2024年7月19日金曜日

夏休み特別講座のお知らせ

 アトリエラポルトでは正規授業の夏休み中に、画家で技法研究家の鳥越一穂氏を招いて写実絵画技法の特別講座を開催いたします。期間中(8/11〜8/18)は鳥越氏がデモンストレーション制作をおこなうと共に、クラシックな絵画技法や画材についてのご質問から実際にモチーフをセッティングしての油絵制作の指導まで、ご希望のコマ数(1コマ2時間30分・3,300円)に対応した授業をおこないます。日時の選択は自由で、1コマから受講可能です。

受講をご希望の方は、次のメールアドレスか電話番号まで気軽にお問合せください。
皆様のご参加をお待ちしています。

お問合せ先
Eメール: kazuo@torilogy.net
TEL: 080-3637-6633 (LINE可)







 

2024年6月29日土曜日

19世紀の肖像画を模写する

 今回は19世紀初めにフランスで描かれたダヴィッド派の肖像画の模写を紹介します。


模写にはさまざまな方法がありますが、勉強としての模写は単に原画に似せるのではなく学ぶ目的を持って取り組むことが大切です。

今回の模写では、クラシックな油絵のもつ絵具の「透明・不透明」「厚い・薄い」の効果的な使い方や、「温かい・冷たい」と言った微妙な色合いの変化を使ったモデリングを学ぶことを特に重視しました。
その目的から名画とは言えませんが、19世紀前半に描かれたダビィッドに近いオーソドックスな技法で描かれたアトリエラポルト所蔵の肖像画を使いました。


輪郭を転写し後、バンダイクブラウン(ニュートン社)で明暗をつけていきました。


明部はシルバーホワイトを加えて明るめに描きます。この単色の段階で出来る限り正確に形を再現します。


背景から着色していきます。


背景と服に色がついた状態です。


いよいよ顔に入ります。最初に明部と暗部の境目にグレーをおきます。


次に肌の固有色を塗ります。
肌色はイエローオーカー、レッドオーカー、シルバーホワイトをベースに作り、そこにバーミリオンとマダーレーキを加えて色調を合わせます。




原画は口の周辺に修復の跡があり、それが変色して形や色が分かりにくい箇所があります。
模写では描かれた時の状態を再現するようにアドバイスしました。


完成。

19世紀初頭にフランスで制作された肖像画の模写
キャンバスに油彩(410×318)


何度も修正と塗り重ねをおこなった為に、マチエールは原画より厚く、がたついたモデリングになってしまいましたが、目的の寒暖の微妙な変化と透明・不透明の使い分けは良く捉えられています。これに原画のような筆触の効果的な使い方が加わるとより良くなると思います。自作に生かしていって頂ければ幸いです。









2024年6月10日月曜日

サテュロス全身像のデッサン

 今回は難度の高いサテュロスの全身像の石膏デッサンに挑戦したCさんの制作過程を紹介します。


サテュロス(またはサタイヤ)は、ギリシャ神話に登場する半人半獣の精霊で豊穣と欲情の化身として表現されます。オリジナルの彫像はギリシャ時代のヘレニズム期のものと考えられていますが現存していません。忠実なローマ時代のコピーとされるものがウフィツィ美術館にあります。

アトリエ・ラポルトで購入したサテュロス像の製作者「石膏像ドットコム」の脇本氏によると、この石膏像の型取りの元になったのは、1704年にフィレンツェの彫刻家であったマッシミリアーノ・ソルダーニ・ベンツィ(Massimiliano Soldani Benzi 1656-1740)が作ったブロンズ像の縮小複製とのことです。
Wikimedia commonsより


制作するにあたって、像の中央に天井からひもをおろして垂直軸を設定し、それを基準にプロポーションを測っていきました。


プロポーションを線だけで捉えた後、個々の形態をモデリングしてボリュームをつけていきました。


画面全体のバランスを考えテーブルに貝を加えてみました。




完成。


石膏像内の影の分量を少なくして、モデリングによって形態を追求したデッサンになりました。このようなデッサンは19世紀のパリの美術学校でおこなわれていたやり方で、現象的な陰影を再現しようとしたデッサンとは異なり、解剖学の知識に裏打ちされた形態の把握にデリケートなハーフトーンをコントロールしながらのモデリングといった高度な技術を必要とします。これまでのCさんのデッサンへの粘り強い取り組みの成果が出た作品になったと思います。







