯を踏まえながら、現実の明暗を再現したデッサンの延長線上としてグリザイユをカリキュラムに取り入れてます。

まず最初に中間色の紙に白と黒のチャコール鉛筆でデッサンをして頂きました。
ここでは構図や個々のモチーフの形とボリュームを表現する事が目的なので、現実空間の再現はしていません。





出来上がったデッサンをトレーシングペーパーを使ってキャンバスに転写しました。


油彩では、まず背景を含めた空間全体の明暗関係を3~4段階で描き分けます。

使用絵具は、シルバーホワイとアイボリーブラックだけです。



背景とモチーフとの明暗関係、鑑賞距離からのコントラストの変化などを見比べながら、徐々にハーフトーンを加えて描きこんでいきます。
油絵具は大きな面積を塗り分けたり、デリケートな明暗の変化を再現しやすい画材です。

Cさんは油絵具を使うのも初めてでしたが、初心者の方が油絵具に慣れて頂くためにもグリザイユは有効な手段です。


静物のグリザイユ M6号




初めてのグリザイユで描いた静物画でしたが、質の高い仕上がりになりました。

このようにアトリエラポルトでは、デッサンは形、現実の明暗(Valeur)の再現はグリザイユで学んで頂いてます。