色の調和については、画家に限らず色を扱う仕事に携わる人なら関心がある事と思います。現在も多くの本が出版されていますが、この本ほど過去から現代までの色彩調和論の変遷を詳しくまとめたものはないと思います。
目次は次のようになっています。
Ⅰ章 配色のすべては誰にもわからない
Ⅱ章 「蓼くう虫も好きずき」
Ⅲ章 経験的評価のはじまり
Ⅳ章 音楽からの類推による色彩調和論
Ⅴ章 視覚的均衡の原理
Ⅵ章 現代における古典の再生
Ⅶ章 自然に学ぶ色調のグラデーション
Ⅷ章 配色により同時対比の法則
Ⅸ章 教養人の趣味と経験による選択基準
Ⅹ章 色彩調和法の日常生活への浸透
ⅩⅠ章 秩序の原理と色彩体系
ⅩⅡ章 調和は秩序に等しい
ⅩⅢ章 美術のための色彩体系と調和論
ⅩⅣ章 各人各様の色彩調和論
ⅩⅤ章 小さな論文の大きな反響
ⅩⅥ章 色彩調和の人民投票
その中からいくつかを取り上げてみます。
これは、現代色彩学の基を築いたニュートンの「光学」からの図です。
ニュートンはスペクトルを音階と同じ7つの色に分けることによって、音のハーモニーとの関連を探り、色彩調和論の最初の仮説を作りました。
アンリ・プファイファーの回転混色板を使った調和論の一例。
スーラなどの点描派の画家に大きな影響を与えたルードのコントラスト・ダイアグラム。
オストワルトの等色色相三角形とそれに基づく調和論。
戦後の日本の色彩理論のベースとなったマンセルの色立体。
イッテンの色彩調和論。
ムーン&スペンサーの色彩調和論からの図。
色の配色の良し悪しは感覚的要素が強い上に、環境や時代によって変化します。
この本の著者である福田氏も、第Ⅰ章に20世紀の代表的な色彩研究者のジャッド(D.B.Judd 1900-1972)の文章から「色彩調和は、好き嫌いの問題であり、情緒反応は人によって異なり、また同一人物でも時によって異なる。」とする考えを引用しています。特に個性的な表現を求める絵画の世界では、色彩調和論に否定的な方もいると思います。
ところが福田氏はその後で、「欧米では色彩調和の認識は、伝統的に万人に共有されるべきものであって"色彩調和論"のように、三人称で記述され論じれれるのが通例になっている。」と書いています。そのような歴史がこの本を読むと良く分かりますし、各時代の色彩理論は、ドラクロワや印象派や点描派などの画家達の表現にも強く影響をあたえています。それらの事実を知ることは、絵の理解をより深いものにしてくれると思います。