2024年5月28日火曜日

「中村清治・伊牟田経正・橋本博英」展

 ギャラリー・エスパス・ラポルトで、「中村清治・伊牟田経正・橋本博英」展が始まりました。




真摯に対象に向き合い、自らの目と腕を信じて描き続けた今は亡き三人の画家の展覧会です。フォトリアリズムとは異なる真の絵画的視点を追求した画家たちの作品を是非ご覧ください。








会期: 2024年5月27日〜7月5日  10:00〜19:00  (休廊日: 土・日・祝日)
場所: ギャラリー・エスパス・ラポルト
   東京都中央区日本橋小伝馬町17-9   さとうビル1階



  

2024年5月19日日曜日

特別講座 「銅板に描く」

 前回に引き続きゴールデンウィーク中に開催された特別講座「銅板油彩画」の様子をお伝えします。


銅板を基底材に油絵を描くことは日本ではほとんどおこなわれてきませんでしたが、西洋では古くから「持ち運び用」の小型の絵に銅板がよく使われてきました。日本の歴史の中では、東京国立博物館蔵の南蛮渡来の「聖母像」(重要文化財)が銅板に描かれた油絵の例です。

南蛮美術「聖母像」17世紀後期 (26.7 ×21.5)

講師をお願いした画家で技法研究家の鳥越一穂氏は、10年ほど前から銅版画の技法を調査・研究し自身の作品制作に取り入れています。今回の講座は3日間と限られた中で、銅板のプレパレーションの方法から実物のモチーフを見ての制作までおこないました。


銅板のプレパレーションの様子


モチーフ


チョークでデッサン


ヴァンダイクブラウンで明暗をつける


固有色を置いていく


鳥越先生のデモンストレーション


受講生の作品 
左がシルバーホワイトとローアンバーで作ったグレーで地塗りをした銅板に描いたもの
右が銅板に樹脂を塗って直接描いたもの

時間が限られているため描き込んで完成させることはできませんでしたが、銅板の下準備から油彩までの工程を一通り体験する事ができたと思います。油絵技法の新たな可能性を感じて頂けたら幸いです。



2024年5月8日水曜日

ワークショップ 「画用液を作る」

 今回はゴールデンウィーク中にギャラリー・エスパス・ラポルトでおこなわれたワークショップの様子をお伝えします。


テーマは「画用液を作る」
講師に画家で技法研究家の鳥越一穂氏と洋画材の研究家として名高い松川宣弘氏を迎え、画用液の素となる油や樹脂のマニアックな説明から、代表的な画家の処方を参考に参加者それぞれの好みで実際に画用液を作って頂きました。




今では入手困難なカナダバルサムを使ったメジュームの製作


ダンマル樹脂の溶解方法の実演


19f世紀にイギリスを中心によく使われたメギルプを作っている様子


2回目(5/5)は定員オーバーで急遽翌日に追加講座をおこなうほど盛況でした。参加者皆さんに持ち帰って頂いた「マイメジューム」が新たな制作に役立つように願っています。




2024年4月23日火曜日

特別講座&ワークショップのお知らせ

 アトリエラポルトでは、4月29日から5月5日のゴールデン期間中に下記のような特別講座とワークショップを開催いたします。多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。

【銅板に油絵を描く】 講師:鳥越一穂


銅板は西洋では古くから使われてきた油絵の基底材の一つです。堅牢な上、独特の平滑で滑らかなマチエールを得ることができます。本講座では3日間にわたり画家で技法研究家の鳥越氏が、銅板の下地作りから描き方まで解説・指導します。

前期 4月29日(月)〜5月1日(水)
後期 5月2日(木)〜5月4日(土)
時間 13:00〜16:30
場所 アトリエラポルト教室
費用 3日間 10,000円  材料費(銅板代) 2,000円 *その他の画材は持参

*お問い合わせ・申し込み


【メジュームを作る】 講師: 鳥越一穂、松川宣弘



油絵に使用するメジューム(溶剤)は、油絵の表現効果に大きな影響を与えます。ギャラリー・エスパス・ラポルトでおこなうワークショップでは、鳥越氏と共に洋画材の研究家として名高い松川氏を加えて、油や樹脂などの材料の解説をおこないます。また実際に、ラングレ、青木敏朗、古吉弘、鳥越一穂の各先生方の処方によるメジュームや古くから使われていたブラックオイル、メギルプを作ります。

1回目 4月28日(日)     松川氏はリモート出演
     *ワークショップの内容は1回で完結です
2回目 5月5日(日)      松川氏来廊
時間 13:00〜16:30
場所 ギャラリー・エスパス・ラポルト
費用 5,000円(授業料3,000円+材料費2,000円)     *作ったメジュームは持ち帰りできます。

*お問い合わせ・申し込み