2024年5月19日日曜日

特別講座 「銅板に描く」

 前回に引き続きゴールデンウィーク中に開催された特別講座「銅板油彩画」の様子をお伝えします。


銅板を基底材に油絵を描くことは日本ではほとんどおこなわれてきませんでしたが、西洋では古くから「持ち運び用」の小型の絵に銅板がよく使われてきました。日本の歴史の中では、東京国立博物館蔵の南蛮渡来の「聖母像」(重要文化財)が銅板に描かれた油絵の例です。

南蛮美術「聖母像」17世紀後期 (26.7 ×21.5)

講師をお願いした画家で技法研究家の鳥越一穂氏は、10年ほど前から銅版画の技法を調査・研究し自身の作品制作に取り入れています。今回の講座は3日間と限られた中で、銅板のプレパレーションの方法から実物のモチーフを見ての制作までおこないました。


銅板のプレパレーションの様子


モチーフ


チョークでデッサン


ヴァンダイクブラウンで明暗をつける


固有色を置いていく


鳥越先生のデモンストレーション


受講生の作品 
左がシルバーホワイトとローアンバーで作ったグレーで地塗りをした銅板に描いたもの
右が銅板に樹脂を塗って直接描いたもの

時間が限られているため描き込んで完成させることはできませんでしたが、銅板の下準備から油彩までの工程を一通り体験する事ができたと思います。油絵技法の新たな可能性を感じて頂けたら幸いです。



2024年5月8日水曜日

ワークショップ 「画用液を作る」

 今回はゴールデンウィーク中にギャラリー・エスパス・ラポルトでおこなわれたワークショップの様子をお伝えします。


テーマは「画用液を作る」
講師に画家で技法研究家の鳥越一穂氏と洋画材の研究家として名高い松川宣弘氏を迎え、画用液の素となる油や樹脂のマニアックな説明から、代表的な画家の処方を参考に参加者それぞれの好みで実際に画用液を作って頂きました。




今では入手困難なカナダバルサムを使ったメジュームの製作


ダンマル樹脂の溶解方法の実演


19f世紀にイギリスを中心によく使われたメギルプを作っている様子


2回目(5/5)は定員オーバーで急遽翌日に追加講座をおこなうほど盛況でした。参加者皆さんに持ち帰って頂いた「マイメジューム」が新たな制作に役立つように願っています。




2024年4月23日火曜日

特別講座&ワークショップのお知らせ

 アトリエラポルトでは、4月29日から5月5日のゴールデン期間中に下記のような特別講座とワークショップを開催いたします。多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。

【銅板に油絵を描く】 講師:鳥越一穂


銅板は西洋では古くから使われてきた油絵の基底材の一つです。堅牢な上、独特の平滑で滑らかなマチエールを得ることができます。本講座では3日間にわたり画家で技法研究家の鳥越氏が、銅板の下地作りから描き方まで解説・指導します。

前期 4月29日(月)〜5月1日(水)
後期 5月2日(木)〜5月4日(土)
時間 13:00〜16:30
場所 アトリエラポルト教室
費用 3日間 10,000円  材料費(銅板代) 2,000円 *その他の画材は持参

*お問い合わせ・申し込み


【メジュームを作る】 講師: 鳥越一穂、松川宣弘



油絵に使用するメジューム(溶剤)は、油絵の表現効果に大きな影響を与えます。ギャラリー・エスパス・ラポルトでおこなうワークショップでは、鳥越氏と共に洋画材の研究家として名高い松川氏を加えて、油や樹脂などの材料の解説をおこないます。また実際に、ラングレ、青木敏朗、古吉弘、鳥越一穂の各先生方の処方によるメジュームや古くから使われていたブラックオイル、メギルプを作ります。

1回目 4月28日(日)     松川氏はリモート出演
     *ワークショップの内容は1回で完結です
2回目 5月5日(日)      松川氏来廊
時間 13:00〜16:30
場所 ギャラリー・エスパス・ラポルト
費用 5,000円(授業料3,000円+材料費2,000円)     *作ったメジュームは持ち帰りできます。

*お問い合わせ・申し込み


2024年4月6日土曜日

展覧会のご案内 「模写から学ぶ」

 今回は4月8日からギャラリー・エスパス・ラポルトで開催される模写展を紹介します。

 模写は古くからおこなわれてきた絵の学習方法であり、先人の技術や表現を習得するための手段でした。勉強としての模写は、単に似せるのが目的ではなく、原画の制作方法を調べ、構成やデッサン、明暗の扱い、色彩の変化、筆触、マチエールなど絵を成り立たせている要素を学び取ることに意味があります。この展覧会では、アトリエラポルトの受講生の作品が多数展示されています。また参考作品として19世紀に板に描かれためずらしい模写も見ることができます。美術教育における模写について再考する機会になれば幸いです。




