2013年8月28日水曜日

ゆりを描く 2

彩色に入ります。


グリザイユの下書きが乾いたら、ルツーセ代わりに、テレピンで2倍位に薄めた画溶液に、ほんの少しモチーフの色を加えて、全体に塗ります。

こうすることで、作品の色合いの感じが掴みやすくなります。











背景から、色を置いていき、主人公となるゆりは、最後にします。













個々のモチーフの色を置く時のコツは、中間明度の固有色を全体に塗ってから、ハイライトに向かって描き起こしていきます。影への移行部は、下層のグリザイユを生かし、影は、ウルトラマリン、ビリジャン、マダーレーキ、スティルドガラン、などの透明色の混色で作ります。自然に、明部は不透明で厚みがあり、暗部は透明感のある深い表現になります。(詳しくは、2012年11月21日のブログ「模写をする⑦」をご覧下さい)















仕上げに近づくに従って、周囲の色の反映や寒暖のニュアンスを加えていきました。













F10号 「ゆり」
絵具のしっかり付いた重厚なマチエールと、デリケートな色彩の変化、そして空間と構成のしっかりした、素晴らしい作品になったと思います。



2013年8月21日水曜日

ゆりを描く 1

花の中でも、ゆりはバラとともに、油絵のモチーフによく登場する花です。
円錐形のシンプルな形に、6枚の大きな花弁は、明暗とボリュームで表現する油絵には、ぴったりの花と言えるでしょう。


今回Yさんは、ゆりと楽器の組み合わせをテーマに、モチーフを組み立てられました。

ゆりを花瓶に活けるのではなく、楽器のケースに寝かしたところに、Yさんのセンスの良さを感じました。









技術的には、明暗法を基本にしたクラシカルな方法を選択されました。

中間色のグレーを地塗りしたキャンバスに、カッセルアースでデッサンと影を取った後、シルバーホワイトで明部を描き起こしていきました。










細部にこだわらずに、大きなボリュームと明暗を追っていきます。

明部の絵具の盛り上げは、最終的なマチエールに大きな影響を及ぼすので、表現効果を考えながらおこないます。











下書きとしてのグリザイユが出来上がりました。ゆりの束、ヴァイオリン、ケースのどれもが、難しい形のモチーフですが、右上がりの対角線をベースに、とてもうまくまとめられたと思います。この後、彩色に入りました。


2013年8月15日木曜日

石膏デッサンの描き方に疑問があって 【フレンチ胸像】




石膏デッサンの描き方に疑問を持って、私たちのアトリエに入られたKさんの、2作目の石膏像を紹介します。


今回は胸像の「フレンチ」です。前回の「キューピッ」に比べると、動きの少ないシンプルな像ですが、顔や髪の毛のモデリングなど意外に難しい像です。









F10号サイズの画用紙に、鉛筆で描きました。














「フレンチ胸像」 530×460 画用紙に鉛筆




午前午後の通しで制作され(5時間)、約3回で仕上げられました。



















大きな形のボリュームを保ちながら、細部まで良く描き込んだデッサンになりました。


ただ、制作過程を見ていると、まだ現実の陰影を追い過ぎて、明部のモデリングが濃くなり過ぎる傾向があります。背景の白さに比べて、石膏像の明部が明るく感じられるようにするには、形を表すのに不要な陰影を思い切って取り除き、より解剖学的に正確なモデリングで、形のボリュームを表す練習が必要です。











2013年8月9日金曜日

アトリエの道具と画材 3 「スパイラル型蛍光灯」

今回紹介するのは、アトリエ ラポルトで使っている照明です。

本来アトリエの照明は、自然光が理想ですが、限られた時間とスペースの中では、どうしても人工光線に頼るしかありません。また、自然光は、気象条件や時間帯で変化するので、じっくりと対象を見て制作するには不向きな場合もあります。

自然光のスペース
人工光線のスペース
アトリエ ラポルトでは、開設当初から照明にさまざまな方法を試みた結果、今回紹介するスパイラル型蛍光灯にたどり着きました。






ジェフコム社製のスパイラル型蛍光灯(昼光色)は、85Wで電球300W相当の明るさになり、しかも省電力です。



















これを、スポットライト用のソケットにつけて使っています。















モチーフの状況に合わせて、簡単に移動できる上に、一方方向からの光で、モチーフと画面を同時に照らすことができます。

















また、影の輪郭が柔らかく表れるのも特徴です。

ハロゲン スポットライト
スパイラル型蛍光灯























物を見て描く制作では、照明はとても大切な要素です。現在教室では、このスパイラル型蛍光灯をベースに照明をしていますが、「色が冷たくなる」 「光が拡散し過ぎる」などの問題もあります。他の照明と組み合わせたり、カバーを取り付けたりして、より良い制作環境になるように試行錯誤を繰り返しています。