2024年4月6日土曜日

展覧会のご案内 「模写から学ぶ」

 今回は4月8日からギャラリー・エスパス・ラポルトで開催される模写展を紹介します。

 模写は古くからおこなわれてきた絵の学習方法であり、先人の技術や表現を習得するための手段でした。勉強としての模写は、単に似せるのが目的ではなく、原画の制作方法を調べ、構成やデッサン、明暗の扱い、色彩の変化、筆触、マチエールなど絵を成り立たせている要素を学び取ることに意味があります。この展覧会では、アトリエラポルトの受講生の作品が多数展示されています。また参考作品として19世紀に板に描かれためずらしい模写も見ることができます。美術教育における模写について再考する機会になれば幸いです。




「模写から学ぶ」

会期: 4月8日〜5月17日 8:00〜19:00
場所: ギャラリー・エスパス・ラポルト
   東京都中央区日本橋小伝馬町17-9   さとうビル1階
休廊日: 土・日・祝日 4月27日〜5月6日



2024年3月29日金曜日

木炭デッサン

 今回は木炭を使った石膏デッサンを紹介します。
木炭は影の多いライティングをした石膏像を描くのに適した画材です。
ただ木炭は落ちやすく形がボケて曖昧になりやすいので注意が必要です。

制作者Kさんは初めての木炭デッサンなので、石膏像はシンプルな「うつむき坊や」を選びました。



参考にしたのがシャルル・バルグの絵手本(Charles Bargue, Coure de dessin)の中にある石膏デッサンです。



紙はMBM社の薄手の木炭用紙、木炭はルフラン社製の硬めの角木炭を主に使用しました。



線で形を取った後、影側から描き始めました。



明部は石膏の明るさを保ちながら慎重に描いていきます。





完成。
「うつむき坊や」 木炭紙に木炭(410×320)


木炭は広い面積も簡単に黒くしやすいので、明暗のコントラストの強いモチーフをデッサンするには適した画材です。ただ簡単に黒くできる反面、明部の明るさを保ちながらモデリングするのが難しく、白い石膏像を描いているのに出来上がったデッサンはブロンズ像のように見えるものがよくあります。
Kさんは事前にコントロールしやすい紙と木炭を数多くのサンプルから慎重に選び、擦筆を使いながら丁寧にモデリングをしていった結果、バルグの手本に近いデッサンになったと思います。
ただ光のあたっている側の輪郭線の強弱が、内側の形のボリュームと合っていない所が気になります。一致するとより自然な表現になるでしょう。




2024年2月25日日曜日

本の紹介「スカルプターのための美術解剖学」

今回は久しぶりに本の紹介をします。
最近大きな書店の美術書のコーナーに行くと、何種類もの美術解剖学の本が並んでいて驚かされます。油絵の描き方や技法書の類の出版物が少ないのに比べると、ブームのようにさえ感じます。

アトリエラポルトの蔵書から


その中で最もお薦めなのが「スカルプターのための美術解剖学」の3冊です。
著者はアルディス・ザリンスとサンディス・コンドラッツ、出版社はボーンデジタルです。

左から、1巻が「人体全体の解剖学」2巻が「表情編」3巻が「頭頚部編」


題名からすると、彫刻家やフィギュアー作家 のための解剖学本と思われそうですが、むしろ絵を描く方に最適な内容と言ってよく、CGの技術を使った正確で分かりやすいイラストで説明されています。






特筆すべきは、単に骨や筋肉の説明だけではなく、造形上どのように人体を捉えると良いかまで解説されている点です。



難を言うと、3冊買うと19,000円と値段が高い点です。でも、内容的には十分価値のある本です。1冊買うなら1巻目の「人体全体の解剖学」、肖像画を描く方には3巻目の「頭頸部編」が良いでしょう。美術解剖学書で迷われたらこの本です。



2024年2月1日木曜日

明暗と色の関係を学ぶ

 今回は前回紹介したグリザイユと同じモチーフを、三原色を基に色の再現を試みた制作過程を紹介します。色数を制限しているため現実と同じような鮮やかな絵にはなりませんが、写実絵画における明暗(Valure)と色(Coulre)の関係を理解するのに良い方法です。