「模写から学ぶ」

会期: 4月8日〜5月17日 8:00〜19:00
場所: ギャラリー・エスパス・ラポルト
   東京都中央区日本橋小伝馬町17-9   さとうビル1階
休廊日: 土・日・祝日 4月27日〜5月6日



2024年3月29日金曜日

木炭デッサン

 今回は木炭を使った石膏デッサンを紹介します。
木炭は影の多いライティングをした石膏像を描くのに適した画材です。
ただ木炭は落ちやすく形がボケて曖昧になりやすいので注意が必要です。

制作者Kさんは初めての木炭デッサンなので、石膏像はシンプルな「うつむき坊や」を選びました。



参考にしたのがシャルル・バルグの絵手本(Charles Bargue, Coure de dessin)の中にある石膏デッサンです。



紙はMBM社の薄手の木炭用紙、木炭はルフラン社製の硬めの角木炭を主に使用しました。



線で形を取った後、影側から描き始めました。



明部は石膏の明るさを保ちながら慎重に描いていきます。





完成。
「うつむき坊や」 木炭紙に木炭(410×320)


木炭は広い面積も簡単に黒くしやすいので、明暗のコントラストの強いモチーフをデッサンするには適した画材です。ただ簡単に黒くできる反面、明部の明るさを保ちながらモデリングするのが難しく、白い石膏像を描いているのに出来上がったデッサンはブロンズ像のように見えるものがよくあります。
Kさんは事前にコントロールしやすい紙と木炭を数多くのサンプルから慎重に選び、擦筆を使いながら丁寧にモデリングをしていった結果、バルグの手本に近いデッサンになったと思います。
ただ光のあたっている側の輪郭線の強弱が、内側の形のボリュームと合っていない所が気になります。一致するとより自然な表現になるでしょう。




2024年2月25日日曜日

本の紹介「スカルプターのための美術解剖学」

今回は久しぶりに本の紹介をします。
最近大きな書店の美術書のコーナーに行くと、何種類もの美術解剖学の本が並んでいて驚かされます。油絵の描き方や技法書の類の出版物が少ないのに比べると、ブームのようにさえ感じます。

アトリエラポルトの蔵書から


その中で最もお薦めなのが「スカルプターのための美術解剖学」の3冊です。
著者はアルディス・ザリンスとサンディス・コンドラッツ、出版社はボーンデジタルです。

左から、1巻が「人体全体の解剖学」2巻が「表情編」3巻が「頭頚部編」


題名からすると、彫刻家やフィギュアー作家 のための解剖学本と思われそうですが、むしろ絵を描く方に最適な内容と言ってよく、CGの技術を使った正確で分かりやすいイラストで説明されています。






特筆すべきは、単に骨や筋肉の説明だけではなく、造形上どのように人体を捉えると良いかまで解説されている点です。



難を言うと、3冊買うと19,000円と値段が高い点です。でも、内容的には十分価値のある本です。1冊買うなら1巻目の「人体全体の解剖学」、肖像画を描く方には3巻目の「頭頸部編」が良いでしょう。美術解剖学書で迷われたらこの本です。



2024年2月1日木曜日

明暗と色の関係を学ぶ

 今回は前回紹介したグリザイユと同じモチーフを、三原色を基に色の再現を試みた制作過程を紹介します。色数を制限しているため現実と同じような鮮やかな絵にはなりませんが、写実絵画における明暗(Valure)と色(Coulre)の関係を理解するのに良い方法です。



使用する絵具は、黄色:イエローオーカー、 赤色:レッドオーカー、青色:コバルトブルーの三原色に、白:シルバーホワイト、そして黒の代わりにバーントアンバーを使います。



現実空間の再現には正確に明度を捉える必要があります。ところが鮮やかな色は実際の明度より明るく感じてしまいます。例えば彩度の高い赤は明るく感じますが、実際の明度は意外なほど低いものです。

左のグレーと水平線上にある色が同じ明度です。
(PCCSハーモニックカラーチャートより)


上記の絵具の三原色だけで描くと鮮やかな色にできない分、明暗の把握がしやすくなります。また、実際のモチーフの色彩感に近づけるための色の対比や組み合わせの練習になります。


明暗が的確に再現されると僅かな色数でもリアルな表現が可能です。


完成。
ブドウとホオズキ (F4号)


Tさんにとっては初めての多色による油絵で、試行錯誤しながら制作したのが分かる仕上がりになりました。この経験を通じて、現実の再現的な絵における明暗と色の関係を理解して頂けなのではないかと思います。次回の制作から徐々に彩度の高い色や三原色の間の色を加えていって、より色彩的で発色の良い絵を目指していくと良いでしょう。