今回は最近購入したアカデミックな人体デッサンを紹介します。
おそらく1800年代の早い時期にフランスの美術学校かアトリエ(絵画教室としての)で描かれた作品で、当時のデッサンの規範に忠実に従って制作されてものです。
大きさは720mm×560mmで、目の詰まった木炭紙のような紙におそらく合成木炭(今のチャコール鉛筆に近いもの)で描かれています。
ただ見えたとおりに描写したデッサンではなく、当時の新古典主義の思想の影響下にギリシャ・ローマ時代の理想的な人体プロポーションに近づけて描かれています。
また、直角三角形の枠組みの中に、腕・胴体・足といった部位が直線や曲線でつながり、有機的な構造を感じるデッサンです。
美術解剖学的にも驚くほど正確で、複雑な骨や筋肉の形を繊細なハッチングで描き切っています。
19世紀後半の資料によると、当時の美術学校での人体デッサンは1日5時間で1週間が1サイクルだったようです。このデッサンは完成度からみてそれ以上の時間をかけて描いたのではないかとも思いますが、いずれにしろ固定ポーズで長時間かけて描くのが美術学校での人体デッサンの基本でした。クロッキー中心、感情表現重視の日本の人体デッサン教育に疑問を抱かせる1枚です。