2017年7月23日日曜日

アトリエの道具と画材 13 美術解剖像

今回は美術解剖学を学ぶ上で参考になる全身像の模型を紹介します。


美術用の人体解剖像(エコルシェ:Ecorche)として西洋で良く知られているのが、ウードン(Jean-Antoine Houdon.1741‐1828)作のこの像です。その石膏によるレプリカは、昔のフランスの美術学校には必ず置かれていもののようです。

現代のように映像技術が発達していなかった時代には、立体的に筋肉の構造を学べる貴重な石膏像だったと思います。

残念ながら今の日本では入手することは困難です。


そこで、アトリエラポルトでは次のようなエコルシェを使っています。










これはクードロン(Jacque Eugene Coudron.1818-1865) が作った原型を、岡石膏が石膏像にしたものです。高さは68㎝で彫りが良く再現されています。















ただプロポーションが西洋人男性で、しかもかなり理想化されているので、実際のモデルさん(特に女性)と比べると違和感があるのも事実です。
















そこで最近ネットで購入したエコルシェがこれです。

樹脂製で高さが27㎝と小さいのですが、非常に正確な上、現実のモデルさんに近い自然なプロポーションで作られています。














画家にというより、フィギュアやCGの作家の為に販売されているようです。男性像もあるのですが、体形がマッチョ過ぎてお勧めできません。


理想は、これで関節が動けば言うことないのですが・・・








2017年7月2日日曜日

絵になる風景を求めて



前回に引き続き風景画の作品を紹介します。

今回の制作者Y.kさんは、絵の題材を求めてよく旅行をされています。紹介する3点とも現地でデッサンや水彩スケッチをしてきたものに、教室では写真資料を加えて制作しました。  



運河沿いの風景 (P15号)




富山県射水市の運河沿いの風景。奥には立山連峰が広がります。JRの広告でこの場所を知り、取材に出かけられました。









「日本のベニス」とも称される美しく落ち着いた風景は、確かに絵心を誘われる題材です。

制作にあたっては、家並みの暖かな色と運河や山並みの冷たい色とのコントラストと組み合わせについてアドバイスしました。






棚田のある風景(P15号)



山梨県南アルプス市から富士山を望んだ風景です。以前から棚田を描きたいと探されていて、東京から日帰りで行けるこの場所を見つけられました。




秋の日差しに輝く稲穂の表現が、制作上の大きな課題です。そこで中景の林をまとめて暗い形として扱い、中景から前景にかけての影の暗さと配置を工夫するようにアドバイスしました。





雪景色 (P20号)



新潟県越後川口から信濃川の雪景色を描いた作品です。遠くに見える山は八海山です。

冬の日の晴れ間を狙って出かけられ、車で片道5時間の日帰りの取材だったそうです。そのバイタリティーに驚くばかりです。

教室では大気遠近法による空間表現をテーマに制作されました。最初に、複数の青色とブルーブラックとシルバーホワイトでグリザイユのように描いてから、反対色の黄色や赤色を加えて仕上げていきました。

Y.kさんは会社を退職後から本格的に絵を学ばれた80代の男性です。アトリエラポルトの最初の受講生で、今では支援者とも言える存在です。すでに多くの作品を制作して発表されています。教室では、制作の方向づけをアドバイスする程度ですが、毎回新しいモチーフと技法に積極的に挑まれ、教える側も良い刺激を頂いてます。