使用する絵具は、黄色:イエローオーカー、 赤色:レッドオーカー、青色:コバルトブルーの三原色に、白:シルバーホワイト、そして黒の代わりにバーントアンバーを使います。



現実空間の再現には正確に明度を捉える必要があります。ところが鮮やかな色は実際の明度より明るく感じてしまいます。例えば彩度の高い赤は明るく感じますが、実際の明度は意外なほど低いものです。

左のグレーと水平線上にある色が同じ明度です。
(PCCSハーモニックカラーチャートより)


上記の絵具の三原色だけで描くと鮮やかな色にできない分、明暗の把握がしやすくなります。また、実際のモチーフの色彩感に近づけるための色の対比や組み合わせの練習になります。


明暗が的確に再現されると僅かな色数でもリアルな表現が可能です。


完成。
ブドウとホオズキ (F4号)


Tさんにとっては初めての多色による油絵で、試行錯誤しながら制作したのが分かる仕上がりになりました。この経験を通じて、現実の再現的な絵における明暗と色の関係を理解して頂けなのではないかと思います。次回の制作から徐々に彩度の高い色や三原色の間の色を加えていって、より色彩的で発色の良い絵を目指していくと良いでしょう。





2024年1月15日月曜日

グリザイユで明暗法を学ぶ

 アトリエラポルトでは、グリザイユをデッサンの延長線上としてカリキュラムに取り入れています。今回はその目的で描かれたグリザイユの制作過程を紹介します。
作者のTさんは、このようなグリザイユを描くのは初めての方です。


まずはキャンバスの大きさ(F4号)に区切った画用紙に鉛筆でデッサンして頂きました。


このデッサンでは、遠近法に従った正確な形を描く事を目的にしている為、背景もモチーフ固有の明度も表現していません。石膏像のような白いモチーフと同じように描いています。
これに対してグリザイユでは、モチーフ固有の明度と背景を含めたすべての明暗関係の再現が目的です。

デッサンをキャンバスに転写した後、ベースとなる明度のグレーで全体を塗ります。


それより明るい部分は拭き取って白くし、暗い部分は黒を足して明度を落とし、大きく3段階で明暗関係を捉えます。


大きな明暗の配置が決まったら、いよいよ描き込んでいきます。


その際、暖かいグレー(アイボリーブラックとシルバーホワイト)と冷たいグレー(ブルーブラックとシルバーホワイト)を光と影や前後関係に従って使い分けることで、より輝きのある自然な空間の表現を目指します。


常に対象と見比べて描き進め、時には離れて見ることが大切です。



完成。

グリザイユ(F4号) キャンバスに油彩


明度(Valeur)が適切に再現されたグリザイユになったと思います。形も細部までよく描き込まれてクリアに表現されています。このように油絵具はデリケートな明暗や滑らかなモデリングを再現するのに適した画材です。アトリエラポルトでは、「デッサンは形」「明暗の再現はグリザイユ」と分ける事で、デッサンから油絵へ繋がりをもって学んで頂けるように考えています。


2024年1月9日火曜日

ついに入手! ウードン作「エコルシェ」

アトリエラポルトは受講生の方々に支えられて今年で13年目に入ります。今回はより良い学びの場となるように、最近ようやく購入できた石膏像を紹介します。

美術解剖学を学ぶ上で欠かせないのが「エコルシェ」(écorché .剥皮像)と呼ばれる像です。中でも最も有名ものが、新古典主義の彫刻家ウードン(Houston,1741-1828)が原型を作ったこの像です。



昔のヨーロッパの美術学校ならどこにでもあった像ですが、日本で販売されたことはなく入手は長年の夢でした。それが受講生Kさんの情報と助けを借りて、この度アトリエラポルトで購入することができました。


原型は等身大ですが、それを約75cmに縮小したものです。製作はアメリカのカプロニ コレクション(CAPRONI COLLECTION)で、石膏像作りの伝統と精度の高さではアメリカ随一と言われています。


日本で販売されているクードロン作のエコルシェよりポーズが自然で描きやすく、筋肉もわかりやすくできています。受講生のデッサンの目標にして頂ければと思います。