今回は19世紀初めにフランスで描かれたダヴィッド派の肖像画の模写を紹介します。
模写にはさまざまな方法がありますが、勉強としての模写は単に原画に似せるのではなく学ぶ目的を持って取り組むことが大切です。
今回の模写では、クラシックな油絵のもつ絵具の「透明・不透明」「厚い・薄い」の効果的な使い方や、「温かい・冷たい」と言った微妙な色合いの変化を使ったモデリングを学ぶことを特に重視しました。
その目的から名画とは言えませんが、19世紀前半に描かれたダビィッドに近いオーソドックスな技法で描かれたアトリエラポルト所蔵の肖像画を使いました。
輪郭を転写し後、バンダイクブラウン(ニュートン社)で明暗をつけていきました。
明部はシルバーホワイトを加えて明るめに描きます。この単色の段階で出来る限り正確に形を再現します。
背景から着色していきます。
背景と服に色がついた状態です。
いよいよ顔に入ります。最初に明部と暗部の境目にグレーをおきます。
次に肌の固有色を塗ります。
肌色はイエローオーカー、レッドオーカー、シルバーホワイトをベースに作り、そこにバーミリオンとマダーレーキを加えて色調を合わせます。
原画は口の周辺に修復の跡があり、それが変色して形や色が分かりにくい箇所があります。
模写では描かれた時の状態を再現するようにアドバイスしました。
完成。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiTDdYpyEzVt0vnN4okqlo6Oh-EtsmIELfrCMySDufIimSoA2L5VZD2it42R4xZRzYXhyJxYvd5b4ERItlcFq9JXzpXQtPvGE48ht0Gcm63a1_yE98y1rhHBYYNAZB2PgKLcyiZ07tIeFIVmIfY1CpmQvB5f0Uz-9JBcAlUImu5s0GjVagnWDOAvVA9uLo/w328-h400/IMG_7292.JPG) |
19世紀初頭にフランスで制作された肖像画の模写 キャンバスに油彩(410×318) |
何度も修正と塗り重ねをおこなった為に、マチエールは原画より厚く、がたついたモデリングになってしまいましたが、目的の寒暖の微妙な変化と透明・不透明の使い分けは良く捉えられています。これに原画のような筆触の効果的な使い方が加わるとより良くなると思います。自作に生かしていって頂ければ幸いです。